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第3章 王都騒乱編
第8話 冒険者ギルド中央支部
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「さて、ここまでの話で疑問のある者は居るかの?」
話の区切りが付いたところで、ゼムスさんがそう切り出す。
「あ、ジョージ君以外で、じゃ」
静かに手をピンとあげたジョージは却下された。南無南無。
「ある程度、共通認識はできたと思うが、すぐにでも動かないと大変な事になりそうじゃな」
「ええ、とりあえずみんなと相談してから動けば間に合うと思って、あのバカ達を放置した昨日の私を殴りたいくらいだわ」
そうか、リーナさんは昨日が城に行く日だったのか。ずっと行きたく無いって言ってたけど、ちゃんと行ったんだな。
「まあ、過ぎた事を悔やんでもしょうがないですよ。これからの事を論議しましょう。
さしあたっては大きく3つですね」
そう言いながら、みんなを見渡すとジョージ以外は頷いてくれた。
「まず1つ目が勇者について。これは王城に入る必要があるので後回しですね。
2つ目が魔物の変異・・・凶暴化について。これは冒険者ギルドへ警戒するように伝えた上で、調査が必要だと思います。
3つ目は私事で申し訳ありませんが、シルクとの合流です。ガルムが増えると戦力にもなりますしね」
「うむ、そうじゃな。リョーマの言った通りで問題ないじゃろう」
「私も異存ないわ。ただ魔物への影響だけど、王都のダンジョンも例外じゃないとしたら、ちょっと不味いわね」
あっ、そうか。王都のダンジョンは初心者がお試しに行くダンジョンだ。当然出現する魔物も大したことない。
大したことない魔物しか出ないつもりでダンジョンに潜る冒険者が、果てしてどこまで狂暴化した魔物に太刀打ちできるのか・・・。
「確かに、王都の周辺にはそんなに魔物は出ないので問題ないですが、ダンジョンは不味いですね。
下手したら死者が出そうです。すぐにでも新規の入場を規制してもらわないと!」
「そうじゃな、まずは全員で冒険者ギルドへ。そこでダンジョンの封鎖を依頼してから情報収集組とダンジョン組に分かれる形でいいかの」
「とりあえずミルクはダンジョンに先行するの! ガルムに乗って行くから貸して欲しいの!」
ミルクとガルムなら王都のダンジョンに出る魔物が狂暴化したところで問題はなさそうだ。
「分かった。じゃあ、ミルクとガルムはダンジョンに先行してくれ。最短距離でダンジョンを潜りつつ、出会う魔物を殲滅。冒険者もこっそり助けて上げつつ、シルクとの合流を目指して!
その間に他のメンバーでまずは冒険者ギルドに行きましょう」
「分かったわ!」
まずは【収納】からガルムを出して、ミルクに預ける。ミルクはガルムに乗ると透明になる魔法を使って、早速ダンジョンに向かって行った。
「じゃあ、僕たちも行きましょう!」
馬車を準備している時間も勿体ない。幸い、鈴木さんもこの1年でパワーレベリングをしてそこそこレベルが上がっている。走った方が早いだろう。
問題は・・・。
「俺はどうしたらいい? というか、俺のスキルはリョーマに付いて行けって言ってるんだけどな」
ジョージも連れて行くしかなさそうだ。仕方ない。
「リーナさん、ゼムスさん、鈴木さんは気配を絶ちつつ最速でギルドまで来て貰えますか? 中央支部でいいですよね? 僕はジョージを運んで先に行きます」
先に行ってちょっとやりたい事もあるしね。俺は3人が頷くのを見届けると、ジョージを抱えて窓から飛び立った。
「また飛ぶのかぁぁぁ!」
ジョージの絶叫を聞きながら。
☆
王都の冒険者ギルドは4つ支部が存在する。北門、南門、西門に近い支部と、中央にある中央支部だ。中央は支部と言うか本部なんだけど、中央支部と呼ばれている。
ゼムスさんの屋敷も王都の中央付近にある為、中央支部には5分もかからずに到着した。
石造りで3階建ての結構大きな建物だ。ここはデグモ王国の冒険者ギルドを総括している。重要な話をするならここ以外にないだろう。
「ふぅ。慣れると絶叫マシンみたいで楽しいな」
開き直ったジョージを横目にギルドに入る。
ギルドに入ると、お昼と言う事もありガランとしていた。冒険者ギルドが混雑するのは、依頼を受ける朝と報告をする夕方と相場は決まっている。この世界でもご多聞に漏れず、その傾向だ。
ガラガラの受付の内、いつも並ぶ列へ足を運ぶ。この1年で何度も来ているので勝手知ったる何とかだ。列とは言ったけど、今は他に並んでいる人が居ないからそのまま受付まで進む。
「あら、いらっしゃいリョーマさん。エナンに里帰りするんじゃなかったの?
私に会いに来てくれたの? それとも、やっとSランク冒険者になる気になった?」
そこに居たのはエナンの街に居た犬獣人の受付嬢、マリーナさんだ。半年程前、栄転で王都の中央支部にやってきた。
何でもエナンの街で俺の担当をしていたから、評価がとても上がり王都に栄転したとか何とか。
「こんにちはマリーナさん。今日の要件は後者ですね」
「そうよね。いくら言ってもリョーマさんはSランクになってくれないわよね・・・え? 今何て?」
「Sランク冒険者になります。グランドマスターに会わせて頂けますか?」
Sランク冒険者になれば、様々な特典を受けられる。個人の判断でダンジョン閉鎖等も可能だ。本当は目立ちたくないのでなる気はなかったけど、状況が状況だから仕方ない。この先、狂暴化した魔物を相手にするのに肩書は有った方がいいだろう。
ちなみにグランドマスターとはデグモの国にある冒険者ギルドで一番偉い人だ。各地にあるギルド支部の支部長のまとめ役でもある。
「え、ええ、もちろんよ! リョーマさんは実績だけなら1年以上前にSランクだからね。
さあ、ついてきて頂戴! っと、そっちの子は?」
「こいつはジョージ。俺の付き人です。一緒に行っていいですか?」
「オーケー、大丈夫よ。さあ、付いて来て」
俺は付き人かよ。とか言ってるジョージを引っ張りながら、3階に案内される。
マリーナさんがグランドマスターの部屋の前に居た秘書の人に話をすると、秘書の人は部屋に入っていった。
「じゃあ、リョーマさんは呼ばれるまでここで待っててね。私は受付に戻ってるから。後で結果を教えてね」
「あ、マリーナさん。もう少ししたら神官長のゼムスさんがいらっしゃいます。
一緒に来たメンバーも含めて、全員ここに呼んでもらっていいですか?」
「え? 神官長!? わ、分かったわ。すぐにお通しするわ!」
そう言って、慌てて戻って行った。他にも王女様とか一緒に来るけど、まあ言わなくていいよね。
「おう、リョーマ入れ!」
しばらく待っていると部屋の中から俺を呼ぶ声が聞こえた。
話の区切りが付いたところで、ゼムスさんがそう切り出す。
「あ、ジョージ君以外で、じゃ」
静かに手をピンとあげたジョージは却下された。南無南無。
「ある程度、共通認識はできたと思うが、すぐにでも動かないと大変な事になりそうじゃな」
「ええ、とりあえずみんなと相談してから動けば間に合うと思って、あのバカ達を放置した昨日の私を殴りたいくらいだわ」
そうか、リーナさんは昨日が城に行く日だったのか。ずっと行きたく無いって言ってたけど、ちゃんと行ったんだな。
「まあ、過ぎた事を悔やんでもしょうがないですよ。これからの事を論議しましょう。
さしあたっては大きく3つですね」
そう言いながら、みんなを見渡すとジョージ以外は頷いてくれた。
「まず1つ目が勇者について。これは王城に入る必要があるので後回しですね。
2つ目が魔物の変異・・・凶暴化について。これは冒険者ギルドへ警戒するように伝えた上で、調査が必要だと思います。
3つ目は私事で申し訳ありませんが、シルクとの合流です。ガルムが増えると戦力にもなりますしね」
「うむ、そうじゃな。リョーマの言った通りで問題ないじゃろう」
「私も異存ないわ。ただ魔物への影響だけど、王都のダンジョンも例外じゃないとしたら、ちょっと不味いわね」
あっ、そうか。王都のダンジョンは初心者がお試しに行くダンジョンだ。当然出現する魔物も大したことない。
大したことない魔物しか出ないつもりでダンジョンに潜る冒険者が、果てしてどこまで狂暴化した魔物に太刀打ちできるのか・・・。
「確かに、王都の周辺にはそんなに魔物は出ないので問題ないですが、ダンジョンは不味いですね。
下手したら死者が出そうです。すぐにでも新規の入場を規制してもらわないと!」
「そうじゃな、まずは全員で冒険者ギルドへ。そこでダンジョンの封鎖を依頼してから情報収集組とダンジョン組に分かれる形でいいかの」
「とりあえずミルクはダンジョンに先行するの! ガルムに乗って行くから貸して欲しいの!」
ミルクとガルムなら王都のダンジョンに出る魔物が狂暴化したところで問題はなさそうだ。
「分かった。じゃあ、ミルクとガルムはダンジョンに先行してくれ。最短距離でダンジョンを潜りつつ、出会う魔物を殲滅。冒険者もこっそり助けて上げつつ、シルクとの合流を目指して!
その間に他のメンバーでまずは冒険者ギルドに行きましょう」
「分かったわ!」
まずは【収納】からガルムを出して、ミルクに預ける。ミルクはガルムに乗ると透明になる魔法を使って、早速ダンジョンに向かって行った。
「じゃあ、僕たちも行きましょう!」
馬車を準備している時間も勿体ない。幸い、鈴木さんもこの1年でパワーレベリングをしてそこそこレベルが上がっている。走った方が早いだろう。
問題は・・・。
「俺はどうしたらいい? というか、俺のスキルはリョーマに付いて行けって言ってるんだけどな」
ジョージも連れて行くしかなさそうだ。仕方ない。
「リーナさん、ゼムスさん、鈴木さんは気配を絶ちつつ最速でギルドまで来て貰えますか? 中央支部でいいですよね? 僕はジョージを運んで先に行きます」
先に行ってちょっとやりたい事もあるしね。俺は3人が頷くのを見届けると、ジョージを抱えて窓から飛び立った。
「また飛ぶのかぁぁぁ!」
ジョージの絶叫を聞きながら。
☆
王都の冒険者ギルドは4つ支部が存在する。北門、南門、西門に近い支部と、中央にある中央支部だ。中央は支部と言うか本部なんだけど、中央支部と呼ばれている。
ゼムスさんの屋敷も王都の中央付近にある為、中央支部には5分もかからずに到着した。
石造りで3階建ての結構大きな建物だ。ここはデグモ王国の冒険者ギルドを総括している。重要な話をするならここ以外にないだろう。
「ふぅ。慣れると絶叫マシンみたいで楽しいな」
開き直ったジョージを横目にギルドに入る。
ギルドに入ると、お昼と言う事もありガランとしていた。冒険者ギルドが混雑するのは、依頼を受ける朝と報告をする夕方と相場は決まっている。この世界でもご多聞に漏れず、その傾向だ。
ガラガラの受付の内、いつも並ぶ列へ足を運ぶ。この1年で何度も来ているので勝手知ったる何とかだ。列とは言ったけど、今は他に並んでいる人が居ないからそのまま受付まで進む。
「あら、いらっしゃいリョーマさん。エナンに里帰りするんじゃなかったの?
私に会いに来てくれたの? それとも、やっとSランク冒険者になる気になった?」
そこに居たのはエナンの街に居た犬獣人の受付嬢、マリーナさんだ。半年程前、栄転で王都の中央支部にやってきた。
何でもエナンの街で俺の担当をしていたから、評価がとても上がり王都に栄転したとか何とか。
「こんにちはマリーナさん。今日の要件は後者ですね」
「そうよね。いくら言ってもリョーマさんはSランクになってくれないわよね・・・え? 今何て?」
「Sランク冒険者になります。グランドマスターに会わせて頂けますか?」
Sランク冒険者になれば、様々な特典を受けられる。個人の判断でダンジョン閉鎖等も可能だ。本当は目立ちたくないのでなる気はなかったけど、状況が状況だから仕方ない。この先、狂暴化した魔物を相手にするのに肩書は有った方がいいだろう。
ちなみにグランドマスターとはデグモの国にある冒険者ギルドで一番偉い人だ。各地にあるギルド支部の支部長のまとめ役でもある。
「え、ええ、もちろんよ! リョーマさんは実績だけなら1年以上前にSランクだからね。
さあ、ついてきて頂戴! っと、そっちの子は?」
「こいつはジョージ。俺の付き人です。一緒に行っていいですか?」
「オーケー、大丈夫よ。さあ、付いて来て」
俺は付き人かよ。とか言ってるジョージを引っ張りながら、3階に案内される。
マリーナさんがグランドマスターの部屋の前に居た秘書の人に話をすると、秘書の人は部屋に入っていった。
「じゃあ、リョーマさんは呼ばれるまでここで待っててね。私は受付に戻ってるから。後で結果を教えてね」
「あ、マリーナさん。もう少ししたら神官長のゼムスさんがいらっしゃいます。
一緒に来たメンバーも含めて、全員ここに呼んでもらっていいですか?」
「え? 神官長!? わ、分かったわ。すぐにお通しするわ!」
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「おう、リョーマ入れ!」
しばらく待っていると部屋の中から俺を呼ぶ声が聞こえた。
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