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第1章 幼少期編

従話 ポチの右腕(1)

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 拙者の名はアドラン。ポチ殿の忠実な僕にして、まだ見ぬ真の主人、リョーマ殿に生涯の忠誠を誓うアースドラゴンでござる。

 拙者はダンジョン内で迷子になり、餓死の危機に瀕していた時にポチ殿に助けられて、九死に一生を得た。そして、その強さと優しさに惹かれて配下に加えて頂いたのでござる。

 真の主人リョーマ殿の従魔になる契約をした途端、未だかつて無いほどの力が湧き上がってきた。この方々に付いて行けば間違いない。そう確信した瞬間でもあったでござる。

 それから、拙者とポチ殿はダンジョンを脱出するべく動き出したでござる。

 聞くも涙、語るも涙の5年間を過ごしたでござるが、最初の事件は配下となったその日だったでござる。

 ポチ殿の生まれたと言う部屋に戻ると、ポチ殿の母上が血を流して倒れていた。命に別状は無さそうなものの、かなりの大怪我で暫くは動けそうにない程でござった。

 リョーマ殿と従魔契約ができたら、回復力も強化されて直ぐに治るのではないかと提案したのでござるが、血族で上位の者は配下にできない事が判明した。ポチ殿の母上と従魔契約するには、リョーマ殿が直接契約するしかないようなのでござる。

 そこで拙者はこの部屋に護衛として残り、ポチ殿は治癒の得意な魔物を探して配下にすべく旅立ったのでござる。

 数日して、ポチ殿が連れて来たのは何と精霊でござった。聞くと【治癒魔法】の使える精霊を見つけて配下にしたとの事。ポチ殿の強運には目を見張るものがあるでござる。

 そして、ポチ殿の母上は無事に治療し、ポチ殿と新たな仲間の精霊と拙者はダンジョンを抜けるべく旅立った。母上殿は何故かこの階層から出る事は出来ないらしく、我が子の旅立ちを祝福し、送り出してくれた。

 それから5年経ち、ポチ殿の配下は今や200匹を超えた。拙者の同僚であるポチ殿直属の配下は、拙者を含めて4匹。拙者は勝手にポチ四天王と呼んでいるでござる。

 まずは拙者、アースドラゴンのアドラン。2匹目が水の精霊のジン。あ、名前に付いてのツッコミはポチ殿にかたく禁じられているでござる。あと3匹目、4匹目についてはまた紹介するでござる。

 拙者達は真の主であるリョーマ殿を探すべく、まずはダンジョンの出口を目指した。しかし、どこから行っても、ポチ殿と出会った場所に有ったような深淵に辿り着き、そこから先に進む事が出来なかったのでござる。

 そこで、ポチ殿と四天王のみんなで相談してダンジョンを下に進む事にした。ダンジョンがどの様なものなのか正直誰にもわからない。だから、みんなで試行錯誤しながらここまで進んで来たでござる。

 毎日四天王の誰かがポチ殿と行動を共にしていて、今日は拙者の番でござる。

 拙者はリトルアースドラゴンからアースドラゴンへ、そしてエンシェントアースドラゴンへと進化している。本来の全長は20mを超え、立派なドラゴンに成長出来たでござる。

 これもひとえに、ポチ殿とリョーマ殿のお陰と感謝しているでござる。

 ただ、ダンジョン内で20mを超える巨体だと、行動がかなり制限される。そこで拙者は【小型化】のスキルを使用して、ポチ殿と出会った頃のリトルアースドラゴンの姿になっている。ポチ殿にも同様に進化したけど【小型化】スキルで小さいモフモフでござる。癒されるでござる。

 また、【小型化】スキルを使用してもステータス等はそのままである為、戦闘に支障はない。それなので拙者達は専ら【小型化】の状態で過ごしているでござる。

 話が少し逸れたでござるが、今日は拙者がポチ殿と行動できる日なのでござる。基本的に当番の日以外はそれぞれダンジョン内で自由にすごしている。ポチ殿のはからいで、休息は十分に取ることとなっているでござる。

〈アド、シルクだよ。ちょいと良いかな?〉

 ポチ殿とダンジョンを進んでいると、配下の一人から【念話】連絡が来た。シルクは妖精で、もう4年くらいの付き合いになる。

 折角のポチ殿との二人っきりの時間を・・・、大丈夫じゃないでござる。と返したいところではあるけど、上に立つものそれではダメだと、ポチ殿にも良く言われるのでござる。

〈どうしたでござるか?〉

〈あたし達のパーティーで2階層上の未踏地区を捜索していたら、コミュニケーション可能な魔物がいたんだ。優秀そうだから少し話をしたら、仲間になってくれそうだけど、ちょっとアドもみて確認してくれないかな?〉

 拙者達が仲間を増やす方法として、コミュニケーションが取れそうな魔物とは、いきなり戦うことを極力避けて、話をする事にしている。そして可能ならリョーマ殿と従魔契約して貰うのでござる。

 本当はポチ殿から離れたくは無いけど、結果的にポチ殿の為になる話でござるし、配下の子達が折角動いてくれているので、行かないわけにはいかないでござる・・・。

〈分かった、すぐ行くでござる〉

「殿! 拙者の部下から【念話】連絡があり、優秀な魔物を見つけたので拙者に従魔選定をして欲しいとの事でござる。少し席を外させて頂くでござる」

 そう言うと、拙者は【土移動】のスキルを発動する。このスキルは一瞬で足元の土に潜り、そのまま高速で移動できる。昔のように自力で掘り進む必要もなく、かなりのスピードで移動が可能でござる。

 行き先は何となく距離と方向が意識出来ていて、同じ階層内であれば数十秒で移動可能である。

 今回はこの階層の入口まで【土移動】して、そこから魔法陣で上の階層に移動する。次の階層でも、入口まで【土移動】して、また魔法陣で移動。ここまで約1分でござる。他の四天王もそれぞれ高速で移動出来る術は持っているので、日替りのお供が可能なのでござる。

〈言われた階層に着いたでござる。もう一度【念話】してくれたら、その思念を辿って【土移動】するでござる〉

〈オーケー、アド。ここにお願い〉

 拙者はシルクからの念話を辿って【土移動】をする。そんなに遠くなかったようで、10秒程で到着した。拙者は土から出る。

「お、アド。待ってたよ」

 そう言って出迎えてくれたのは、先程から【念話】で連絡をくれていたシルクでござる。

 シルクはパーティーメンバーのオーガの肩に座っている。シルクは3人パーティーであり、オーガの他にもう一人妖精がいる。もう一人の妖精の名前はミルクでござる。後、オーガの名前は鬼ちゃん。まで含めて名前だそうでござる。流石・・・、いや何も言うまい。

 そしてこの3人の向かいに居る魔物を見る。

 ・・・拙者にソックリでごさる。強いて違いを挙げるとしてら、拙者より色が少し薄いくらいなのでござる。

「はじめまして、あなたがアドランね? この子達から少し話を聞いているわ」

 ソックリだけど、メスでござる!?

「どう? 驚いた? アドそっくりでしょ?」

 シルクがしてやったりな顔をして拙者を見る。

「そっくりなのー。アドっちが二人なのー」

 この"なのなの"言っているのがミルクである。妖精ペアは何かノリが軽い。そして鬼ちゃんは寡黙で、滅多に喋らないでござる。

〈扉を発見したので、ちょっと階層主を倒してくるのだ〉

 そこで、急にポチ殿から【念話】が届いた。拙者が居ない間に階層主の元に辿り着いてしまったようでござる。

〈殿! 一人は危いでござる! 暫しお待ちを・・・〉

 途中で【念話】が切れた感覚があったので、ポチ殿は拙者の言葉を聞く前に、階層主の部屋に入ってしまったでござる。あの中は亜空間になっていて、外界とは連絡が取れないのでござる。

「来て早々、大変申し訳ないでござるが、殿が一人で階層主の部屋に入ってしまったみたいでござる。拙者、入口で待機するので一度向こうに戻るでござる。詳しい話はまた後程、その間、シルクお相手を宜しく頼むでござる」

「オーケー。ボスは相変わらず無鉄砲だね。この場は繋いでおくから行ってらっしゃい」

 そして急いで階層主のトビラの前まで移動する。通常なら5分程度で階層主を倒して出てくるはずでござる。出てきたら一人で入った事に文句を言うでござる。

 しかし、ポチ殿はほぼ丸1日出て来なかった。

 四天王も全員集まって大騒ぎだったでござる。最終的には無事に出できたのであるが、ポチ殿直属の配下が増えていたでござる。

 拙者の四天王計画がっ!
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