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piece2 歪んだ友情
エリカの親友だから
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悠里は少しの間沈黙し、息を整える。
心臓が苦しみに喘ぐのを、必死に抑え込む。
そうして、今日彼女と話し始めたときから疑問に思っていたことを問うた。
「……エリカさんは、知っているんですか?」
「……は?」
悠里は真っ直ぐにカンナを見つめ、もう一度尋ねた。
「安藤さんが、私に昔の写真を見せて、そういうお話をすること。エリカさんは、知っているんですか?」
「……ああ。私とエリカは親友だから。言われなくたって、エリカのために動いてあげるのは、当然」
カンナが唇を歪め、薄く微笑んだ。
「だから私、ずっとアンタに接触する機会を、待ってたんだ」
笑みを浮かべながら語られたその言葉は、悠里の背筋を凍らせた。
もしかするとこの人は、初めて出会ったあの日から。
密かに、悠里のことを探っていたのだろうか――
カンナは、溜め息をついてみせた。
そうして、悠里に目線を戻して呟く。
「あの日……エリカ、泣いたんだよね」
あの日。
いつのことを指すのか測りかね、悠里は首を傾げる。
カンナは再び、悠里に向かって大袈裟な溜め息をつく。
「あの、カラオケで会った日よ。久しぶりに剛士くんに会って、話して。まるで心が昔に戻ったみたいだって。泣いたんだよ」
そんなの、親友として放っとけるわけないでしょ、とカンナは呟いた。
カラオケでの再会で受けた痛みは、悠里にとっても大きな出来事だった。
切れ長の透き通った瞳が悲しみに曇り、迷いに揺れ動くのを見たときの苦しさは、忘れられない。
剛士がエリカと電話で話しているときの表情を見たときは、挫けそうにもなった。
けれど、剛士が懸命に、悠里に手を伸ばしてくれた。
痛みや迷い、正直な気持ちを、悠里に見せてくれた。
イルミネーションを見上げ、手を繋ぎながら、2人で話をした。
時間をかけて、一緒に乗り越えていこうと、約束した――
今、悠里と剛士は少しずつ、絆を深めているところだ。
2人の日常を、思い出を、大切に積み上げているところだった。
カンナの口から、あの日のエリカの様子を聞かされ、悠里の心は締め付けられる。
カンナは悠里を睨みつけながら、思いを吐露した。
「昔……って、エリカは言ったけどさ。私は、昔じゃないと思うんだよね。私は最初から、2人が別れたのは間違いだって、わかってた」
カンナの言葉は、饒舌に続く。
「あのときは、剛士くんが大人になれなかっただけなのよ。たった一度の過ちぐらい、許してあげなきゃいけないのにさ。まだ精神年齢が幼くて、できなかったのね」
彼の痛みや苦しみを無視するばかりか、その心を踏み躙る暴言に、悠里の胸が凍りついた。
それが、エリカの親友という立場の人から出たことが、悲しかった。
悠里は、必死に訴える。
「ゴウさんの気持ちを、無視しないでください。ゴウさんがどんなに傷ついて、今でも苦しんでいるか……」
「黙れ」
カンナが高圧的に、悠里の声を遮った。
心臓が苦しみに喘ぐのを、必死に抑え込む。
そうして、今日彼女と話し始めたときから疑問に思っていたことを問うた。
「……エリカさんは、知っているんですか?」
「……は?」
悠里は真っ直ぐにカンナを見つめ、もう一度尋ねた。
「安藤さんが、私に昔の写真を見せて、そういうお話をすること。エリカさんは、知っているんですか?」
「……ああ。私とエリカは親友だから。言われなくたって、エリカのために動いてあげるのは、当然」
カンナが唇を歪め、薄く微笑んだ。
「だから私、ずっとアンタに接触する機会を、待ってたんだ」
笑みを浮かべながら語られたその言葉は、悠里の背筋を凍らせた。
もしかするとこの人は、初めて出会ったあの日から。
密かに、悠里のことを探っていたのだろうか――
カンナは、溜め息をついてみせた。
そうして、悠里に目線を戻して呟く。
「あの日……エリカ、泣いたんだよね」
あの日。
いつのことを指すのか測りかね、悠里は首を傾げる。
カンナは再び、悠里に向かって大袈裟な溜め息をつく。
「あの、カラオケで会った日よ。久しぶりに剛士くんに会って、話して。まるで心が昔に戻ったみたいだって。泣いたんだよ」
そんなの、親友として放っとけるわけないでしょ、とカンナは呟いた。
カラオケでの再会で受けた痛みは、悠里にとっても大きな出来事だった。
切れ長の透き通った瞳が悲しみに曇り、迷いに揺れ動くのを見たときの苦しさは、忘れられない。
剛士がエリカと電話で話しているときの表情を見たときは、挫けそうにもなった。
けれど、剛士が懸命に、悠里に手を伸ばしてくれた。
痛みや迷い、正直な気持ちを、悠里に見せてくれた。
イルミネーションを見上げ、手を繋ぎながら、2人で話をした。
時間をかけて、一緒に乗り越えていこうと、約束した――
今、悠里と剛士は少しずつ、絆を深めているところだ。
2人の日常を、思い出を、大切に積み上げているところだった。
カンナの口から、あの日のエリカの様子を聞かされ、悠里の心は締め付けられる。
カンナは悠里を睨みつけながら、思いを吐露した。
「昔……って、エリカは言ったけどさ。私は、昔じゃないと思うんだよね。私は最初から、2人が別れたのは間違いだって、わかってた」
カンナの言葉は、饒舌に続く。
「あのときは、剛士くんが大人になれなかっただけなのよ。たった一度の過ちぐらい、許してあげなきゃいけないのにさ。まだ精神年齢が幼くて、できなかったのね」
彼の痛みや苦しみを無視するばかりか、その心を踏み躙る暴言に、悠里の胸が凍りついた。
それが、エリカの親友という立場の人から出たことが、悲しかった。
悠里は、必死に訴える。
「ゴウさんの気持ちを、無視しないでください。ゴウさんがどんなに傷ついて、今でも苦しんでいるか……」
「黙れ」
カンナが高圧的に、悠里の声を遮った。
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