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第3章 王都騒乱編

第9話 Sランク冒険者

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「おう、リョーマ入れ!」

 その言葉と共に、部屋のドアが開く。秘書の人が開けてくれたみたいだ。

「失礼します」

 部屋に入ると、書類が山積みにされた執務机の向こうに50歳前後のおじさんが座っている。髪は全体的に白くなっているが、口髭を生やしたダンディなおじさん───冒険者ギルドのグランドマスターだ。

 冒険者ギルドの中での叩き上げであり、元冒険者と言う訳ではないそうだ。しかし、その気迫は上位冒険者のソレである。冒険者に舐められたら終わりだと、自らも鍛えているらしい。

 この1年で何度か会った事があるので、初対面ではないが、それは俺だけだ。

「そっちのガキは?」

「あ、すみません。僕の学友で付き人のジョージです。今回訳ありでご一緒させて頂きたく・・・」

「じょ、ジョージ・ワトソンです。よろしくお願いします」

 さすがのジョージもこの国の冒険者ギルドで一番偉い人の前では緊張するらしい。

「ここはガキの遊び場ではないんだが・・・リョーマが必要と判断したのなら何か理由があるんだろう。
 俺はトミーだ。このギルドの長をしている。ワトソンと言えばあれだな、最近美味しいお菓子の販売を始めた商会の坊ちゃんか」

 急に7歳の子供を連れて来ても文句を言わず・・・あ、少し言ったか。そんなに言わず追い出さないとは寛容な人で助かる。俺がこの1年で信用に足る人物だと評価してもらったのもあるかな。

「さて、早速だがリョーマ。ついにその気になったんだって?」

「はい、兼ねてからお誘い頂いていたSランク冒険者になる件、謹んで受けさせて頂きます」

「ほう。またマリーナの冗談かとも思ったが、どうやら本気のようだな。
 良いだろう。お前は今からSランク冒険者だ」

 軽っ! ノリ軽っ! この国でもここ十年出ていない、国の中にも数人しか居ないSランク冒険者にするのに、その軽さでいいの!? Sランク冒険者が出ると、しばらくギルド内はお祭り騒ぎになるレベルだって聞いてるけど、そんな簡単に決めていいんだろうか? 試験とか要らないの?

「ノリ軽っ!」

 ジョージが同じ感想をもらしてるし。

「まあ、ぶっちゃけるとだな、お前はいつでもSランク冒険者になれるように手続きは全て終わってるんだ」

 え、何その手際の良さ。未来が視える人でもいるの?

「何故? って顔をしているな。だが、自分のしてきた事をよく考えてみろ。
 ほぼ単騎にてゴブリンキングの討伐に始まり、超高品質の薬草類の採取・納入による冒険者致死率の大幅低下、更にこの1年では暫く達成者の居なかった王都北部のダンジョン群を軒並み踏破と来た。
 前半の実績だけでもAランクに収まり切れないと話が出ていたのに、ダンジョン踏破は決定的だったな」

 実はこの1年、学生と言う事もあり、冒険者活動はそこまでしていないが王都の北にあるダンジョンを何個か踏破した。ソロじゃなく、リーナさんや鈴木さんと一緒にだけどね。

 この世界のダンジョンはよく小説とかであるような、ダンジョンコアを壊して、はいお終い。のような感じではなく、最終階の階層主を倒すことでレアなアイテムやダンジョン固有のレアスキル書等が入手できる。それが踏破の証明にもなるのだ。

「お前、たまに休みになると居なくなると思ってたけど、そんな事してたのか・・・」

 あ、ジョージが呆れた目でこちらを見ている。付き人なんだから知ってるテイで頼むよ。

「それでは、ギルド証をお預かりします」

 秘書の人にそう言われ、俺はギルド証を出して渡すと秘書の人は部屋を出て行った。

「さて、リョーマ。ずっと断り続けていたSランク冒険者を急に受けたんだ。たまたま気分でって事もないだろう?
 説明してくれるか?」

 さすがグランドマスターだ。わざわざ1から説明しなくても分かってくれるのはありがたい。

「はい。その通りです。説明させて頂きたいと思いますが、役者が揃うまでもうしばらく・・・来たようですね」

───トントントントン

 俺がそこまで言うと、ドアがノックされる。

「誰だ?」

「マリーナです。グランドマスターすみません。お客様をお連れしました」

「今日は誰とも約束はしてないはずだがな・・・。リョーマの関係者か」

 グランドマスターはそう言いながら俺をみる。

「はい、入れて頂いて構いませんか?」

「おう、入ってもらえ!」

 その言葉と共にドアが開き、リーナさん、ゼムスさん、鈴木さんの3人が入ってきた。それと同時にマリーナさんは静かにフェードアウトして行く。うん、ギルドの受付嬢にこのメンバーは荷が重いよね。

「もう、リョーマ。早過ぎよ。私も飛んで行けば良かったわ」

 入るなりリーナさんに怒られた。うん、ごめんなさい。先にSランク昇格の話をしたかったんだ。

「トミー殿、お久しぶりじゃな。先月の神殿の祭典以来かの?」

「こ、これはリーナ様に神官長殿、それとリョーマのパーティメンバーのスズキ殿だったか?」

 鈴木さんまで覚えてるなんて、人の上に立つ人はやっぱり違うな。

「さて、丁度リョーマから説明してもらおうと思っていた所ですが・・・只事ではない感じですな」

「はい、僕から説明させて頂いてよろしいですか?」

 そう言いながらゼムスさんとリーナさんを見ると頷いてくれた。

「では、まず今朝の話ですがダイダの街の近くで変異した魔物と遭遇しました。
 見た目はキラーアントでしたが、体長は約2倍で強さも桁違いでした」

「ダイダの街・・・ここから馬車で1日かかるはずだが、数時間でここまで? ・・・リョーマに限っては今更か」

 久々にさり気無くディスられた気がする!?

「変異した魔物とは確かに珍しいが、それだけで王女や神官長が雁首揃えてここに来ることはないだろう。
 原因に心当たりがあるという事かな?」

 うん、やっぱりさすがだね。1を聞いて10を知る。

「その通りです。まだ可能性の話も含まれていますが、聞いてもらえますか?」

「ああ、話してくれ」

 俺は勇者召喚が行われたと思われる事、勇者召喚が行われた際、魔物が狂暴化すると伝わっている事などを説明する。

「なるほどな、確かに話の辻褄は合うな。後は検証か」

〈リョーマ! やっぱりダンジョンの魔物が軒並み変異してるの! ミルクは【鑑定】を持ってないからレベルは分からないけど、魔物が一回り大きくなってるの!〉

 タイムリーな連絡ありがとうございます。

「たった今連絡がありました。どうやら、ダンジョンの魔物は変異しているようです。
 早速ですみませんが、Sランク冒険者の権限でダンジョンの封鎖を要請します」

 そこからのグランドマスターの動きは早かった。すぐにギルド員に指示を飛ばし、ダンジョンの閉鎖に動く。

 それと同時に王都周辺の魔物の調査依頼も発行された。これは神殿からの依頼と言う事でゼムスさんが依頼者になるそうだ。

 そして俺たちもそれぞれ動こうと思ったところで、またミルクから【念話】が届いた。

〈リョーマ! ちょっとピンチなの!〉

 え? ミルクとガルムがピンチになる状況って何!?
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