#秒恋４ 恋の試練は元カノじゃなくて、元カノの親友だった件。

piece4 半分は本当のことを

拓真の優しさ

「楽しそうだねえ、お２人さん！」
元気な声とともに、彩奈と拓真が小走りでやって来た。

「例によってオレたち、暫く向こうで見てたんだけど。２人が、めちゃめちゃイチャイチャしてるから、もうどうしようかって思った！」
「ホントだよ。このまま２人きりにしてあげようかって、私と拓真くん、割とマジで話し合ったよね！」

「めちゃめちゃ、イチャイチャ……」
拓真から放たれたワードを、悠里は思わず復唱していた。
剛士は、呆れたように親友２人に文句を言う。
「毎度毎度、アホなことしてないで、さっさと来い」


友人が来たのに、これが普通だといわんばかりに、剛士は悠里の手を離さない。
そんな些細なことが嬉しくて、悠里は彼の大きな手を、きゅっと握った。
剛士は拓真と軽口を叩き合いながらも、悠里の手を握り返してくれる。

「ンフフ……悠里、可愛いねえ」
彩奈が笑顔の悠里を覗き込んでくる。
「シバさんとお手て繋いで、それだけで幸せ～って、顔してる」

「あ、彩奈……まさか、私の心が読めるの……？」
悠里の発言に、拓真が弾かれたように笑い出す。

「あはは！ 悠里ちゃんも、ただ揶揄っただけじゃ動じなくなってきたね？ そのままどんどん、当たり前にイチャついてちょーだい！」
「ふふっ」
拓真の笑い声につられて、悠里も笑ってしまう。
笑えば笑うほど、元気になれた。


「っていうか、今日の悠里、ちょっと意外なコーデだね？」
彩奈が悠里のデニムを指して言った。
「私、今日は絶対、この間買ったスカート履いてくると思ってたわ」

本当は今日着たかったスカートの話題を出され、思わず悠里は苦笑する。
すると、拓真が明るく口を挟んできた。

「ね、いい意味でビックリした。そういう感じも似合ってる！ な、ゴウ？」
「ん？ ああ、そうだな」
拓真に肩を叩かれた剛士が、不思議そうな顔をしながらも同調する。

「いつもと違う悠里ちゃん、どうよ、ゴウ？」
「はは、可愛いに決まってんだろ」
悠里と繋いだ手を見せつけるように胸の辺りに掲げ、剛士は笑った。


暖かい手の感覚に、悠里の顔は柔らかくほころぶ。
何より、拓真の自然な手助けに感謝せずにはいられない。


昨日、ケガの手当てしてくれた彼は、悠里がスカートを履かない理由に気が付いている。
だから、何も知らない彩奈から深く追及される前に、イメチェンを褒めるような発言をしてくれたのだろう。

おまけに、剛士から「可愛い」という言葉まで引き出してくれる手腕は、さすがである。

ふっと拓真と目が合った。
金髪頭の下にある優しい瞳が、ニコッと悠里に笑いかける。

――ありがとう、拓真さん。
言葉にはできない思いを込めて、悠里も微笑み返した。