82 / 87
第3章 消えた街
第16話 水の都アクアポート①
しおりを挟む
間一髪だった。
何十メートルだろうかという崖を落ちて下の岩に頭でもぶつけたらと想像するとゾッとしてしまう。
レギが咄嗟にハーピーを召喚して救い出してくれたお陰で、奇跡的にも無傷で皆の元に戻る事ができた。
「その赤い矢はしばらく禁止にせにゃならんの……」
ピルスルのその発言で、残っていた赤い矢は全て海に射ち込まれ、俺は時折浮かんでくる魚影を見続けていたのだった。
「あ、アイテムすっごい量になってるわ」
「ホンマ?どんなんあるん?」
倒した魔物からのドロップを見ていたのだけど、やはり証は手に入っていないようだ。それどころか、持っていた魔剣の攻撃力ももう上がっていないようで、12000で止まってしまっている。
えーっと……亀からのドロップだと思うのが【万年亀の甲羅】と【ロックシェルの大楯®️】だな。
ヤドカリが【モスハーミットのほぐし身】と【大鋏®️】か。
あと【ふわふわのすり身】とか【魚の白身】とか【エビ味噌】とかがある。
「なんや、食材がめっちゃ多いやん」
「やっぱり海は食材の宝庫ですわね」
まぁ中には【毒の回った白身魚】とかも含まれていたのだけど、間違って食べると怖いので海に投げ捨てておいたのだが。
特に協力な武器は入手していなかった。ただ、【ウォーターアロー】が210本があったので、おそらく海の中にいた魔物からのドロップだろうと勝手に納得していた。
1匹30本として7匹分であろうか……。
『これなら大丈夫だろ?』と、そのまま渡したのでは威力も知れているだろうから、ローズに1束エンチャントをかけてもらってミドに渡しておいた。
崖と反対側に、6匹ほどの魔物の群れがいたので、試し打ちをしたのだが、突き刺さった周囲に水の渦が発生し魔物を全て崖の下まで押し流してしまったのだった。
「ダメだな……使う場所を考えてくれ」
「そうだな、いやすまん……」
結局今は普通の矢で我慢してもらう事になってしまう。まぁいつまでもゆっくりはしていられないだろうと、急いで次の街へ向かう事にしたのでその後戦闘をする事は無かったのだが。
次第に崖も低くなって行き、白狼たちのおかげもあって、日が沈むよりも随分前にはアクアポートが見えてきたのであった。
街の中を水路が通っており、山と海に囲まれた景色豊かな街であった。
「水の都とは上手いこと言ったものよのぅ」
ガーデニアの街で聞いた話では、山から流れる一本の水路は生活用水として、それ以外のものは運搬用や水車による動力として用いられているらしい。
たしかに、一本だけは水路というよりもそのまま川と言った方が良いほど自然のものであり、とても澄んだものであった。
「ハクもビアンコもお疲れ様、飲みすぎてお腹壊しちゃダメよ」
ミドが水を飲む白狼たちを労っている。それを見て俺も手で掬って飲もうとしたのだが、随分と汚れている自分の手に気づくのであった。
「ローズ、悪いんだが【クリーン】を使ってくれないか?よく考えたらここ数日まともに身体洗えてなかったわ」
「なんやの、昨日宿で身体拭かんかったんか?ほな銀貨一枚な」
「リキングバウトのみんなを優先してたからだろ、第一宿も一杯だったから俺は小屋で寝てたんだぞ。ほら、アクアリウムの宝石で勘弁してくれ」
インベントリから宝石を取り出すと、途端にローズは上機嫌になって皆に魔法を使っていた。お陰で灰色狼も綺麗な白狼になったようである。
「どや、随分練習したし上達したやろ?毎日ウチとミドちゃんに何度も使たからなぁ」
ローズは、そう言って随分と誇らしげにしていたのだった。
街には門は無く、幅の広い水路で囲われているので、出入りの際は橋を渡すようである。
これは魔物の侵入を防ぐためだけのものであろうか?泳いで渡ろうと思えば出来なさそうでもない。
「おーい、あんたら冒険者か?今橋を降ろしてやるからちょっと待ってな!
それと、その狼は外で待たせられるか?そんな大きなやつ街の者が怖がっちまうよ」
側から見れば2匹の巨体の狼など恐怖でしかないだろう。
すぐに指輪に戻ってもらうと、すぐに橋が架けられたのだった。
「先程はすまなかったな、見たことが無いが、遠くから来たのか?」
橋を降ろしてくれたのは、この街で見張りを任されている内の1人で、ウォーロットと名乗っていた。
北東の山岳地帯を越えた先から来たのだと言うと、俺たちが軽装である事に随分と驚いていたようだ。
以前似たような事で捕らえられた憶えのあった俺は、すぐにインベントリの説明をした。
そして、そのせいで余計に驚かれてしまったわけだ。
まぁそれ以上の事もなく無事にアクアポートに入る事ができたのだけれど、見張りのウォーロットが言うには『最近海の方が荒れる事が多いから迂闊に近寄らないように』とのことだ。
荒れると言っても、ただ波が高くなるとかではなく、急に渦が発生したりするのだと言う。
俺たちは宿や食事処をいくつか案内してもらって、その場を後にする。
「この街はギルドは無いのか?」
ギルドはウォーロットの説明には無かった、そしてこの街には複合商業用施設のような大きな建物があり、そこはいわゆる市場のようなものであるらしい。
「いえ、全ての街に魔水晶は存在するはずですが?」
ミドが言うのだからそうなのだろう。
「でも言うてなかったな、あのおっちゃん」
「宿や商業施設が兼任しておる場合もあるようじゃ、まぁまずは飯にしようではないか」
それもそうだ。随分とお腹が空いてしまっている。
この街は海と山の幸が両方味わえると聞かされており、とても期待している。
早速俺たちは、教えてもらった店へと向かったのだった。
何十メートルだろうかという崖を落ちて下の岩に頭でもぶつけたらと想像するとゾッとしてしまう。
レギが咄嗟にハーピーを召喚して救い出してくれたお陰で、奇跡的にも無傷で皆の元に戻る事ができた。
「その赤い矢はしばらく禁止にせにゃならんの……」
ピルスルのその発言で、残っていた赤い矢は全て海に射ち込まれ、俺は時折浮かんでくる魚影を見続けていたのだった。
「あ、アイテムすっごい量になってるわ」
「ホンマ?どんなんあるん?」
倒した魔物からのドロップを見ていたのだけど、やはり証は手に入っていないようだ。それどころか、持っていた魔剣の攻撃力ももう上がっていないようで、12000で止まってしまっている。
えーっと……亀からのドロップだと思うのが【万年亀の甲羅】と【ロックシェルの大楯®️】だな。
ヤドカリが【モスハーミットのほぐし身】と【大鋏®️】か。
あと【ふわふわのすり身】とか【魚の白身】とか【エビ味噌】とかがある。
「なんや、食材がめっちゃ多いやん」
「やっぱり海は食材の宝庫ですわね」
まぁ中には【毒の回った白身魚】とかも含まれていたのだけど、間違って食べると怖いので海に投げ捨てておいたのだが。
特に協力な武器は入手していなかった。ただ、【ウォーターアロー】が210本があったので、おそらく海の中にいた魔物からのドロップだろうと勝手に納得していた。
1匹30本として7匹分であろうか……。
『これなら大丈夫だろ?』と、そのまま渡したのでは威力も知れているだろうから、ローズに1束エンチャントをかけてもらってミドに渡しておいた。
崖と反対側に、6匹ほどの魔物の群れがいたので、試し打ちをしたのだが、突き刺さった周囲に水の渦が発生し魔物を全て崖の下まで押し流してしまったのだった。
「ダメだな……使う場所を考えてくれ」
「そうだな、いやすまん……」
結局今は普通の矢で我慢してもらう事になってしまう。まぁいつまでもゆっくりはしていられないだろうと、急いで次の街へ向かう事にしたのでその後戦闘をする事は無かったのだが。
次第に崖も低くなって行き、白狼たちのおかげもあって、日が沈むよりも随分前にはアクアポートが見えてきたのであった。
街の中を水路が通っており、山と海に囲まれた景色豊かな街であった。
「水の都とは上手いこと言ったものよのぅ」
ガーデニアの街で聞いた話では、山から流れる一本の水路は生活用水として、それ以外のものは運搬用や水車による動力として用いられているらしい。
たしかに、一本だけは水路というよりもそのまま川と言った方が良いほど自然のものであり、とても澄んだものであった。
「ハクもビアンコもお疲れ様、飲みすぎてお腹壊しちゃダメよ」
ミドが水を飲む白狼たちを労っている。それを見て俺も手で掬って飲もうとしたのだが、随分と汚れている自分の手に気づくのであった。
「ローズ、悪いんだが【クリーン】を使ってくれないか?よく考えたらここ数日まともに身体洗えてなかったわ」
「なんやの、昨日宿で身体拭かんかったんか?ほな銀貨一枚な」
「リキングバウトのみんなを優先してたからだろ、第一宿も一杯だったから俺は小屋で寝てたんだぞ。ほら、アクアリウムの宝石で勘弁してくれ」
インベントリから宝石を取り出すと、途端にローズは上機嫌になって皆に魔法を使っていた。お陰で灰色狼も綺麗な白狼になったようである。
「どや、随分練習したし上達したやろ?毎日ウチとミドちゃんに何度も使たからなぁ」
ローズは、そう言って随分と誇らしげにしていたのだった。
街には門は無く、幅の広い水路で囲われているので、出入りの際は橋を渡すようである。
これは魔物の侵入を防ぐためだけのものであろうか?泳いで渡ろうと思えば出来なさそうでもない。
「おーい、あんたら冒険者か?今橋を降ろしてやるからちょっと待ってな!
それと、その狼は外で待たせられるか?そんな大きなやつ街の者が怖がっちまうよ」
側から見れば2匹の巨体の狼など恐怖でしかないだろう。
すぐに指輪に戻ってもらうと、すぐに橋が架けられたのだった。
「先程はすまなかったな、見たことが無いが、遠くから来たのか?」
橋を降ろしてくれたのは、この街で見張りを任されている内の1人で、ウォーロットと名乗っていた。
北東の山岳地帯を越えた先から来たのだと言うと、俺たちが軽装である事に随分と驚いていたようだ。
以前似たような事で捕らえられた憶えのあった俺は、すぐにインベントリの説明をした。
そして、そのせいで余計に驚かれてしまったわけだ。
まぁそれ以上の事もなく無事にアクアポートに入る事ができたのだけれど、見張りのウォーロットが言うには『最近海の方が荒れる事が多いから迂闊に近寄らないように』とのことだ。
荒れると言っても、ただ波が高くなるとかではなく、急に渦が発生したりするのだと言う。
俺たちは宿や食事処をいくつか案内してもらって、その場を後にする。
「この街はギルドは無いのか?」
ギルドはウォーロットの説明には無かった、そしてこの街には複合商業用施設のような大きな建物があり、そこはいわゆる市場のようなものであるらしい。
「いえ、全ての街に魔水晶は存在するはずですが?」
ミドが言うのだからそうなのだろう。
「でも言うてなかったな、あのおっちゃん」
「宿や商業施設が兼任しておる場合もあるようじゃ、まぁまずは飯にしようではないか」
それもそうだ。随分とお腹が空いてしまっている。
この街は海と山の幸が両方味わえると聞かされており、とても期待している。
早速俺たちは、教えてもらった店へと向かったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる