#秒恋2 2人の日常を積み重ねて。〜恋のトラウマ、ゆっくりと乗り越えよう〜

ReN

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おまけのお話 剛士と拓真

お見通し

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『やっほーゴウ!待ってたぞ』
「待ってたのかよ」

悠里を送り届け、自宅に帰り着いた剛士は、拓真に電話を繋げていた。
彼の第一声に、思わず笑ってしまう。

『まあね。今日は掛けてくるかなって思ってたんだよ』

察しのいい親友には、自分の行動など、お見通しなのだろう。
けれど、拓真に読まれてしまうのは、何故だか心地よい。
剛士はスマートフォンを耳に当てたまま、ふっと優しい笑みを浮かべる。


拓真がゆっくりと問いかけた。
『で?どうだったの?』
剛士の心を開くような、穏やかで暖かい声音だった。
「うん。楽しかった。でも、俺……すごく悠里を傷つけてたし、甘えてたと思う」

拓真は、驚くでも怒るでもなく、静かに尋ねた。
『うん。……何か、あった?』
その声に誘われるように、剛士は、正直に打ち明けた。


エリカから電話が掛かってきて、それをとってしまったこと。
それを悠里に聞かれたこと。

悠里と話をしたこと。
昔の出来事。そのときの感情。バスケ部のこと。

そして、いまの自分が抱えている気持ちを、整理しきれない思いも含め、全て彼女に告白したこと。


最後まで剛士の声を聞き終わると、拓真が少しだけ驚いた様子を見せた。

『ゴウ、悠里ちゃんに、そこまで話したんだ』
「……うん。俺、悠里に嘘ついたり、誤魔化したりはしたくなかったんだ」

『そっかぁ……いやでもお前、話すの勇気いっただろ』
拓真は感心したように、そっかそっか、と何度か呟いた。

『それで、』
穏やかな声音のまま、拓真が問う。
『悠里ちゃんは、なんて言ったの?』

「『ふふ、泣いてもいいですよ?』って、手ぇ広げられた」
『あっはは何それ!面白すぎでしょ!』

悠里の言い方を真似て答えると、拓真が弾かれたように笑い出した。
拓真の笑い声につられて、剛士も少し笑ってしまう。

『器でっかいなあ、悠里ちゃん。ゴウのこと、全部受けとめてあげる!って感じか』
「……うん。俺、悠里に聞いて貰って、初めて気づけたことがあったし、何か、すげえホッとしたんだ」

『そっかそっか。……良かったな、ゴウ。今日さ。悠里ちゃんに受けとめてほしくて、2人で会いたかったんだろ?』

拓真の言葉に、ハッとする。
「……そうなのかもな」

剛士が応えると、拓真が嬉しそうに、しみじみとした声音で呟いた。
「いいなあ、悠里ちゃん。ホント、悠里ちゃんで良かったって思う」
「なんだそりゃ」
思わず2人で笑った。
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