隠しスキルを手に入れた俺のうぬ惚れ人生

紅柄ねこ(Bengara Neko)

文字の大きさ
66 / 87
第3章 消えた街

第3話 状況把握

しおりを挟む
「既にダンジョンの外に暴走が広がっておるなら、そろそろ見えてくるじゃろうが……」
 ピルスルが先頭となって歩く。その手にはレギが見つけた短剣が一振り。

 「皆さん気をつけて! かなりの数がいるみたいよ!」
 先程から水晶を取り出して何をしているのかと思っていたのだが、別に遊んでいるわけではなかったようだ。
 ミドには遠くを見通す索敵能力が備わっている。だからこそ王にそういう人物だと紹介された事をすっかり忘れていたのだ。

「うそ……魔素のかなり強い魔物もいっぱいいる。もしかして上位種かもしれないわ」
「だったら少しは数を減らしておかねばならんかのぅ……」
 そう言って皆が再び武器を持ち直して、再度歩みを進めたのだ。

 程なくして見えてくるダンジョン周辺に湧き出る魔物達。
 この辺りの魔素の影響か、獣系の魔物が多いようである。ただ、コボルトやウルフに混じって、何匹、何十匹かの大きな個体がいて、どう見てもそれらとは一線を画する圧倒的存在感を放っていたのだ。

「覚悟はいいか? 上位種を1匹ずつ確実に仕留めて行くぞ!」
 『この魔剣ならば上位種にも十分すぎる効果があるだろう』という事で、ピルスルが周りの雑魚を蹴散らしながら翻弄を。
 ミドの攻撃とローズの魔法で支援をするようピルスルが支持する。
 もちろんレギは回復と補助だ。

「ちょっと待ってくださる?」
 『さぁ!』という時にミドからのストップ。
 『先に私が矢を射つ』と言うのだ。
 半端に攻撃して一斉に襲いかかられても困る。『どういう作戦か?』と聞くのだが、大丈夫だから心配しないよういうだけで詳しくは説明しないのだ。

 一本の矢が放たれた。その矢は宙で3本に分かれ、それぞれが上位種の魔物を貫いていく。
 攻撃を受けた3匹の魔物は、突如その場に横たわってしまったのだ。
「うん、やっぱり大丈夫だった。ありがとうね、レギ!」
「いえ、調べるのが僕の役目でもありますから」

 どういう事だ?俺とピルスルが前を歩いている間に何か喋っていたのだろうか?
 俺たちがミドに尋ねる間もなく、ミドは次々と矢を放っていった。その数24本。

「ピルスルおじ様!あちらのフィリーベアー5体には睡眠が効かないので毒を与えます!時間を稼いでいただけますか?」
「あ、あぁ任せろ!」
「シュウさんは雑魚と一緒に睡眠状態の上位種を!私は別方向にいる魔物を狙っていきますわ!」
「わかった!」

 俺だって剣技はピルスルから習っている。コボルトの攻撃ぐらいは躱すことも容易い。
 だが、こう数が多いとどうなのだろうとは思っていた。しかし……。
 目の前に立ちふさがった魔物達は、俺の持つ魔剣の一振りにも耐えることなく、消滅していく。

「まるで無双しているようだな…」
 いつまでも剣を振り回して、寝ている上位種にとどめを刺す。
 確か全部で24発、72匹?
 まだ20体ほどしか倒していないという時に、徐々に睡眠状態から回復していく魔物達。

「グオォォォ!!」
 それに気付かず、俺は後ろからの強襲を受ける。
「ぐっ……?! ……でぇぇい!!」
 背中から大きな衝撃を受けながらも、振り返りハイウルフの脚に斬りつける。よろめいたところにもう一度斬りつけ、ようやく倒すことができる。

「やばいな、随分と復活しているじゃないか……」
 周りの魔物は数を減らすどころか、増しているようにも感じてしまう。
 新たに生み出されているのではないだろうか……?
「シュウ!撤退じゃ!これはマズイぞ」
 ピルスルの大声で俺たちはローズ達の元に戻る。

「どうやら相当大きな魔石の暴走であるようじゃ。
 下手すればこの辺りだけでなく街まで被害が及ぶかもしれん、避難の準備をさせねばなるまい」
 ピルスルはそう告げると、転移魔法で一足先にリキングバウトに戻ると言う。
 俺たちも追って戻る様に、と。

「ねぇ、シュウさん。ちょっとお願い」
「なんだ?」
 ピルスルがいなくなりすぐに、ミドからのお願い事をされる。
 『エンチャントした矢を一本欲しい』と。

 ローズではなく俺の持つ赤い矢を一本エンチャントし、広範囲の雑魚どもを殲滅しておいた方が良いだろうと言う事である。

「それもそうだな、散らばってしまう前に一気に叩いた方が良いだろうな……」
 なぜ俺がそんな矢を持っていると知っているのか?またローズかドルヴィンが俺のことを爆弾魔扱いでもしたのだろうな。などと思いながらも深く考えるのはやめておくのだった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...