君は、お、俺の事なにも知らないし、俺だって君の事知らないのに結婚て……? え? それでもいい?

猫宮乾

文字の大きさ
15 / 34
―― 本編 ――

【015】結婚クエスト(★)

しおりを挟む


 静森が訪れる朝が訪れた。本日もおはようの手紙に返事をした砂月は、それから慧山からの手紙を見た。

『ローブ返ってきた、ありがとう! 手を回してくれたんだろ!? さすが!』

 その文面に、砂月は微笑した。

『どうかな。よかったね。また何かあったら教えてね』

 実際、直接的に行動を起こしたわけではないので、曖昧にそれだけ簡潔に返した。それから悠迅から来ていた手紙を改めてみる。そこには、お見合い話はなくなりローブの返却も約束し――その上で、連合とまではいかないが【Lark】と協力関係になったという文面が広がっている。

「【エクエス】と【Lark】は穏便にすんだって事だと思うけど、きっかけはなんだったんだろ?」

 今度時間がある時に、それとなく聞いてみようと砂月は思った。
 今日は静森が来るのだから、静森と一緒にいる以外の時間はない。

「もうすぐだ」

 時計を見て、砂月は頬が緩むのを止められなかった。今日も掃除には気合いを入れたし、肉じゃがの用意は万端である。現在は朝の八時。今日も気合いを入れて早く起きた結果だ。

 今日の待ち合わせは十一時で、肉じゃがを食べてから結婚クエストをしようかと手紙で話した。それから砂月はそわそわしっぱないしで、十一時にできたてが完成したらもっと美味しいかも知れないと判断し、途中からストック品でなく進行形で料理を作る事にした。

 包丁を手に持ち、じゃがいもに当てて調理スキルを発動させると、くるくると皮がむけていく。人参も同様にし、玉ねぎを切って、と、着実に準備を整えていく。

 そうしていたら少し早く、十時半にドアがノックされた。

「っ、はーい!」

 キッチンから声をかけると、扉が開いて静森が入ってきた。

「あ、ごめん。今肉じゃがを作っていて」

 きんぴらゴボウも作ろうとしていた砂月が、包丁を持ったままで振り返ると、入ってきた静森が微笑した。

「そうか」

 綺麗な笑顔に見惚れそうになりつつ砂月が頷くと、歩みよってきた静森が隣に立った。

「良い匂いだな」
「うん。作りたての方が美味しいって噂を聞いてさ」
「そうらしいな。ありがとう。そのエプロン、よく似合ってるな」
「そ?」
「ああ。扉を開けるとお前がいて、それも俺を待っていてくれて、料理までしてくれているというのが幸せでたまらない」

 静森の声に、砂月はあからさまに赤面した。静森は本当に甘い言葉が多いと思う。
 その後料理を完成させて器に盛り付けた。
 運ぶのは静森も手伝ってくれた。
 そして対面する席に座り、お互いに箸を前にする。

「いただきます」
「いただきます」

 二人の声が重なる。その後箸を手に、静森が綺麗な唇に肉じゃがを運ぶのを、砂月はドキドキしながら見ていた。

「味はどう?」
「最高に美味い」
「よかったぁ」

 静森の声にへにゃりと笑った砂月は、自分でも肉じゃがを味わう。

「今日はどの結婚クエストをする?」

 砂月が問いかけると綺麗に箸を使いながら、静森が小首を傾げた。

「初級のものから一つ一つスキルを取って、それぞれのレベルを上げていくのがいいと俺は思う。そうすると伴侶レベルも上がるらしいな。尤も、レベルは全てじゃない。俺は砂月がいてくれたらレベルなど低くても構わない」
「それは俺も同じ気持ちだけど、そうだね。じゃあ一個ずつ地道に行こうか」

 照れくさくなりつつ頷いた砂月は、それから調べておいたNPCから受諾するクエストについて思い出した。

「確か愛恋都市キューピットの教会庭の噴水そばのNPCから受けるんだよね?」
「そう聞いている」
「楽しみだね」

 そんなやりとりをしながら、二人は食事を終えた。
 こうして、目的の愛恋都市へと向かうと、そこにはちらほらと人がいた。多くの通行人の指には、ペアリングが嵌まっている。あまりここを拠点にしている者はいない様子で、皆スキルクエストに訪れている様子だ。

 砂月は歩きながら、自分より少し背の高い静森が、自分のペースにあわせて歩いてくれているようだと理解し、そういう些細な気遣いが嬉しくなった。広場前の道を抜けて教会の門から中に入る。そして中庭にまわると、なるほど噴水があって、その前にNPCが立っていた。これはログアウト不可になる前には、見た事が無いように砂月は思った。

 現在の状況になってからNPCは、大抵が彫像の姿をしている。リアリティある肉体を伴ったNPCにはまだ砂月は遭遇していない。まばらにいる人々の間を抜けて、砂月は静森と共にNPCの前へと立った。

「見てみよう!」
「そうだな」

 こうして二人でNPCを視覚操作で選択して、クエストを開いた。
 砂月が一番上を見ると、【伴侶スキルLv.1】という記載があり、それをまずは開いてみる。

『三十分間恋人繋ぎで街を散策すること』

 とあった。意外と容易であるが、改めて手を繋いで歩くと考えると気恥ずかしくもある。ついでにLv.2も見ると、『唇と唇でキスをすること』と書かれている。こういったシナリオに関係ない都度生成されるクエストは、同時に三つまで受諾可能なので、砂月はさらにLv.3も見た。『宿屋で伴侶1が伴侶2を後ろから抱きしめて十五分間話をすること』と書かれている。想像しただけで砂月は照れてしまった。

「砂月、Lv.1からLv.3まで見たんだが」
「お、俺も見たよ」
「同時進行で3つクリアしないか?」
「う、うん!」

 反射的に砂月が答えると、静森が嬉しそうに頷いた。こうして二人でクエストを三つ受諾して、そしてすぐに静森が砂月の左手を右手で恋人繋ぎで握った。

「まずは街を歩こう」
「そうだね」
「行こう」

 こうして二人で教会の敷地から外へと出て、ゆったりと手を繋いで歩いた。
 石畳の綺麗な街をしていて、各地に噴水がある。時々シャボン玉が飛んでいるのは仕様だ。空の色は穏やかな水色をしている。季節はマップ事に固定だが、天候はその時々によって変化するため、晴れていてよかったなと砂月は思った。

 二人で雑談をしながら歩いていると三十分などあっという間で、気づいた時には【クエストクリア】という表示が、クエスト一覧の場所に出ていた。

「早かったね」

 砂月が言うと、静森がきゅっと手に力を込めた。

「ああ。このまま手を繋いで、宿屋に行くか」
「う、うん……」
「少しハードルが高いクエストにも思えるが」
「え? どうして? 抱きしめるのとキスが? もしかして、嫌?」

 不安になって砂月が尋ねると、静森が微苦笑して首を振った。

「それだけでは足りなくなりそうで怖いからだ」
「っ」
「さて、行くか」

 こうして二人で宿屋へと入った。受付で鍵を受け取り二階の部屋へと入る。大きめのベッドが一つと、床にラグが敷かれていてそばにローテーブルがある。

「砂月」
「ん? っ!」

 名前を呼ばれた砂月が振り返ると、ドアが閉まってすぐ、静森が掠め取るように砂月の唇を奪った。あまりにも早かったものだから砂月が瞠目していると、【クエストクリア】となった。砂月は真っ赤になる。そして照れているかを見られないようにと、静森に抱きついて、静森の胸板に額を押しつけた。

「不意打ちすぎるよ」
「嫌だったか?」
「そんなわけないじゃん」

 砂月がそう言ってなんとか顔を上げると、静森が砂月の顎を持ち上げた。そして顔を傾けて、再度唇を奪う。その後角度を変えて何度か口づけを交わした後、二人はラグの上に座ることにした。静森が砂月を後ろから抱きしめる形だ。

 無性にドキドキしてしまって、砂月は自分の心臓の音が静森に聞こえたらどうしようかと怖くなる。静森の腕にぎゅっと優しく力が入ると、なおさら静森のことを意識してしまう。

「れ、Lv.1がヒール量upで……Lv.2が攻撃力upで、Lv.3が素早さupのバフって書いてあったよね」
「そうだな。単独でいる時も使用可能と書いてある。ただし自分自身か伴侶にのみ使用可能なようだな」

 気を紛らわせようとスキルの話をするのだが、意識しすぎてしまってドキドキが止まらない。時間が経つのが奇妙なほど長く感じる。後ろからなので、赤面していても気づかれないのがよかったと砂月は思った。

 こうしてなんとか十五分間経過し、無事に【クエストクリア】となった。
 クリアしてスキルを得ると、自動的に一覧からクエスト名が消える。

 砂月がそれを確認していたら、静森が親指で砂月の唇を後ろから撫でた。

「!」

 あからさまに砂月がビクリとすると、静森がくすくすと笑った。

「本当に砂月は、まだ緊張するんだな」
「す、するよ! 好きな相手とこんな風にしてたらする!」
「砂月に好きだと言われると嬉しくてたまらない」
「ン」

 静森が後ろから、砂月の肩口に唇を落とす。ツキンと疼いたので、砂月はキスマークをつけられたのだと判断した。

「今日は、ハイネックじゃないよ!」
「この街にいる多くは相手がいるのだし、今日は俺がずっとお前の手を繋いでいるから、見せつけて歩いても良いだろう」
「うっ……」

 頬が熱くなってきた砂月は、首だけで振り返り、チラリと静森を見上げる。

「好きだよ」
「俺も砂月を愛してる」

 それから二人は、再び唇を重ねた。最初は触れあうだけだったが、次第にキスが深くなる。その間、静森がさらさらと砂月の和服を乱した。気づけば脱がされていた砂月は、それが決して嫌ではないため、静森に抱きつきつつ幸せに浸る。

 その後二人はベッドへと移動した。

 じっくりと砂月の後孔を解してから、静森が挿入する。挿入の衝撃には、まだ砂月は慣れなくて、思わず静森の首に両腕を回す。そんな砂月の左足を持ち上げて、静森は斜めに貫いた。

「ぁ、ァ……あっ!」

 そうされると感じる場所へとダイレクトに刺激がとんでくるものだから、砂月は声を堪えられなくなる。静森が抽挿する度に、砂月の体の奥が熱くなっていく。

「ぁ、ヤっ、出る……出ちゃう、っ」
「一度出せ」
「ンあ――!」

 静森に強く貫かれた時、砂月は中だけの刺激で放った。白濁とした液が、静真の引き締まった腹筋を濡らす。砂月が必死で息をしていると、静森が動かず呼吸が落ち着くのを待ってくれた。

「大丈夫か?」
「う、ん……ぁァ」

 砂月が頷くと、再び静森が動き始める。ゆっくりと中の奥深くへと陰茎を進めては、次に腰を引き、それから再び奥を貫く。次第にその動作が速くなっていく。

「あ、あ、あ」

 静森が動く度に、砂月の口からは、甘い嬌声が零れる。

「んぅッ、あァ!!」

 感じる場所をぐりと刺激された頃には、再び砂月の陰茎からは先走りの液が垂れていた。

「だ、だめ、また……ぁア! ああっ!! ンあ!」

 思わず砂月がギュッと締め上げると、静森が息を詰めた。そしてより動きが激しくなる。

「俺も出す」

 宣言した静森が、一際激しく砂月の中を打ち付けた。その衝撃で砂月は果てる。静森は陰茎を引き抜くと、ぐったりとした砂月の腹部に射精した。熱い白液が肌を濡らす感覚に砂月は恥ずかしさと幸福感を同時に感じつつ、大きく吐息する。

 その後は体を清めてから、二人で暫しの間、宿屋で寝転がって談笑していた。
 優しい静森の瞳を見ているだけで、砂月の気持ちは満ちあふれたものに変わる。

「そろそろ行くか。ずっとこうしていたいが」
「うん、行こう。その……いつだってまた、一緒にいたいと思ったらいられるんだからね」
「ああ。その特権を俺は手に入れた」

 こうして二人は服を着てから再び恋人繋ぎをして、宿屋を出た。
 この日はその街の【転送鏡】の前で、二人は最後にまたキスをしてから、別々の帰路についた。



しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

結婚間近だったのに、殿下の皇太子妃に選ばれたのは僕だった

BL
皇太子妃を輩出する家系に産まれた主人公は半ば政略的な結婚を控えていた。 にも関わらず、皇太子が皇妃に選んだのは皇太子妃争いに参加していない見目のよくない五男の主人公だった、というお話。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

絶対に追放されたいオレと絶対に追放したくない男の攻防

藤掛ヒメノ@Pro-ZELO
BL
世は、追放ブームである。 追放の波がついに我がパーティーにもやって来た。 きっと追放されるのはオレだろう。 ついにパーティーのリーダーであるゼルドに呼び出された。 仲が良かったわけじゃないが、悪くないパーティーだった。残念だ……。 って、アレ? なんか雲行きが怪しいんですけど……? 短編BLラブコメ。

有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います

緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。 知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。 花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。 十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。 寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。 見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。 宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。 やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。 次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。 アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。 ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。

処理中です...