#秒恋4 恋の試練は元カノじゃなくて、元カノの親友だった件。

ReN

文字の大きさ
上 下
31 / 94
piece4 半分は本当のことを

みんなのコーディネート

しおりを挟む
久しぶりに4人で集まれたので、まずはカフェでランチをしながら、ゆっくりお喋りを楽しむことになった。

拓真の誘導により、話題は日頃の皆のコーディネートになる。
「今日の悠里ちゃんはカジュアルだけど、彩奈ちゃんも悠里ちゃんも、いつもキレイ系で大人っぽいよね」

「あはは、そうでしょー! ウチら、よく一緒に買い物するもんね?」
向かいに座る悠里の顔を覗き込むようにして、彩奈が笑う。


今日の彩奈は、ネックと袖に軽くフリルがついたニットに、黒のミニスカートを合わせていた。
ニットの色合いは、モカ。
袖には程良いボリュームがあり、ラインがとても綺麗だ。
彩奈のダークカラーを入れた長い髪と赤メガネも相まって、上品さと色香を兼ね備えた、大人っぽいコーディネートに仕上がっている。

「へえ。やっぱ2人は、一緒に買い物行ってんだあ。服の趣味、合ってそうだもんね」
ニコニコと拓真は頷く。
「2人とも、いつもめっちゃオシャレだからさ!一緒に遊ぶときは、オレたちもちょっと気合い入るよね」
「俺は別に、いつも通りだけど」
笑いながら、剛士は拓真の頭を小突く。

「拓真くんとシバさんは、一緒に買い物行ったりするの? 2人は、結構イメージ違うよね?」
彩奈の言葉に、悠里も同意して頷いた。
「うん。2人ともお洒落だけど、買うお店は違っていそう」


拓真と剛士は、あまり服装に共通点は見受けられない。
拓真は、さすがはギターを弾くバンドマンといったところだ。
いつも、色や形に遊び心のあるデザインを軽快に着こなしている。

反対に剛士は、モノトーンを基調としたコーディネートが多い。
黒と白に、何か一色を足す程度の、落ち着いた色遣いやデザインを好むように見える。
服装で言えば、対照的なイメージの2人だ。


今日の拓真は、テラコッタ色のコートが印象的だ。
そこに白のパーカーと、ブラウンのチェックパンツを合わせている。
全体的に可愛らしいコーディネートだ。

剛士の方はモノトーンで、白のトレーナーに黒のスキニーパンツ。
トレーナーの下に着た紫のTシャツが、襟元と裾から少し見えているのが差し色になっている。
シンプルながらも、小慣れた着こなしだった。


女子2人の質問に、拓真が答える。
「オレとゴウも、割と一緒に行くよ、買い物!」
ね、と拓真は剛士に笑いかけた。
「お互いに、服選んであげたりもするし!」
「ふふっ」
2人のそんな姿を想像すると、可愛らしい。
思わず悠里は吹き出した。

「ゴウは、ほっといたら黒か白ばっかり選ぶからさあ。オレが色味を足してあげるわけ」
「だって黒とか白って、楽だろ」
合わせやすいという意味だろうか、剛士が苦笑混じりに応えている。


「ゴウさん、黒が似合うもんね」
悠里は微笑んで言った。
彩奈が、ニヤニヤ笑いを浮かべて口を挟む。
「そうそう、黒が似合ってる! だから悠里も、黒の毛糸でネックウォーマー編んだんだもんねー?」
ジャケットと共にハンガーに掛けてある、剛士のネックウォーマーを指し、彩奈は笑みを深めた。

「あ、彩奈……」
さすがに、目の前で言われてしまうと恥ずかしい。
悠里は赤く色づく頬を隠すように俯いた。

「はは、めちゃめちゃ嬉しかったぞ?」
剛士が笑って答える。
「どんな服装でも合うから、毎日使えるし」
「うんうん、ゴウってばホントに毎日付けてるよね! 何なら校内で付けてるときもある」
「寒いときにすぐ使えるんだから、いいだろ」
「悠里ちゃんを感じられるしね?」
「うっせ」


拓真と軽口の応酬をしながら、剛士は悠里の頭に手を伸ばした。
ぽんぽん、と撫でてから、ハッとしたように剛士が謝る。
「悪い。いつものクセで触っちゃった」

きょとんと、悠里は隣の彼を見上げる。
「髪結んでんのに、ごめんな」
髪型が崩れないかを心配してくれたのかと、悠里は微笑んだ。
「ふふ、大丈夫だよ? ルーズなのが可愛い三つ編みだから、触って?」
言ってしまってから、悠里は慌てて口を押さえる。

気にしないでというつもりだったのに、これでは頭を撫でて欲しいと、ねだっているようなものだ。
案の定、向かいに座っている親友2人が囃し立ててくる。
「シバさーん、悠里が撫でてってさー」
「ゴウ、優しくなー?」
「……はいよ」

真っ赤に染まってしまう悠里とは対照的に、剛士は涼しい顔で悠里の髪に触れる。
そうして、彼女にしか聞こえないように、耳元で囁いた。
「髪結んでんのも、可愛いな」
「ゴ、ゴウさん……」
耐えきれず、悠里は両手で顔を覆い隠す。

「お、ゴウ。なんて言ったの?」
「なになにー? 悠里がそんなに真っ赤になっちゃうことー?」
「はは、うっせ」
ますます揶揄ってくる友人たちの声も、それを軽くいなす剛士の声も、もはや悠里には届かなかった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました

さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。 私との約束なんかなかったかのように… それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。 そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね… 分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!

すれ違ってしまった恋

秋風 爽籟
恋愛
別れてから何年も経って大切だと気が付いた… それでも、いつか戻れると思っていた… でも現実は厳しく、すれ違ってばかり…

貴方もヒロインのところに行くのね? [完]

風龍佳乃
恋愛
元気で活発だったマデリーンは アカデミーに入学すると生活が一変し てしまった 友人となったサブリナはマデリーンと 仲良くなった男性を次々と奪っていき そしてマデリーンに愛を告白した バーレンまでもがサブリナと一緒に居た マデリーンは過去に決別して 隣国へと旅立ち新しい生活を送る。 そして帰国したマデリーンは 目を引く美しい蝶になっていた

夫のかつての婚約者が現れて、離縁を求めて来ました──。

Nao*
恋愛
結婚し一年が経った頃……私、エリザベスの元を一人の女性が訪ねて来る。 彼女は夫ダミアンの元婚約者で、ミラージュと名乗った。 そして彼女は戸惑う私に対し、夫と別れるよう要求する。 この事を夫に話せば、彼女とはもう終わって居る……俺の妻はこの先もお前だけだと言ってくれるが、私の心は大きく乱れたままだった。 その後、この件で自身の身を案じた私は護衛を付ける事にするが……これによって夫と彼女、それぞれの思いを知る事となり──? (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります)

誤解されて1年間妻と会うことを禁止された。

しゃーりん
恋愛
3か月前、ようやく愛する人アイリーンと結婚できたジョルジュ。 幸せ真っただ中だったが、ある理由により友人に唆されて高級娼館に行くことになる。 その現場を妻アイリーンに見られていることを知らずに。 実家に帰ったまま戻ってこない妻を迎えに行くと、会わせてもらえない。 やがて、娼館に行ったことがアイリーンにバレていることを知った。 妻の家族には娼館に行った経緯と理由を纏めてこいと言われ、それを見てアイリーンがどう判断するかは1年後に決まると言われた。つまり1年間会えないということ。 絶望しながらも思い出しながら経緯を書き記すと疑問点が浮かぶ。 なんでこんなことになったのかと原因を調べていくうちに自分たち夫婦に対する嫌がらせと離婚させることが目的だったとわかるお話です。

振られた私

詩織
恋愛
告白をして振られた。 そして再会。 毎日が気まづい。

私の知らぬ間に

豆狸
恋愛
私は激しい勢いで学園の壁に叩きつけられた。 背中が痛い。 私は死ぬのかしら。死んだら彼に会えるのかしら。

処理中です...