~時薙ぎ~ 異世界に飛ばされたレベル0《SystemError》の少女

にせぽに~

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帝国と王国の交声曲《カンタータ》

王国の至高騎士《グレナディーア》

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「【グレナディーア至高騎士】………ですって!?」

マリスの言葉にマリーさんが驚いた表情をする。
ふむ、大分仰々しい称号みたいだけど、さっきの人の気配からして
その実力は今の私なんか足元にも及ばないくらいだ。
至高騎士、なんて呼ばれるのも頷けるね。

「うん、マリスも王国にいた頃に遠目から姿を見ただけだけど間違いないよ
 まぁ、髪型や服装を変えた上で魔法で偽装してたみたいだから
 魔力を持たない普通の人は気づけないと思うけど」

マリスがじっと扉を見つめながら呟く。
そこにはいつもの飄々さはなく真剣そのものだ。

「それを魔力もなしに初対面で見抜いちゃうなんて流石だね、レンお姉ちゃん
 どうやってるのか見当もつかないけど、正直マリスにも教えて欲しい位だよ」

マリスは私を見ながら不敵に笑う。

「教えるって言うか、これは私の経験則からの勘みたいなものだからね
 場数を踏めば自然と覚えられるとは思うけど、早く覚えたいなら
 修羅場を3~4回潜り抜ければコツは覚えられると思うよ」

そうなのだ、私もこの感覚を得る為に何度も酷い目に遭わされたんだよね。
まぁ、その相手が9割方お爺ちゃんだったってのはアレだけど………
しかしリーゼにはこの感覚を早く覚えて欲しいとこだけど、ドラゴンが
修羅場って言える程の荒事って何だろう………

「流石にそれはマリスには無理そうだねぇ
 見ての通りか弱い乙女だからね、あはははは」

そう言ってマリスがいつもの調子で笑う、まぁ確かにマリスには無理そうだよね。

「それで、そのグレナディーア至高騎士って何なのかな?
 あの人の気配からして大体想像はつくけど、教えてくれないかなマリス?」
「我も興味があります、マスターが初見であれほどの警戒心を抱く相手
 恐らく人間族としては相当の使い手なのでしょう」

おや、リーゼが私以外の人間に興味を抱くなんて珍しい
まぁドラゴンって強さを求める種族だし、強い相手と戦いたいって
欲求はあるのかもね。

「教えるのは構わないけど、そうなるとまずは帝国と王国の関係の歴史から
 説明しないといけなくなるからちょっと長くなるよ?」

やっぱりそうなんだ、さっきマリスが停戦って言葉を出してたし、騎士って役柄は
基本軍事関係の役柄だしね。

「構わないよ、そもそも今住んでる帝国の事柄だって私は殆ど知らないし
 それに…私の目的からしてその王国とやらに行くこともあるんでしょ?
 ならグレナディーア至高騎士の事と一緒に知っておくべき事柄だね」

私の言葉に少しだけマリスは驚いた顔をするも、直ぐにいつもの笑顔に戻り。

「………そっか、ならマリスも頑張って教えるよ
 いや~、レンお姉ちゃんが思ってた以上に勉強家でマリスは嬉しいね~
 あはははは」

そう言ってマリスは盛大に笑う、良く分からないけど私が勉強家なら
マリスは嬉しいみたいだね………

「んじゃ講義を始めるけど………長くなりそうだし
 何か飲み物を準備しよっか」
「なら私が煎れて来るわ、勉強中に眠くならない様
 少しきつめの奴をね♪」

マリーさんはそう言って席を立ち、厨房へと消えて行く。
しかし眠くならない様なきつめの飲み物ね、マリーさんの事だから
お酒じゃなきゃいいけど………

「まずは帝国と王国………イヴェンス帝国とレフィエルド王国の関係から
 説明するね」

マリスはそう言って近くのテーブルにつく、それに倣って私達も
同じテーブルの椅子に腰かける。

「とは言っても正直言ってそこまで複雑な物じゃないんだ。
 帝国ってさ、鉱物資源やマナが豊富だけど食糧事情があんまり宜しくないって
 レンお姉ちゃんも知ってるよね?」
「うん、それはデューンさんやラミカからそれっぽい事は聞いた事あるね」
「現皇帝になってその辺りはだいぶマシにはなってきたんだけど、昔はホントに
 厳しかったらしくてね、毎年餓死者が結構出てたみたいなんだよ」

そうなんだ、今の帝都や周辺の町などを見てもそこまで困窮してるようには
見えなかったのは今の皇帝が頑張ってるお陰って事なのかな。

「んで、王国は逆に鉱物資源が乏しい分大きな2本の川と海に面していて
 土地が凄く肥沃な上気候も温暖なんだよ、正直言ってこの世界エルシェーダ
 食糧の大部分はこの国が賄ってるって言っていいくらいに
 農林水産業が発達した国なんだ」
「成程ね………という事は帝国がその肥沃な土地を求めて
 攻め入ったって感じかな」
「そだね、まぁ当然と言えば当然の流れかな
 まぁ色々と交渉はしてたみたいだけど決裂した結果みたいだけどね~」

ふむ、まぁ食糧事情による戦争なんてどこの世界でも起こり得る事みたいだね。
まぁ人間食べなきゃ死んじゃうし、悪い言い方だけど他人が作ったものを
力づくで奪う方が手段としては1番手っ取り早いのは事実だしね。

「んで、何度か帝国と王国はやり合ってたみたいだけど正直言って
 当時の王国軍って数に任せた物量戦しか出来なかったんだよね。
 それも1つのセオリーだけど、それ以上に帝国の兵との質が違い過ぎて
 酷い時は10倍以上の兵力差をひっくり返されてたりしたんだよ
 技術的には帝国の方が遥かに上だし、温暖な環境の王国と違って
 帝国の環境は厳しい上にモンスターも多いからね、そりゃ練度に差は出るよね」

確かにそうだけど、兵力10倍差をひっくり返すなんて相当の質の差だね。
まぁそれだけじゃなくて優秀な軍師とかがいたんだろうけど。

「王国もこのままじゃマズいと思ったみたいで、周辺の小国や聖教、
 果ては魔導協会にまで援護を要請して何とか防衛してたんだけど
 兵の質の差はいかんともし難かったみたいだね
 徐々に帝国は領土を増やしていったんだよ」

そうなんだ、まぁ帝国って言うんだから軍事的に
国を広げて言ったイメージだよね、だけど………

「けど、最終的には帝国は元の領土迄押し返される。
 それをやり遂げたのが、当時ただの一兵卒だった【アルテュル=ダリュセック】
 後のグレナディーア至高騎士のルーツになった人だよ」

マリスはそこまで話すと一息つく。
それを見計らってか、マリーさんは奥から何か飲み物を持ってきて
テーブルに置いてくれる。
あ…結構いい香り、紅茶に似てるけど色が紫色だねこの飲み物。

「喉の疲れを癒す香草のお茶よ
 長話するには丁度いいんじゃないかしら?」
「ありがとマリーお姉ちゃん。流石チーフウエイトレス、気が利くね~」

マリスは出されたお茶を一口付けて話を続ける。

「アルテュルは元は貧民層出身の奴隷剣士だったんだけど、王国にある
 コロシアムではほぼ負けなしの強さを誇っててね、その力を買われて最前線に
 盾として駆り出されたんだけど、そこで頭角を発揮して帝国に押され気味だった
 戦線を次々と押し返していったんだよ」

たった1人で戦線を押し返すね………なんか御伽噺みたいになって来たね。

「アルテュルは奴隷出身ながらも頭の切れも良くて、使い捨てにされる奴隷仲間を
 助けるために次々を奇策を打ち出して帝国を翻弄させ、戦況を変えていった
 その話を聞いた王国軍部が次から次へと戦況の悪い所へ彼を投入したんだけど
 彼はその全てにおいて自分の武力、または策で戦況をひっくり返して
 いったんだよ」

う~ん、完全に英雄譚になってきたねこれ。

「当然帝国から何回も暗殺者やら謀略を仕掛けられてたみたいだけど
 これも全て撃退して、ついに王国はアルテュルの活躍で元の領地まで
 戦線を押し戻したんだよ」

マリスが再びお茶を口にに含み、のどを潤す。

「けどまぁそこで1つ面倒な事柄が起こってね、王国って結構な身分制度の
 国なんだけど、奴隷が領土を取り戻したって結果を認められない人たちがいて
 その功績を自分達の物にしてしまおうと帝国と同じ様にアルテュルを秘かに
 始末しようとしたんだよね」

うわぁ………これも良くある話だけどこの世界でもあるんだねぇ。
まぁ人の思考はほぼ変わらないし、人の悪意も当然存在はするよね。

「だけど、練度の高い帝国軍が止められなかったアルテュルを王国軍が
 止められる筈も無く逆にアルテュルが戦争に集中できなくなった結果
 これ幸いと帝国が再侵攻してきて結局アルテュルに
 頼らなざるを得なくなるんだよ」

グダグダだねぇ、まぁ戦時中っては人の思惑が交錯して
一丸と戦えた事は無いってお爺ちゃん言ってたね。

「最終的に帝国とは停戦状態になって、そこでの1番の功績者のアルテュルは
 奴隷仲間どころか軍からも英雄視されるようになって、王国のお偉いさん方も
 認めざるを得なくなっちゃったんだよ、そんなアルテュルに作られた称号が
 グレナディーア至高騎士、王国最強の騎士の称号なんだよ」

成程ね、多少誇張はされてるだろうけどそんな感じで出来た称号なら
個人の強さが大前提になるのも頷けるね。

「それ以来、グレナディーア至高騎士は王国のみならず、苦渋を
 舐めさせられた帝国にも知れ渡って今や世界最強の
 騎士の代名詞になっちゃった訳
 実際停戦後も何度か戦争やってるけど、ほぼ歴代のグレナディーア至高騎士
 有無が戦況に影響しちゃってる状態だったみたいだね」

マリスはそう言ってお茶を飲み干し、一息ついた。
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