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第1章 幼少期編

第18話 出発

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 あっと言う間に3日経ち、神殿の依頼の日が来た。

 因みに、この3日間はギルドで遺跡について調べたり、リーナ師匠が我が家に訪ねてきて、そのまま居座り修行が始まったり、まあ色々あった。

 お陰で普通の攻撃魔法についても、教えを請うことができ、それなりに使えるようになったのは良かったかな。心も体もボロボロだけど・・・。

 それと、元旦の日に2匹目のアースドラゴンが従魔になった。従魔は200匹を超えているが、ドラゴンはまだそんなに多くない。レアな感じでちょっと嬉しい。

 朝起きてリビングに向かうと、寛いでいるリーナ師匠が居た。

「おはようございますリーナ師匠。今日も自分の家のように寛いでいますね」

「あら、おはようリョーマ。ええ、この家は案外居心地良いから、このまま居座っちゃおうかと思ってるわ」

 いえ、勘弁して下さい。俺の身が持ちません・・・。リーナ師匠の教え方は体育会系で、意外としんどかったんだ。そして皮肉は通じなかった。ぶぶ漬け出そうか。あれ、でもぶぶ漬けイコール帰れってのは落語の話で本当ではないんだっけ?

「気に入って頂いて嬉しいですが、リーナ師匠は半月ほどしたら新学期じゃないですか? いつまでもこの街にいちゃダメですよ。王都に帰って下さい」

「うーん、まあそうね。私も本業は学生だからね。考えておくわ」

 考える余地はどこにも有りません。帰って下さい。でも、帰る前に【魔法創造】が取得できたら良いんだけど。

 今までのスキルと違い、リーナ師匠に話を聞きながら色々と試してはいるけど、まだスキルを取得出来ていない。さすがにレジェンドランクのスキルは半端ないって事かな。

「この前のギルドの報酬で小金持ちなんだから、暫くは私を養って頂戴。私はココでぐーたら生活を送るわ」

 そう、先日の薬草採取とゴブリンジェネラルの発見・討伐で、結構な額の報酬を貰った。

 薬草は品質が非常に高く、根まで完璧に採れていた事から、作られるポーションの品質も高くなり、買取価格・販売価格も比例して高くなる。

 あの薬草の山を見た買取担当者は、嬉しさの余り小躍りしていたらしい。

 また、ゴブリンについてもスタンピードに繋がりかねない重大な案件との事で、評価が高く報奨金もたんまり頂いた。ゴブリンがジェネラルまで進化するのはよっぽどの事らしい。

 そんなこんなで、ギルドランクは登録初日に2ランク上がりDとなった。それに味を占めて、次の日も同じように薬草採取に行こうと思ったが、リーナ師匠がやってきて地獄のしごきが始まった為に、まだ行けていない。

 ただ今日は依頼に出かけるので、師匠から解放される。ひゃっほー!

「リョーマ今日は神殿の依頼に行くのよね? 昨日出した課題は移動中でも出来ると思うから、しっかりやっておくのよ?」

 くっ! 鬼師匠からは逃げられないのかっ。

「冗談よ。依頼中は何が起きるか分からないから、常に万全の態勢を整えるようにするの。修行なんてやってる場合じゃないわ。先輩冒険者からのアドバイスね」

 良かった。この人どこまでが本気か分からないんだよね。

「おはよう、リョーマ。巫女様が馬車でレミちゃんをここまで連れて来るって話だったから、しっかり準備して待っているのよ」

 リーナ師匠とバカ話? をしていると、母がやってきた。母はリーナ師匠が魔法を教えてくれる事になった事を知ると、驚きつつもあの方なら問題ないわと言って家に居座る事を快諾していた。

 もちろん、VIP待遇である。これは母もリーナ師匠の正体を知っていると見るべきだな。まあ、俺からその件に触れる気はないけど。

 そんな感じで準備をしつつ、暫く待っているとメイドの一人が呼びに来た。

「リョーマ坊ちゃん、シーラ様とお連れの方がいらっしゃいました。玄関前でお待ちです」

「ありがとう。直ぐに向かいます」

 入念に準備したから大丈夫だとは思うけど、初めての護衛依頼だし、緊張するなあ。そう思いながらも、玄関に向かう。

「おはようございます。シーラ様、レミ。お待たせしました」

「リョーマ君、おはようございます。今日は良い天気で、護衛日和ですよ」

 護衛日和って初めて聞いたな。でも、確かに良い天気だ。家の裏からは森の奥に壮大な山脈が見えているし、街の向こうに見える湖も太陽の光を受けて輝いている。

「おはようリョーマ。あっ! サーシャ様もおはようございます! 今日はお子様をお借りします!」

 どうやら、母も付いて来ていたみたいで、早速レミが反応している。

「日帰りしようと思うと、時間も無いので直ぐに出発しようと思いますが、レミの準備は大丈夫ですか?」

「私は大丈夫。装備と食料、日帰りするって話だったけど、もしもの時に備えてお泊りグッズも持ってきたのよ」

「それでは、必要最小限の物だけカバンに入れて、持っていて下さい。残りは僕の【収納】に入れておきます」

 そうして、レミから荷物を受け取ると、玄関前でシーラ様、母に加えてリーナ師匠も見送りをしてくれた。

「行って参ります。可能なら日帰り、遅くても明日には戻りますので、よろしくお願いします」

「行ってらっしゃいリョーマ。初めての依頼頑張ってね?」

「リョーマ君、貴方の事なので心配はしていませんが、レミをよろしくお願いしますね」

 こうして、俺とレミは森に向かって出発した。

 遺跡は3日前に薬草採取した方角にあり、あそこから更に進んだ所にあるらしい。先日のゴブリンの件があるのでちょっと心配だ。ギルドもまだ調査団の募集をしている段階であり、対処は出来ていないらしい。

 もしもゴブリンの集団に出会でくわしたとして、レミを護りながらどこまで対処できるか分からない。大丈夫だとは思うけど、この世に絶対なんてないからね。

「ちょっと待ちなさいリョーマ」

「あれ? 師匠どうしたんですか?」

 いざ森へ! と足を踏み入れようとした所で、リーナ師匠に止められた。

「神託の内容は、遺跡での護衛は年齢半分以下の異性との事だけど、遺跡までの道程は特に指定されていないでしょ? 楽しそうだし、私も付いていくわ」

「ホントですか!? 助かります。遺跡は先日ゴブリンジェネラルと出会った場所の方角なので、少し心配だったんです」

 リーナ師匠が同行を申し出てくれた。

「師匠は飛んで付いてきたらいいから、楽ですね」

「いや、あの魔法は消費が激しいから、何があるか分からない森の中では、魔力を節約する為に止めておくわ。貴方の『浮遊』で全員運んで頂戴?」

 また無茶な事を・・・。と思ったけど、そう言えば他人に『浮遊』をかけた事はなかったかな。因みに『浮遊』魔法については、しごきの中で白状させられた。ハッタリだったとバレて怒られた。浮くだけの魔法ですみません。

「先入観で自分にしか使えないかと思っていましたが、そう言われると他の人にも使えそうな気もしますね」

 そう言いつつ師匠に『浮遊』をかけてみる。どうやら触れないと使えない様なので、その旨を説明して肩に触れて発動する。

「やったわ! いけるじゃない!」

「成功したみたいですね。レミも浮かせるから、ちょっとこっちに」

 これ、もしかしたら攻撃手段としても使えるんじゃないかな? 触らないと発動しない欠点はあるけど、触れて浮かせてしまえば、相手は自力で移動が出来なくなる。地上と違って踏ん張りも利かないし、飛び道具や魔法がないと何も出来なくなりそうだ。

「わわっ! ホントに浮いた! リョーマ凄いよ」

 レミ大喜びだ。尻尾がピンと立っている。確か猫は嬉しいと尻尾がピンと立つんだよね? 犬派だったからうろ覚えだ。そうそう、みんな忘れかけてるかも知れないけど、レミは猫耳獣人だ。

「それじゃあ、行きましょうか。他人を動かすのは初めてなので、少しづつ行きます」

 そう言いつつ、まずはリーナ師匠に『送風』をかける。

 ・・・加減はしたんだけど、魔力を込めすぎたのかバランスを崩して、浮いたまま上下にクルクル回った。逆に奇跡的なバランス!?

「わっ! 何? 何? 目が回るわ!」

 今日はズボンを履いているので、パンツは見えない。残念! あ、いや残念ではないよ? これでも健全な男の子だから、興味がないって言うと嘘になるって言うか・・・。俺は誰に言い訳してるんだ。

「すみません! 直ぐ止めます」

 この後、他人を上手く移動させる事が出来るようになるのに10分程かかり、やっと森へと足を踏み入れたのだった。ん? 浮いてるから、踏み入れたって表現はどうなんだろう?
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