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piece2 歪んだ友情
牙
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パラリ、とカンナは最後のページをめくる。
「あ、そうそうこれ!見て?」
カンナの笑顔が大きくなった。
「貴重なツーショット!これ、私が撮ってあげたんだ」
遠慮しちゃって、全然2人だけの写真撮らないからさあ、とカンナは声を立てて笑った。
それは、ジャージ姿の剛士とエリカが、並んで立っている写真だった。
周囲に、誰もいなかったのだろう。
寄り添って、指を絡めて。
紛れもない、恋人同士の写真だった。
エリカの背は、剛士の鼻あたりだろうか。
資料保管室で見たときとは比べ物にならない、キラキラと大輪の華が咲き誇る笑顔。
剛士の肩に、そっと頭を預けている。
剛士も、少し照れたような顔をしているが、その切れ長の瞳は柔らかな光を帯びていた。
2人とも長身なので、ジャージ姿でただ立っているだけで、絵になる。
とても、綺麗なツーショットだった。
「……いかにも、バスケ部カップルって感じでしょ?」
悪戯っぽくカンナは言った。
「……はい」
悠里は、やっとの思いで声を絞り出す。
見たくないのに、目が吸い寄せられた。
楽しそうな2人の笑顔。
悠里が立ち入ることの許されない、思い出の場所。
幸せな2人――
「……こうして見ると、やっぱりお似合いだよねえ」
悠里に同意を求めるように、カンナは言った。
何とも答えられず、悠里は小さく唇を噛む。
カンナは笑みを浮かべながら悠里を見据え、牙を剥いた。
「アンタがいなきゃ、2人は元サヤなのにね」
ああ、これが本題だ、と悠里は痛みに震える胸を押さえ、思った。
「……ねえ、橘さん。お願い」
カンナが悠里の顔を、無遠慮に覗き込む。
「剛士くんの前から、消えてくんないかな」
あまりにも乱暴な刃を喉元に突きつけられ、悠里は一瞬、息ができなかった。
ぎゅっと唇を噛み、悠里は理不尽な言葉の暴力に耐える。
「アンタがいなければ、2人はすぐにでも、元に戻れるからさ。私、エリカにまた、この写真みたいに笑って欲しいんだ」
カンナはアルバムをトントン、と指で叩いて言った。
「だから……2人の邪魔、しないであげて?」
「あ、そうそうこれ!見て?」
カンナの笑顔が大きくなった。
「貴重なツーショット!これ、私が撮ってあげたんだ」
遠慮しちゃって、全然2人だけの写真撮らないからさあ、とカンナは声を立てて笑った。
それは、ジャージ姿の剛士とエリカが、並んで立っている写真だった。
周囲に、誰もいなかったのだろう。
寄り添って、指を絡めて。
紛れもない、恋人同士の写真だった。
エリカの背は、剛士の鼻あたりだろうか。
資料保管室で見たときとは比べ物にならない、キラキラと大輪の華が咲き誇る笑顔。
剛士の肩に、そっと頭を預けている。
剛士も、少し照れたような顔をしているが、その切れ長の瞳は柔らかな光を帯びていた。
2人とも長身なので、ジャージ姿でただ立っているだけで、絵になる。
とても、綺麗なツーショットだった。
「……いかにも、バスケ部カップルって感じでしょ?」
悪戯っぽくカンナは言った。
「……はい」
悠里は、やっとの思いで声を絞り出す。
見たくないのに、目が吸い寄せられた。
楽しそうな2人の笑顔。
悠里が立ち入ることの許されない、思い出の場所。
幸せな2人――
「……こうして見ると、やっぱりお似合いだよねえ」
悠里に同意を求めるように、カンナは言った。
何とも答えられず、悠里は小さく唇を噛む。
カンナは笑みを浮かべながら悠里を見据え、牙を剥いた。
「アンタがいなきゃ、2人は元サヤなのにね」
ああ、これが本題だ、と悠里は痛みに震える胸を押さえ、思った。
「……ねえ、橘さん。お願い」
カンナが悠里の顔を、無遠慮に覗き込む。
「剛士くんの前から、消えてくんないかな」
あまりにも乱暴な刃を喉元に突きつけられ、悠里は一瞬、息ができなかった。
ぎゅっと唇を噛み、悠里は理不尽な言葉の暴力に耐える。
「アンタがいなければ、2人はすぐにでも、元に戻れるからさ。私、エリカにまた、この写真みたいに笑って欲しいんだ」
カンナはアルバムをトントン、と指で叩いて言った。
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