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第3章 消えた街
第4話 アーティファクト
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「そうだな……ちょっと待っててくれ」
俺はそう言ってインベントリから一束の赤い矢を取り出した。
スケルトンの群れを倒した矢を作ろうかとも思ったのだが、あれは危険すぎる上2度のエンチャントが必要であった。
なので、この赤い矢にローズが状態異常を付与して…。
「ウチ、そっち系得意じゃないんやって」
いきなり頓挫してしまった。だが、無いよりはマシだろうと、毒の付与をかけてもらってそれを俺の【Wエンチャント】スキルで再度エンチャントする。
これで炎耐性のあるやつにも(獣系にはそうそういないようだが)毒の効果である程度減らす事も出来るであろう。多分。
「へぇ~、考えたやん」
「じゃあその矢を射ちますね」
しかし、目の前にあるのは赤黒くいかにも怪しげな【矢】であるのだが……。
本当にこれを射っても大丈夫なのだろうか?
「何してるのですか?早く倒さないとこっちにもやって来ますよ?」
そう言われては渡さざるを得まい。
「じゃあ射ちますわよっ!」
限界まで引かれた弦から手が離れ、赤黒い矢は周りに同じく赤黒いものを纏い始め天に放たれた。
まるで周囲から何かを吸い寄せているような光景に目を奪われていると、地上に落ちた3本にの矢が大爆発を起こし毒煙を撒き散らしていた。
何本も何本も……。
次第に遠くまで矢が飛ばされていき、残った100程の魔物と踏み荒らされ燃やされ、それでも残った草木も枯れ果てて。
地獄と思えるような光景がそこにはあったのだ。
「さぁっ、行きましょう」
全て射ち終えたミドは、さっさと引き返して行く。それに続いてローズも付いていくのだが、何かを喋っているようである。
「風魔法をあのような使い方するなんて驚きですわ」
「せやねん、前にもシュウと洞窟ん中のゴブリンアレでやったんよ」
『あぁ、遠くまで飛んでいったのはローズの風魔法のおかげなのか』と分かったのは、その会話が聞こえて来た時であった。
しかし、心なしか辺りの草木に元気が無いように感じられる。毒の効果がここまで広がっているのでないのなら良いのだが……。
「あっ!そうだった!」
俺が急に大声を出したもんだから、3人とも足を止め振り返る。
「何やの?急に」
「いや、せっかくなら俺が射った方が良かったかなぁと思ってさ」
「なんでですの?」
別にお前じゃ威力が弱いとか、そんな事を言うつもりは無かったのだが、ミドの少し横から恐ろしい視線を感じるのだった。
「あ、いや、俺のアクセサリー炎属性の強化だし。
霊薬も使えば威力何倍もでるからさ……。ごめん何でもない」
別に俺の放った矢でも魔法で3本にする事ができるのだそうだし、ちょっと勿体無かったなと思うのだった。
俺は、インベントリから霊薬をいくつか取り出してミドに渡しておいた。
これに関しても、本来であれば王都出発前にいくつか用意していたらしいのだが、荷物全部置いて来てしまったのだから仕方ない。
「ん?戻ったか。儂は王に此度の報告をしてくるからしばらく街の者達を守ってくれ」
街に戻ると、門の近くでピルスルが持ち待っており、その足元には矢の束がいくつかある。
「準備が出来たら、西のダンジョンからなるべく離れ避難しておけ。暴走は規模によって変わってくるが、おそらく5日から1週間は続くだろう。
そうだな……【ひかりの洞窟】辺りが良いだろう。あそこなら傷跡へ行けば魔物は出てくることはない」
そう言い終わると、俺たちに『質問は無いか?』と聞いて、すぐに王都へ転移したようであった。
「1週間も続くん?!」
考えていた以上に深刻だと思ったようで、ローズは驚きを隠せないでいると、ミドが『方法が無いわけじゃないわよ』と唐突にとんでもないことを言い出す。
「魔石に結界を張るのよ。もちろん街を覆うような薄い結界じゃダメ、魔石になるべく近付いてできるだけ小さく厚い結界を張らないと保たないわ」
それはつまり、穴の空いた水嚢にテープで補強し、水が漏れるのを防ぐような感じであるらしい。
どの街にも結界を張るのに使っているアーティファクトがある。それだけは過去、処分の対象にならなかった……魔水晶である。
魔素を放出し続けるおよそ1週間を、魔水晶と共に安置しておくことで、被害は抑えられ魔水晶には非常に多くの魔素が溜まるのだそうだ。
当然1週間は街に結界も消えてしまうわけなのだが『どのみち避難するのであれば問題無いじゃない?』と言われればそんな気もしてしまう。
今ならまだダンジョン周辺にしか魔物は出てこない。感覚でしかないが、あと4、5日もすれば街まで被害が広がるだろう。
そうなっては街の結界では抑えきれず、溢れた魔物達が近くの街からどんどんと呑み込んでいくだろうと。
結局俺たちも街には戻れず、あまつさえ他の街に被害が及び、多くの命が危機に晒されるだろうと。
「このままじゃそうなりそうね。私の水晶占いじゃ、そう出たわ」
と、ミドは締めくくった。
「すごーい、ミドちゃんむっちゃ物知りやん」
「お城で毎日座学を受けてたらそんなことくらい嫌でも覚えちゃうわよ」
俺はそう言ってインベントリから一束の赤い矢を取り出した。
スケルトンの群れを倒した矢を作ろうかとも思ったのだが、あれは危険すぎる上2度のエンチャントが必要であった。
なので、この赤い矢にローズが状態異常を付与して…。
「ウチ、そっち系得意じゃないんやって」
いきなり頓挫してしまった。だが、無いよりはマシだろうと、毒の付与をかけてもらってそれを俺の【Wエンチャント】スキルで再度エンチャントする。
これで炎耐性のあるやつにも(獣系にはそうそういないようだが)毒の効果である程度減らす事も出来るであろう。多分。
「へぇ~、考えたやん」
「じゃあその矢を射ちますね」
しかし、目の前にあるのは赤黒くいかにも怪しげな【矢】であるのだが……。
本当にこれを射っても大丈夫なのだろうか?
「何してるのですか?早く倒さないとこっちにもやって来ますよ?」
そう言われては渡さざるを得まい。
「じゃあ射ちますわよっ!」
限界まで引かれた弦から手が離れ、赤黒い矢は周りに同じく赤黒いものを纏い始め天に放たれた。
まるで周囲から何かを吸い寄せているような光景に目を奪われていると、地上に落ちた3本にの矢が大爆発を起こし毒煙を撒き散らしていた。
何本も何本も……。
次第に遠くまで矢が飛ばされていき、残った100程の魔物と踏み荒らされ燃やされ、それでも残った草木も枯れ果てて。
地獄と思えるような光景がそこにはあったのだ。
「さぁっ、行きましょう」
全て射ち終えたミドは、さっさと引き返して行く。それに続いてローズも付いていくのだが、何かを喋っているようである。
「風魔法をあのような使い方するなんて驚きですわ」
「せやねん、前にもシュウと洞窟ん中のゴブリンアレでやったんよ」
『あぁ、遠くまで飛んでいったのはローズの風魔法のおかげなのか』と分かったのは、その会話が聞こえて来た時であった。
しかし、心なしか辺りの草木に元気が無いように感じられる。毒の効果がここまで広がっているのでないのなら良いのだが……。
「あっ!そうだった!」
俺が急に大声を出したもんだから、3人とも足を止め振り返る。
「何やの?急に」
「いや、せっかくなら俺が射った方が良かったかなぁと思ってさ」
「なんでですの?」
別にお前じゃ威力が弱いとか、そんな事を言うつもりは無かったのだが、ミドの少し横から恐ろしい視線を感じるのだった。
「あ、いや、俺のアクセサリー炎属性の強化だし。
霊薬も使えば威力何倍もでるからさ……。ごめん何でもない」
別に俺の放った矢でも魔法で3本にする事ができるのだそうだし、ちょっと勿体無かったなと思うのだった。
俺は、インベントリから霊薬をいくつか取り出してミドに渡しておいた。
これに関しても、本来であれば王都出発前にいくつか用意していたらしいのだが、荷物全部置いて来てしまったのだから仕方ない。
「ん?戻ったか。儂は王に此度の報告をしてくるからしばらく街の者達を守ってくれ」
街に戻ると、門の近くでピルスルが持ち待っており、その足元には矢の束がいくつかある。
「準備が出来たら、西のダンジョンからなるべく離れ避難しておけ。暴走は規模によって変わってくるが、おそらく5日から1週間は続くだろう。
そうだな……【ひかりの洞窟】辺りが良いだろう。あそこなら傷跡へ行けば魔物は出てくることはない」
そう言い終わると、俺たちに『質問は無いか?』と聞いて、すぐに王都へ転移したようであった。
「1週間も続くん?!」
考えていた以上に深刻だと思ったようで、ローズは驚きを隠せないでいると、ミドが『方法が無いわけじゃないわよ』と唐突にとんでもないことを言い出す。
「魔石に結界を張るのよ。もちろん街を覆うような薄い結界じゃダメ、魔石になるべく近付いてできるだけ小さく厚い結界を張らないと保たないわ」
それはつまり、穴の空いた水嚢にテープで補強し、水が漏れるのを防ぐような感じであるらしい。
どの街にも結界を張るのに使っているアーティファクトがある。それだけは過去、処分の対象にならなかった……魔水晶である。
魔素を放出し続けるおよそ1週間を、魔水晶と共に安置しておくことで、被害は抑えられ魔水晶には非常に多くの魔素が溜まるのだそうだ。
当然1週間は街に結界も消えてしまうわけなのだが『どのみち避難するのであれば問題無いじゃない?』と言われればそんな気もしてしまう。
今ならまだダンジョン周辺にしか魔物は出てこない。感覚でしかないが、あと4、5日もすれば街まで被害が広がるだろう。
そうなっては街の結界では抑えきれず、溢れた魔物達が近くの街からどんどんと呑み込んでいくだろうと。
結局俺たちも街には戻れず、あまつさえ他の街に被害が及び、多くの命が危機に晒されるだろうと。
「このままじゃそうなりそうね。私の水晶占いじゃ、そう出たわ」
と、ミドは締めくくった。
「すごーい、ミドちゃんむっちゃ物知りやん」
「お城で毎日座学を受けてたらそんなことくらい嫌でも覚えちゃうわよ」
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