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第1章 幼少期編
第9話 新年と依頼
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昨日はアクシデントがありつつ、何とかはじめてのお使いを達成した。そして今日は、こちらの世界で年が初まる日、日本で言う正月である。
この世界でも1日は24時間で、1年間は365日であった。多分、昔転生か転移で地球から来た人が広めたんだと思う。
俺の誕生日は12月25日だ。前世でトラックにはねられたのも年末だったから、元の世界と暦はリンクしてるのかも知れないし、たまたまかも知れない。ここは四季がある訳でもないし、これも地球から来た人が同じ感覚で、何となく始めた可能性もある。
また、こちらの世界ではクリスマスや新年を盛大に祝う風習はない。新年の挨拶をする程度である。クリスマスプレゼントとお年玉の風習は広めておいて欲しかったな。残念。まあ、転生・転移者が現代日本人とは限らないから、仕方ないか。
そんなこんなで今日は正月だ。特に特別なイベントはないけどね。
「明けましておめでとう、リョーマ。昨日はお疲れ様」
「明けましておめでとうございます、お母様。お父様も明けましておめでとうございます」
リビングに入ると俺はそう言いながら、両親の向かいのソファに座る。母親の腕の中には、生後半年程の赤ん坊がいる。俺の妹である。ちょーかわいい。
「うむ。リョーマ明けましておめでとう。昨日はちょっとトラブルはあったみたいだが、無事にお使いが出来たようで何よりだ。
そして巫女候補の危機も救ったと聞いている。良くやったな」
「いえ、巫女候補の方を助けたのは、たまたま通りかかったからですよ。襲われていたのが誰であれ助けていたと思います。そしてボクにはたまたま助けるだけの力があった。それだけです」
「ふむ。そうか、しかしその力が有っても、行動に移せる者は少ない。私はお前を誇らしく思うぞ」
「あ、ありがとうございます。お父様」
何かそんなに褒められると、くすぐったいな。半分はテンプレイベントを楽しんでいたので、申し訳ない。でもお使いは好印象のようで、何よりだ。一人で外出は認めて貰えるかな?
「さて、リョーマ。無事にお使いが出来たら、一人で外出しても良い、と言う約束だが私は問題ないと思う」
「私も異論ありません。リョーマなら大丈夫でしょう」
「あ、ありがとうございます。お父様、お母様」
良かった。一人で外出の許可が貰えたら、人里離れた場所で魔法の訓練が出来そうだ。【生活魔法】でアレだからな・・・。事前に訓練するにこした事はないはずだ。
「ただ、一人で外出を許可する前に、リョーマに一つ話がある」
「はい、なんでしょうか、お父様」
ここで更に条件があるのか。何だろう?
「うむ、実は神殿からお前に依頼があるのだ」
「依頼・・・、ですか?」
神殿から5歳児に依頼する事なんてあるんだろうか?
「まあ、まずはお客様を待たせているので、応接室に行こうか」
父はそう言うと、立ち上がりリビングを出ていく。俺も慌てて追いかけた。
☆
応接室に入ると、見覚えのあるフードをかぶった人が待っていた。
「シーラ様ですね? 明けましておめでとうございます」
「明けましておめでとうございます、リョーマさん。相変わらず神々しいですね。また祈りを捧げたくなります。新年ですし、一祈祷いっときますか?」
祈祷って、生まれた数日後のやつの事だよね? アレはもうゴメン被りたい。母がノリノリになって見てて恥ずかしいんだ。後、一祈祷いっとくって、一狩り行っとく? みたいなノリはやめて欲しいよ。
「いえ、今回はご遠慮させて頂きます。また後日、改めて神殿に伺わせて頂きますね。
それより、神殿から僕に依頼がある、との事でしたが・・・」
「あら、残念です。今度またお祈りさせて下さいね?」
あ、後日の話は社交辞令ですからね。この人、分かってるかな? どちらかと言えば、分かった上でゴリ押しして来そうか。
「それで、依頼のお話ですね。実は昨日助けて頂いた、レミについてです」
あの10歳くらいの女の子か。レミがどうしたのだろう?
「ご存知の通り、神殿では【神託】スキルを持つ者を、巫女候補として集めています。レミもその一人で、私の神殿が育成を任せられました」
「なるほど、そうなんですね」
すみません、ご存知ではありませんでした。だけど俺は、さも知っていたかのように話の続きを促す。
「【神託】スキルを持つ者には、10年に一度、特殊な神託が下ります。【神託】スキルのレベルを上げる為の試練を授かる神託です。
そして先日、10歳になったレミにも、その神託が下りました」
話の流れから考えると、その神託が俺に関係してるのか、俺しかできない事なのか・・・。
「神託の内容とは、この屋敷の裏手の森、その中にある遺跡に行き、奥にある祭壇に祈りを捧げる事、です」
あれ? それじゃあ、俺関係なくない?
「ふふっ、貴方には関係ない神託だと思われたでしょう?」
【ポーカーフェイス】さん、仕事して! いや、顔に出ていた訳ではなく、俺の心情を予想しただけかな。
「実はこの神託には続きがあります。条件として、お供できるのは年齢が半分以下の異性一人のみ。との事なのです」
うん。何となく俺を狙い撃ちしたような神託ですね。その遺跡にどんな危険があるのか分からないけど、付いて行ける5歳なんて中々いないよね。
「お察しの通り、遺跡に同行出来る5歳以下の子なんて、リョーマさんくらいしか心当たりがありません。幸いにもレミも貴方の実力を知って、乗り気になっています」
幸いにも、って強調してたけど・・・、あっ、まさか昨日のチンピラはサクラか!
レミに俺を見せる為に、シーラ様が用意したんじゃ・・・。
色々と違和感あったからなぁ。
「なるほど、昨日僕がたまたまレミさんを助けたから、レミさんも俺の事を認めてくれたのですね?」
今度は、俺がたまたまを強調して返す。
「ええ、やはり察しが良いですね。その通りです。
実は貴方の通りそうな道を【予知】スキルで予測して、そこに弟のソラ君を使って誘導して・・・、結構大変でした」
あ、ぶっちゃけちゃうんだ。でも、色々と納得だ。尾行してたはずの母が、全て終わるまで出てこないとか、ちょっと不思議だったんだよね。
「あ、でも、ギルドの入口で絡まれたのは、私達関係ないですよ? 結果的には、支部長に貴方の実力を見てもらう良い余興になりましたけどね」
うーん。シーラ様ってぽややんとして見えるけど、若干黒いんじゃなかろうか?
まあ、そうでもないと、神殿の偉い人なんてやってられないのか。
「さて、それで改めて神殿からの依頼ですが、神託の試練を行うレミの護衛です。
貴方は将来、冒険者になりたいとの事ですので、冒険者登録をして頂き、神殿からの依頼という事にして、実績作りも兼ねて頂こうと思っています」
なるほど、俺にもメリットがあるから、やって欲しいって事かな? そもそも神託で、俺を狙い撃ちにしているって事は、何かある可能性も高いだろうし、行かない選択肢は無いんだよな。
「もちろん、ご両親も承諾してくれています」
「ああ、リョーマ。神託の試練に参加するなんて、とても名誉な事だ。父さんは応援するぞ」
「私としては、リョーマに危険な事をして欲しくは無いけど、レミちゃんを守るナイトが他に居ないのも事実なのよね」
外堀も埋めてあるから、安心して依頼を受けてくれって事ですね。
そもそもシーラ様は、父からしたら上司だし、母からしたら育ての親だ。断るはずがなかった。まあ、俺も断る理由も特に無いから良いけど。
「その依頼、受けさせて頂きます」
「それは良かったです!
そういう事なら、早速これから冒険者ギルドに行って、まずは冒険者登録をしましょうか」
斯くして俺は新年早々、冒険者ギルドにドナドナされるのであった。荷馬車ではなく、シーラ様の馬車に乗って。
この世界でも1日は24時間で、1年間は365日であった。多分、昔転生か転移で地球から来た人が広めたんだと思う。
俺の誕生日は12月25日だ。前世でトラックにはねられたのも年末だったから、元の世界と暦はリンクしてるのかも知れないし、たまたまかも知れない。ここは四季がある訳でもないし、これも地球から来た人が同じ感覚で、何となく始めた可能性もある。
また、こちらの世界ではクリスマスや新年を盛大に祝う風習はない。新年の挨拶をする程度である。クリスマスプレゼントとお年玉の風習は広めておいて欲しかったな。残念。まあ、転生・転移者が現代日本人とは限らないから、仕方ないか。
そんなこんなで今日は正月だ。特に特別なイベントはないけどね。
「明けましておめでとう、リョーマ。昨日はお疲れ様」
「明けましておめでとうございます、お母様。お父様も明けましておめでとうございます」
リビングに入ると俺はそう言いながら、両親の向かいのソファに座る。母親の腕の中には、生後半年程の赤ん坊がいる。俺の妹である。ちょーかわいい。
「うむ。リョーマ明けましておめでとう。昨日はちょっとトラブルはあったみたいだが、無事にお使いが出来たようで何よりだ。
そして巫女候補の危機も救ったと聞いている。良くやったな」
「いえ、巫女候補の方を助けたのは、たまたま通りかかったからですよ。襲われていたのが誰であれ助けていたと思います。そしてボクにはたまたま助けるだけの力があった。それだけです」
「ふむ。そうか、しかしその力が有っても、行動に移せる者は少ない。私はお前を誇らしく思うぞ」
「あ、ありがとうございます。お父様」
何かそんなに褒められると、くすぐったいな。半分はテンプレイベントを楽しんでいたので、申し訳ない。でもお使いは好印象のようで、何よりだ。一人で外出は認めて貰えるかな?
「さて、リョーマ。無事にお使いが出来たら、一人で外出しても良い、と言う約束だが私は問題ないと思う」
「私も異論ありません。リョーマなら大丈夫でしょう」
「あ、ありがとうございます。お父様、お母様」
良かった。一人で外出の許可が貰えたら、人里離れた場所で魔法の訓練が出来そうだ。【生活魔法】でアレだからな・・・。事前に訓練するにこした事はないはずだ。
「ただ、一人で外出を許可する前に、リョーマに一つ話がある」
「はい、なんでしょうか、お父様」
ここで更に条件があるのか。何だろう?
「うむ、実は神殿からお前に依頼があるのだ」
「依頼・・・、ですか?」
神殿から5歳児に依頼する事なんてあるんだろうか?
「まあ、まずはお客様を待たせているので、応接室に行こうか」
父はそう言うと、立ち上がりリビングを出ていく。俺も慌てて追いかけた。
☆
応接室に入ると、見覚えのあるフードをかぶった人が待っていた。
「シーラ様ですね? 明けましておめでとうございます」
「明けましておめでとうございます、リョーマさん。相変わらず神々しいですね。また祈りを捧げたくなります。新年ですし、一祈祷いっときますか?」
祈祷って、生まれた数日後のやつの事だよね? アレはもうゴメン被りたい。母がノリノリになって見てて恥ずかしいんだ。後、一祈祷いっとくって、一狩り行っとく? みたいなノリはやめて欲しいよ。
「いえ、今回はご遠慮させて頂きます。また後日、改めて神殿に伺わせて頂きますね。
それより、神殿から僕に依頼がある、との事でしたが・・・」
「あら、残念です。今度またお祈りさせて下さいね?」
あ、後日の話は社交辞令ですからね。この人、分かってるかな? どちらかと言えば、分かった上でゴリ押しして来そうか。
「それで、依頼のお話ですね。実は昨日助けて頂いた、レミについてです」
あの10歳くらいの女の子か。レミがどうしたのだろう?
「ご存知の通り、神殿では【神託】スキルを持つ者を、巫女候補として集めています。レミもその一人で、私の神殿が育成を任せられました」
「なるほど、そうなんですね」
すみません、ご存知ではありませんでした。だけど俺は、さも知っていたかのように話の続きを促す。
「【神託】スキルを持つ者には、10年に一度、特殊な神託が下ります。【神託】スキルのレベルを上げる為の試練を授かる神託です。
そして先日、10歳になったレミにも、その神託が下りました」
話の流れから考えると、その神託が俺に関係してるのか、俺しかできない事なのか・・・。
「神託の内容とは、この屋敷の裏手の森、その中にある遺跡に行き、奥にある祭壇に祈りを捧げる事、です」
あれ? それじゃあ、俺関係なくない?
「ふふっ、貴方には関係ない神託だと思われたでしょう?」
【ポーカーフェイス】さん、仕事して! いや、顔に出ていた訳ではなく、俺の心情を予想しただけかな。
「実はこの神託には続きがあります。条件として、お供できるのは年齢が半分以下の異性一人のみ。との事なのです」
うん。何となく俺を狙い撃ちしたような神託ですね。その遺跡にどんな危険があるのか分からないけど、付いて行ける5歳なんて中々いないよね。
「お察しの通り、遺跡に同行出来る5歳以下の子なんて、リョーマさんくらいしか心当たりがありません。幸いにもレミも貴方の実力を知って、乗り気になっています」
幸いにも、って強調してたけど・・・、あっ、まさか昨日のチンピラはサクラか!
レミに俺を見せる為に、シーラ様が用意したんじゃ・・・。
色々と違和感あったからなぁ。
「なるほど、昨日僕がたまたまレミさんを助けたから、レミさんも俺の事を認めてくれたのですね?」
今度は、俺がたまたまを強調して返す。
「ええ、やはり察しが良いですね。その通りです。
実は貴方の通りそうな道を【予知】スキルで予測して、そこに弟のソラ君を使って誘導して・・・、結構大変でした」
あ、ぶっちゃけちゃうんだ。でも、色々と納得だ。尾行してたはずの母が、全て終わるまで出てこないとか、ちょっと不思議だったんだよね。
「あ、でも、ギルドの入口で絡まれたのは、私達関係ないですよ? 結果的には、支部長に貴方の実力を見てもらう良い余興になりましたけどね」
うーん。シーラ様ってぽややんとして見えるけど、若干黒いんじゃなかろうか?
まあ、そうでもないと、神殿の偉い人なんてやってられないのか。
「さて、それで改めて神殿からの依頼ですが、神託の試練を行うレミの護衛です。
貴方は将来、冒険者になりたいとの事ですので、冒険者登録をして頂き、神殿からの依頼という事にして、実績作りも兼ねて頂こうと思っています」
なるほど、俺にもメリットがあるから、やって欲しいって事かな? そもそも神託で、俺を狙い撃ちにしているって事は、何かある可能性も高いだろうし、行かない選択肢は無いんだよな。
「もちろん、ご両親も承諾してくれています」
「ああ、リョーマ。神託の試練に参加するなんて、とても名誉な事だ。父さんは応援するぞ」
「私としては、リョーマに危険な事をして欲しくは無いけど、レミちゃんを守るナイトが他に居ないのも事実なのよね」
外堀も埋めてあるから、安心して依頼を受けてくれって事ですね。
そもそもシーラ様は、父からしたら上司だし、母からしたら育ての親だ。断るはずがなかった。まあ、俺も断る理由も特に無いから良いけど。
「その依頼、受けさせて頂きます」
「それは良かったです!
そういう事なら、早速これから冒険者ギルドに行って、まずは冒険者登録をしましょうか」
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