【完結】彼此繋穴~ヒコンケイケツ。彼の世と此の世を繋ぐ穴~

月城 亜希人

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日記

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 一時間ほど寝た。

 まだ眠いが、蝉が五月蝿いのと、蒸し暑いのとで寝ていられないので、薬を二錠ばかし飲んで母屋の方に向かうことにする。

 誰もいないということはないだろうが、もしかすると、しれっと中に入れるかもしれない。

 好恵は学校に行っているだろうから、会えないと思うが、婆さんの顔は見れるのではないかと期待している。詳細は、後程書く。



 大変なものを見た。

 それで、慌てて逃げ帰ってきた。

 婆さんが、首を吊っていた。

 玄関の戸を開けても、誰も出てこなかったから、これはしめたと思って上がり込んだが、やめておけば良かったと後悔した。

 俺は、今もって動転している。だが、書く。

 何が遭ったか、見たものをしっかり覚えているうちに書いておかないと、後々、殺人だったとかいう話になったとき、嫌疑を掛けられては弱る。

 また、もしそうであった場合、犯人を特定する上で、非常に重要な証拠となる可能性もなくはない。

 今、この帳面の最後の頁を破って、備忘録にしたものを読みながら書いている。

 つまり、俺は帰ってきてすぐに、先に書いたようなことを想定して、この帳面の一部を破り、備忘録にしたということだ。

 想定、と書いたが、実際のところ、頭に思い浮かんだだけで、そんな大層なものではないし、ただ、怖くて仕方がないというのが本当のところだ。

 婆さんが死んだのが悲しくて堪らないが、薄情にも、自分に濡れ衣が着せられる恐怖に怯えて、これを書いているということを、しっかりと残しておきたい。

 後で読み返したときに、自分が恩知らずで、情けないのを思い起こせるようにしておかないと、ほったらかしにしてしまった婆さんに申し訳が立たない。

 いや、違う。また格好つけようと、意味の分からないことを書いた。

 俺は、本当のところは、婆さんが怒って、薬局のおばさんみたいに、お化けになって出てくる気がしている。

 だから、こうして恥を、自分の恥を、文字という形で残しておくことで、婆さんの怒りを鎮めようとしているだけだ。何とか許してもらえないかと、そういう願いを抱いて、自分の気を済ませようとしているだけだ。

 なんて卑しい。まさか、ここまでとは。

 馬鹿だとは思っていたが、自分を見下げ果てた。せめて床に下ろしてあげれば良かったと後悔している。悲しいし、情けないしで泣けてくる。

 俺は大馬鹿だ。

 浅ましいが、泣いてばかりもおれんので、自分の身の潔白について書き記す。
 
 
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