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第3章 消えた街
第17話 水の都アクアポート②
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アクアポートの街はとても静かだ。
と言っても水の流れや人の動きは非常に多いのだが、魔物や冒険者の馬鹿騒ぎといった騒々しさがあまり感じられなかったのだ。
街の中心には大きな建物があり、ほぼ全ての商いはここで執り行われているそうである。
その建物を囲うようにいくつかの露店も出ているが、こちらは街の者が採取したものや工芸品などを販売している。
「俺たちも中に入っていいのかな?」
「どうぞどうぞ、中に入ると食料品や日用品もありますよ。
お客さん方、外からお見えになったのかしら?」
露店のお姉さんが優しく声をかけてくる。最近は海も荒れていてあまり魚も取れないので手芸品のアクセサリーを並べているようだ。
「ありがとうお姉さん、綺麗なアクセサリーだね、2人に似合うものを選んでもらってもいいかな?」
「おや、どちらかじゃないんだね?男はハッキリとしないとダメだよ?」
お姉さんの一言で、レギが我慢ならなかったのか『一つは僕に選ばせてください』と言ってミドに手渡しをしていたのだけれど。
「ありがとうなぁ、無理言うて」
宝石大好きなローズの為にわざわざルビーのルースを留め具を使って縫い付けてもらった。
見事な手捌きで作り上げていくものだから、ローズも気に入ったのか、ルースを渡して『アクセサリーを作らないか?』と持ちかけていた。
「8割ウチらの取り分、この腕なら絶対上手いこといくさかい」
そんな事を言って宝石を無理やり少し預けていたみたいだが、正直長く滞在するつもりも無いのにいいのか?なんて思っていたのだ。
その商業区域を通り越し、俺たちは食事処に訪れる。
漁に出られないせいだろうか?海の幸はほとんど品切れのようである。
「材料ならぎょうさんあるんやけどなぁ、作ってくれへんやろか?」
ローズが口惜しそうに呟くと、店員がすぐに奥へ引っ込んでしまう。
すぐに店主が出てきて『買い取らせてくれ』と言うのだ。
「もしかして、漁に出られないとか海が荒れているって、余程の事なのですか?」
流石にこれほどに深刻だとは思っておらず、つい聞いてしまう。
「最近は毎日のように海上に渦が発生してまして……ここひと月で3日しか漁に出れていないそうです。
それに、急に発生した渦に巻き込まれて重傷を負った者もおりまして」
なので最近は穏やかな波でも漁に向かわずに、山の方へ行く者が多いのだそうだ。
少し高値でも、魚介を仕入れたいと訴える主人に根負けし、俺たちは翌日からしばらく漁をする事になった。
もちろん方法は内緒ではあるのだが。
「とりあえず今持ってる分は卸してもいいのだが、この店にだけと言うわけにもいくまい」
「大丈夫です。市場を通さずに仕入れたような事がバレればこの街では二度と商売ができなくなります。たとえ露天商といえど」
その話を聞いて、突然ローズが外に出て行ってしまう。
何かあったのか?と思っていたが、戻ってきたローズの手には宝石の入った麻袋が見える。
聞けば、露店のお姉さんも少し困っていたようで、ローズもしっかり謝ってきたようである。
と言っても水の流れや人の動きは非常に多いのだが、魔物や冒険者の馬鹿騒ぎといった騒々しさがあまり感じられなかったのだ。
街の中心には大きな建物があり、ほぼ全ての商いはここで執り行われているそうである。
その建物を囲うようにいくつかの露店も出ているが、こちらは街の者が採取したものや工芸品などを販売している。
「俺たちも中に入っていいのかな?」
「どうぞどうぞ、中に入ると食料品や日用品もありますよ。
お客さん方、外からお見えになったのかしら?」
露店のお姉さんが優しく声をかけてくる。最近は海も荒れていてあまり魚も取れないので手芸品のアクセサリーを並べているようだ。
「ありがとうお姉さん、綺麗なアクセサリーだね、2人に似合うものを選んでもらってもいいかな?」
「おや、どちらかじゃないんだね?男はハッキリとしないとダメだよ?」
お姉さんの一言で、レギが我慢ならなかったのか『一つは僕に選ばせてください』と言ってミドに手渡しをしていたのだけれど。
「ありがとうなぁ、無理言うて」
宝石大好きなローズの為にわざわざルビーのルースを留め具を使って縫い付けてもらった。
見事な手捌きで作り上げていくものだから、ローズも気に入ったのか、ルースを渡して『アクセサリーを作らないか?』と持ちかけていた。
「8割ウチらの取り分、この腕なら絶対上手いこといくさかい」
そんな事を言って宝石を無理やり少し預けていたみたいだが、正直長く滞在するつもりも無いのにいいのか?なんて思っていたのだ。
その商業区域を通り越し、俺たちは食事処に訪れる。
漁に出られないせいだろうか?海の幸はほとんど品切れのようである。
「材料ならぎょうさんあるんやけどなぁ、作ってくれへんやろか?」
ローズが口惜しそうに呟くと、店員がすぐに奥へ引っ込んでしまう。
すぐに店主が出てきて『買い取らせてくれ』と言うのだ。
「もしかして、漁に出られないとか海が荒れているって、余程の事なのですか?」
流石にこれほどに深刻だとは思っておらず、つい聞いてしまう。
「最近は毎日のように海上に渦が発生してまして……ここひと月で3日しか漁に出れていないそうです。
それに、急に発生した渦に巻き込まれて重傷を負った者もおりまして」
なので最近は穏やかな波でも漁に向かわずに、山の方へ行く者が多いのだそうだ。
少し高値でも、魚介を仕入れたいと訴える主人に根負けし、俺たちは翌日からしばらく漁をする事になった。
もちろん方法は内緒ではあるのだが。
「とりあえず今持ってる分は卸してもいいのだが、この店にだけと言うわけにもいくまい」
「大丈夫です。市場を通さずに仕入れたような事がバレればこの街では二度と商売ができなくなります。たとえ露天商といえど」
その話を聞いて、突然ローズが外に出て行ってしまう。
何かあったのか?と思っていたが、戻ってきたローズの手には宝石の入った麻袋が見える。
聞けば、露店のお姉さんも少し困っていたようで、ローズもしっかり謝ってきたようである。
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