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DM
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結局眠れたのは4時を回ってからで、起きたのはもう昼になる頃だった。今日が休みでよかった。寝転がりながらスマホを開くと、画面にはいくつかのメッセージの通知と、らろあのツイートが表示されている。
『飲みすぎた……昨日の配信のことは忘れてください……』というつぶやきに思わず笑って、いいねを押した。
『めっちゃ酔ってたね、大丈夫?』とリプライを送ると、らろあも休みなのか、すぐに返信が返ってくる。『二日酔いでめちゃ頭痛い!』とのことだった。『お大事にね』と送ればいいねとありがとうとの返信がまたすぐに届いた。
今日が休みで、なおかつ体調も優れないのならもしかしたら配信がないかもしれないと思っていたが、夜になるといつも通り配信告知のツイートがされていた。今日はいつも通りゲームをするらしい。
その日の彼の配信は、なんだか罰の悪そうな顔で始まった。あれだけ酔っていたときの記憶をはっきりと覚えているらしい。忘れられていたら悲しいから私としては良かったけれど、らろあは忘れてと苦笑いしていた。
『忘れてあげない』と送ると、らろあは忘れてよと顔を覆う。その動作すら愛おしかった。画面を見てにやつきながら、『忘れてあげない代』とギフトを送る。昨日の配信から浮ついた気分がまだ消えなくて、少し調子に乗ったようなコメントばかり送ってしまう。
「そんなんもらったら忘れてって言えないじゃんか、もう……」
らろあは耳まで赤くしていた。彼はもうしばらくお酒飲まない、とほほを膨らませると、コントローラーを手に取る。
「ゲームして忘れよ! ね!」
誤魔化すように画面をじっと見る彼の様子に思わず笑みがこぼれた。コメント欄が動いて、よく見るリスナーさんが顔を出す。でも、昨日あの配信で、らろあがあんな風になるまで見ていたのは私くらいだ。そんな優越感が心を満たした。
そんなもの感じるべきではないのはわかっている。けれど、昨日の彼の言葉がどうしても頭から離れないまま、私を喜ばせるのだからしょうがなかった。
いつもより少し早く、日付が変わる前に配信が終わった。ほんの少しの名残惜しさを覚えながらも、昨日から手についていなかった課題をやろうかと机に向かう。けれど椅子に座るや否や通知を告げる音が鳴って、私はすばやくスマホを手に取った。
きっとらろあの配信終了のツイートだろうと思っていたのに、通知欄に彼のアイコンはない。代わりに新規メッセージのところにマークが表示されていた。一体誰だろう、友人だろうか。
そう思いながらタップすると、メッセージ欄の一番上にはらろあのアイコンがあった。一瞬信じがたく、思わずそのアカウントを確認する。何度見ても、らろあのものだった。
きっと何かの間違いだ。リプライで何度かやり取りをしていたし、間違えてこっちに送ってしまったのかもしれない。それか、配信終了ツイートをしようとしてうっかり送ったのか。
なんにせよ、自分に対する連絡だとは思えなかった。恐る恐るメッセージを開く。しかしそこには、私の予想に反して『るるちゃんやっほー』というなんとも気軽な文章があった。
信じられなくてめまいがしてきた。らろあが私個人にわざわざ連絡して来る用事を考えたけれど、思いつかない。震える指先で返信を打つ。用件を聞こうとしたり、何か間違えているか尋ねようとしたけれど、長ったらしくなってしまって結局『やっほー』とだけ打ち込んで返信した。
文面だけ見れば、ただの友人だ。誰も私がこんなに混乱しながらたった4文字を打ったなんて思わないだろう。
らろあからの返事は予想よりもはるかに早かった。
『よかったら通話とかできないかなーと思って! これ俺のIDだからよければフレなって~』
そんな文章と共に送られてきた画像には、配信者の間ではよく使われている通話アプリのIDが載っていた。SNSとは違うアイコンの隣に「らろあ」と名前がある。思わずごくりと唾をのんだ。
友達とこんなアプリでやり取りはしないし、私はアカウントを持っていない。けれど思うが早いか、私はそのアプリを入れてあっという間にアカウント作成まで済ませていた。あとはこのらろあのIDを入れるだけだ。
ドクドクと、心臓が鳴る。フレンド検索の欄に先ほどのIDを打ち込んだ。検索結果にさっき見たアイコンが出てくる。チェックボタンをタップするだけのことができなかった。
そのままたっぷり5分悩んで、ようやく覚悟を決める。えいっと目をつぶったまま画面をタップすると、リクエスト送信の文字が表示される。
それからすぐ、彼の横にあるステータス表示が「フレンド」に変わった。
『飲みすぎた……昨日の配信のことは忘れてください……』というつぶやきに思わず笑って、いいねを押した。
『めっちゃ酔ってたね、大丈夫?』とリプライを送ると、らろあも休みなのか、すぐに返信が返ってくる。『二日酔いでめちゃ頭痛い!』とのことだった。『お大事にね』と送ればいいねとありがとうとの返信がまたすぐに届いた。
今日が休みで、なおかつ体調も優れないのならもしかしたら配信がないかもしれないと思っていたが、夜になるといつも通り配信告知のツイートがされていた。今日はいつも通りゲームをするらしい。
その日の彼の配信は、なんだか罰の悪そうな顔で始まった。あれだけ酔っていたときの記憶をはっきりと覚えているらしい。忘れられていたら悲しいから私としては良かったけれど、らろあは忘れてと苦笑いしていた。
『忘れてあげない』と送ると、らろあは忘れてよと顔を覆う。その動作すら愛おしかった。画面を見てにやつきながら、『忘れてあげない代』とギフトを送る。昨日の配信から浮ついた気分がまだ消えなくて、少し調子に乗ったようなコメントばかり送ってしまう。
「そんなんもらったら忘れてって言えないじゃんか、もう……」
らろあは耳まで赤くしていた。彼はもうしばらくお酒飲まない、とほほを膨らませると、コントローラーを手に取る。
「ゲームして忘れよ! ね!」
誤魔化すように画面をじっと見る彼の様子に思わず笑みがこぼれた。コメント欄が動いて、よく見るリスナーさんが顔を出す。でも、昨日あの配信で、らろあがあんな風になるまで見ていたのは私くらいだ。そんな優越感が心を満たした。
そんなもの感じるべきではないのはわかっている。けれど、昨日の彼の言葉がどうしても頭から離れないまま、私を喜ばせるのだからしょうがなかった。
いつもより少し早く、日付が変わる前に配信が終わった。ほんの少しの名残惜しさを覚えながらも、昨日から手についていなかった課題をやろうかと机に向かう。けれど椅子に座るや否や通知を告げる音が鳴って、私はすばやくスマホを手に取った。
きっとらろあの配信終了のツイートだろうと思っていたのに、通知欄に彼のアイコンはない。代わりに新規メッセージのところにマークが表示されていた。一体誰だろう、友人だろうか。
そう思いながらタップすると、メッセージ欄の一番上にはらろあのアイコンがあった。一瞬信じがたく、思わずそのアカウントを確認する。何度見ても、らろあのものだった。
きっと何かの間違いだ。リプライで何度かやり取りをしていたし、間違えてこっちに送ってしまったのかもしれない。それか、配信終了ツイートをしようとしてうっかり送ったのか。
なんにせよ、自分に対する連絡だとは思えなかった。恐る恐るメッセージを開く。しかしそこには、私の予想に反して『るるちゃんやっほー』というなんとも気軽な文章があった。
信じられなくてめまいがしてきた。らろあが私個人にわざわざ連絡して来る用事を考えたけれど、思いつかない。震える指先で返信を打つ。用件を聞こうとしたり、何か間違えているか尋ねようとしたけれど、長ったらしくなってしまって結局『やっほー』とだけ打ち込んで返信した。
文面だけ見れば、ただの友人だ。誰も私がこんなに混乱しながらたった4文字を打ったなんて思わないだろう。
らろあからの返事は予想よりもはるかに早かった。
『よかったら通話とかできないかなーと思って! これ俺のIDだからよければフレなって~』
そんな文章と共に送られてきた画像には、配信者の間ではよく使われている通話アプリのIDが載っていた。SNSとは違うアイコンの隣に「らろあ」と名前がある。思わずごくりと唾をのんだ。
友達とこんなアプリでやり取りはしないし、私はアカウントを持っていない。けれど思うが早いか、私はそのアプリを入れてあっという間にアカウント作成まで済ませていた。あとはこのらろあのIDを入れるだけだ。
ドクドクと、心臓が鳴る。フレンド検索の欄に先ほどのIDを打ち込んだ。検索結果にさっき見たアイコンが出てくる。チェックボタンをタップするだけのことができなかった。
そのままたっぷり5分悩んで、ようやく覚悟を決める。えいっと目をつぶったまま画面をタップすると、リクエスト送信の文字が表示される。
それからすぐ、彼の横にあるステータス表示が「フレンド」に変わった。
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