うちのポチ知りませんか? 〜異世界転生した愛犬を探して〜

双華

文字の大きさ
上 下
16 / 159
第1章 幼少期編

第10話 冒険者登録

しおりを挟む
 やって来ました冒険者ギルド。昨日ぶり。

 馬車の中では、移動時間で結局祈祷された。巫女様からは逃げられない! 幸いにも定員上限まで人が乗り、多少手狭だった事もあって、母は自重してくれた。

 ギルドに着くと、シーラ様の馬車で入口横付けだ。ちょっと目立って無いですかね?

 シーラ様に聞くと、今後冒険者活動をするにあたり、俺が他の冒険者に舐められないように、箔付けを兼ねているらしい。逆効果にならない事を祈っておこう。

 中に入ると、新年とか関係なく忙しい冒険者の人達で溢れ返っていた。そう言えば、朝起きて直ぐに来たから、朝飯もまだなんだよね。思い出したら、お腹空いて来た。

「おい、何だあの集団」

「ああ、神殿の巫女様に、大神官、それに疾風迅雷のサーシャ様だ。一体何事だ?」

 「いやーん。一緒に居る坊やかわいいわ~(ダミ声」

 ギルド内ではそんなヒソヒソ話が聞こえて来る。シーラ様だけならまだしも、父も母も有名人なんだな。と言うか最後のダミ声の人、間違いなくオネエだ・・・。目を付けられないようにしないと。

「み、巫女様、本日はどんな御用でしょうか?」

 そんな中を進んでいくと、ギルドの職員と思われるお姉さんが出て来た。犬耳の獣人さんだ。

「おはようございます。すみませんが、支部長の所に案内して頂けますか?」

「は、はいっ、只今っ!」

 可哀想に職員のお姉さんは、尻尾が足の間に入ってる。犬がビクついた時のシグナルだった気がする。

 これは相当萎縮してるのかな? まあ、そりゃ急に神殿のナンバー1(巫女)、ナンバー2(大神官)と元だけど伝説の? 神殿騎士が揃ってやって来たら、何事かと心配にもなるよね。

「お姉さん、大丈夫ですよ。今日は僕の用事に付いて来て頂いただけなので、ご心配なさらないで下さい」

「あ、ありがとう坊や。貴方、優しいのね?」

「はいっ! (犬が)大好きですからね!」

「えっ、あっ! そ、そう言うのは後10年くらい経ってからね?」

 あれ? 何か勘違いされた? お姉さん顔が真っ赤だ。

「もうリョーマ、何を遊んでいるの? 行くわよ?」

「あっ! すみません。直ぐにご案内致します。こちらにどうぞ」

 そして俺達は顔を真っ赤にした犬耳獣人のお姉さんに案内されて、支部長の部屋の前に着いた。

 お姉さんは、先に支部長の部屋に入って行く。多分、俺たちが来た事を説明しているのだろう。

 中から、昨日の今日でもう来たのか!? とか聞こえて来たけど、何の話だろう?

 ん? シーラ様がニヤニヤして嬉しそうだ。

「どうぞ、支部長がお待ちですので、お入り下さい」

 犬耳のお姉さんは、そう言うと俺たちを中に入れ、そそくさと去って行った。お疲れ様でした。

「おはようございます。それでシーラ様、本日はどのようなご用件でしょうか?」

 中に入ると、支部長が事務机の前に立ち、出迎えてくれた。ハーフ魔人のこの人でも、シーラ様にはアタマが上がらないんだな。

「あら、お願いしてありましたよね? この子の冒険者登録ですよ」

「やっぱり、そうですよね。てっきり数年は先の事かと思っていましたが、まさか昨日の今日で登録とは・・・」

 あれ、よく考えたら俺、保護者同伴で冒険者登録とか、結構恥ずかしい状況じゃ無い!? 読んでいた小説とかでも、保護者同伴の冒険者登録は聞いた事がないような・・・。

「まあ、実力的にも人格的にも問題は無いし、神殿の巫女様のお墨付きもある。俺の権限で、登録させて頂きますよ。将来有望な若者を、我が支部で登録するのは大歓迎です」

 何でも、将来冒険者として名が売れた時に、どこどこの国のどこどこの支部出身、みたいな紹介がされるそうだ。そうなると、出身の支部は人気が出たりして栄える事もあるとか、ないとか。そう言う意味では俺が将来活躍さえできたら、WIN-WINの関係ってヤツなのかも?

「ありがとうございます。やはり持つべきものは、優秀な支部長の知り合いですね」

「全く、シーラ様も人が悪い。昨日の内に言っておいてくれたら、もっとスムーズに手続きもできたんですがね」

「あら、それでは面白くないでは無いですか? この歳にもなると、こんなサプライズ的な事しか楽しみが無いのですよ」

 うん、やっぱりシーラ様はちょっと黒いよね!

「とりあえず、冒険者登録ですな。暫くお待ちを」

 そう言うと、支部長のアルフさんは部屋を出て行き、数分後に先程の犬耳お姉さんを連れて戻ってきた。

「登録に関しての説明はこの子が対応してくれます。応接室の方に移動して頂く事になりますが、全員で向かわれますか?」

 いや、さすがに登録作業まで保護者同伴は恥ずかしすぎる。

「シーラ様とお父様、お母様はここまでで大丈夫ですよ? 冒険者登録くらい一人で行けます」

「そう言う事なら、お三方はこの部屋でお茶でもいかがですかな? この子を冒険者登録する理由などもお聞かせ頂きたい」

「ええ、そうですね。冒険者登録ができたら、次はリョーマ君に指名依頼を出す必要がありますし、その辺りを詰めましょうか」

 指名依頼とは、特定の冒険者を指名して依頼を出す事で、本来なら今日登録したばかりの初心者にする事ではない。その辺りも含めての話なんだろう。

「では、リョーマさんはこちらへ」

 俺は犬耳のお姉さんに連れられて、応接室に向かうのであった。

 応接室に入ると、ソファに座るように言われ、ソファに座る。お姉さんは机を挟んだ反対側に座った。

 短いスカートで少し背の低いソファに座ってるから、太ももがチラチラ見えて、子供の教育にはよろしくない。実にけしからん。・・・はい【ポーカーフェイス】さんお仕事ですよ。

 くっ! 【ポーカーフェイス】で目線までは隠せない。

「? それでは改めて、登録を担当させてもらう受付嬢のマリーナよ。依頼などでお世話をする事もあると思うので、覚えておいてね?」

 俺がアホな事を考えていたら、自己紹介が始まっていた。

「あ、ボクはリョーマ。リョーマ・グレイブです。見ての通り、5歳ですが特例で冒険者登録させて頂ける事になりました。よろしくお願いします」

「まだ小さいのに、丁寧な言葉も使えて凄いわね。でも、あまり丁寧な言葉を使っていると、周りの冒険者に舐められたりもするから、気をつけてね?」

 なるほど、そう言えばファンタジー物の小説とかでも、丁寧な言葉を使う冒険者なんて、ほぼ居なかったな。

「ご忠告ありがとうございます。でも、さすがに見た目がお子様の僕が、砕けた言葉で話しかけたら、それこそ争いの火種になりかねませんので、暫くは丁寧な言葉でいきたいと思います」

「そうね、それも一理あると思うわ。子供だから、逆に気にしなくても良い気もするけど、そこはリョーマさんの判断な任せるわね。
 さて、じゃあ冒険者について簡単に説明するから、分からない事があれば、都度質問してね?」

 そう言いながら、マリーナさんは冒険者と冒険者ギルドについて説明してくれた。説明された内容を要約すると、次の通りだ。

 まず、冒険者ギルドは大半の国に存在する、国からは独立した組織である。

 基本的に国の要請で戦争などに戦力を供給するような事はない。あくまでも対魔物がメインのようだ。

 ギルドランクはFから始まり、1番上がSの7種類。何と支部長のアルフさんは、元Aランク冒険者だったらしい。あのレベルなら納得かな。

 依頼の種類は採集、討伐、護衛、その他に分かれていて、Fランクだと採集やその他の雑用をこなして実績を積むらしい。

 受けられる依頼はソロなら自分のランクの一つ上までで、パーティを組めばまた話は違うらしい。そして依頼を一定数失敗せずに達成すると、昇格試験を受けて、晴れてランクアップとの事だ。FからE、EからDは試験もなく条件さえ満たしたら昇格らしいけどね。

 大まかには、そんな感じの説明の後、ギルドカードを作成した。カードの色でギルドランクが分かるらしい。ギルドカードは血を垂らすと、名前とレベルが刻まれる。ファンタジー物のお決まり機能だけど、相変わらず謎仕様である。

「はい! これでリョーマさんの冒険者登録は終わりよ。前情報だと、もう少しレベルが高いのかと思っていたけど、そうでもないのね? まあ、その歳では異常な高さだけど」

 そう、俺のギルドカードにも名前の下にレベルが表示された。レベルがバレて、大騒ぎになるんじゃないかと焦ったけど、だけで22と表示されていた。

 人類史上、文献に残っている最高レベルが77なので2桁までしか想定されていなかったようだ。良かった・・・。
しおりを挟む
感想 112

あなたにおすすめの小説

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

処理中です...