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piece7 卒業式、前日
熱いシャワー
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家に帰りつくと、悠里はすぐに台所に立ち、自分の役目を果たした。
帰宅した弟と一緒に食べ、先にお風呂に入るよと声を掛ける。
幸い、弟には何も言われなかった。
普段通りの自分を演じることができたかと、悠里は少しホッとする。
このまま湯船に浸かるのは、嫌だった。
いつもよりも熱いシャワーを浴び、髪を、身体を洗った。
何度洗い流しても恐怖の感触は消えなくて、悠里はゴシゴシと身体を擦り続ける。
男子生徒に触られた肩を、腕を、太ももを。
自分が擦り減って、小さくなっていくようだった。
擦った身体が痛くて、胸が痛くて、悠里の目に涙が込み上げる。
それは熱く悠里から零れ出し、後から後から、シャワーと共に悠里の頬を伝った。
今すぐに、剛士に抱きしめて貰えたら、どんなにいいだろう。
全てを話して、怖かった、悲しかったと訴えて。
剛士の腕の中で、泣くことができたら。
恐怖に擦り減った心と身体を、剛士の温もりで埋めることができたなら――
「ゴウさん……」
シャワーに打たれながら、悠里は叶わぬ願いを呟いた。
「会いたいよ……」
いっそのこと、明日あさっては学校を休んでしまおうかという誘惑に駆られる。
この2日間、家に籠城してしまえば。
さすがのカンナも、家にまでは押しかけて来ないはずだ。
けれど、できない。
悠里が休めば、彩奈に心配をかけてしまう。
『じゃあ彩奈。また明日ね!』
今日の別れ際、自分が親友に投げかけた言葉を思い返す。
悠里はこれまで、1日も学校を休んだことがない。
勘のいい彩奈のことだ。
もしも悠里が、急に2日も休んだとしたら。
何かあったのだと、彼女は気がつくだろう。
そして、彩奈を盾に悠里が脅迫されていたことを知ってしまえば。
彩奈はきっと、酷く傷つき、取り乱す。
彼女のことだから、なりふり構わずカンナの元に行くに違いない。
悠里は固く、唇を噛み締める。
彩奈を、カンナに接触させるわけにはいかない。絶対に。
カンナは、悠里にしたのと同じように、今度は悠里を盾にとって、彩奈を脅すだろう。
また、他校の男子を呼び寄せ、彩奈を傷つけようとするかも知れない……
そんなことはさせない。
悠里はシャワーを止め、しっかりと顔を上げる。
明日は木曜日。そして金曜日は卒業式。たったの2日だ。
耐えきってみせる。
震える心に鞭を打ち、悠里は何度目かの決意を固め直した。
帰宅した弟と一緒に食べ、先にお風呂に入るよと声を掛ける。
幸い、弟には何も言われなかった。
普段通りの自分を演じることができたかと、悠里は少しホッとする。
このまま湯船に浸かるのは、嫌だった。
いつもよりも熱いシャワーを浴び、髪を、身体を洗った。
何度洗い流しても恐怖の感触は消えなくて、悠里はゴシゴシと身体を擦り続ける。
男子生徒に触られた肩を、腕を、太ももを。
自分が擦り減って、小さくなっていくようだった。
擦った身体が痛くて、胸が痛くて、悠里の目に涙が込み上げる。
それは熱く悠里から零れ出し、後から後から、シャワーと共に悠里の頬を伝った。
今すぐに、剛士に抱きしめて貰えたら、どんなにいいだろう。
全てを話して、怖かった、悲しかったと訴えて。
剛士の腕の中で、泣くことができたら。
恐怖に擦り減った心と身体を、剛士の温もりで埋めることができたなら――
「ゴウさん……」
シャワーに打たれながら、悠里は叶わぬ願いを呟いた。
「会いたいよ……」
いっそのこと、明日あさっては学校を休んでしまおうかという誘惑に駆られる。
この2日間、家に籠城してしまえば。
さすがのカンナも、家にまでは押しかけて来ないはずだ。
けれど、できない。
悠里が休めば、彩奈に心配をかけてしまう。
『じゃあ彩奈。また明日ね!』
今日の別れ際、自分が親友に投げかけた言葉を思い返す。
悠里はこれまで、1日も学校を休んだことがない。
勘のいい彩奈のことだ。
もしも悠里が、急に2日も休んだとしたら。
何かあったのだと、彼女は気がつくだろう。
そして、彩奈を盾に悠里が脅迫されていたことを知ってしまえば。
彩奈はきっと、酷く傷つき、取り乱す。
彼女のことだから、なりふり構わずカンナの元に行くに違いない。
悠里は固く、唇を噛み締める。
彩奈を、カンナに接触させるわけにはいかない。絶対に。
カンナは、悠里にしたのと同じように、今度は悠里を盾にとって、彩奈を脅すだろう。
また、他校の男子を呼び寄せ、彩奈を傷つけようとするかも知れない……
そんなことはさせない。
悠里はシャワーを止め、しっかりと顔を上げる。
明日は木曜日。そして金曜日は卒業式。たったの2日だ。
耐えきってみせる。
震える心に鞭を打ち、悠里は何度目かの決意を固め直した。
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