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piece1 花のような笑顔
部室で電話
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『悠里』
何回めかのコールの後、剛士が少し慌てたような声で応えてくれた。
「ゴウさん」
嬉しくて、ホッとして、悠里も彼を呼ぶ。
『よかった、間に合った』
電話越しの剛士が、笑った。
「ごめんなさい。急がせちゃった?」
『はは、大丈夫だよ。今ちょうど部活終わって、着替えてたんだ』
時刻は20時を回っていた。
耳をすませば、微かに男子の話し声や笑い声が聞こえる。
きっと、部室にいるのだろう。
「ごめんね。急に電話しちゃって」
『ん?なんで?俺、嬉しいよ?』
剛士が、優しく笑う。
『悠里から掛けてきてくれるの、珍しいから……ちょっと、浮かれた』
「ふふっ」
照れくさくなり、お互いに笑ってしまった。
剛士は部室を出て、どこかへ移動したらしい。
ふっと、周りから音が消えた。
「遅い時間まで、お疲れさま」
『ん、さんきゅ。これでも、練習時間は短い方だけどな』
「そうなの?」
『うん。他の学校はもっと遅い時間まで、毎日やってると思う』
「え……夜9時、とか?」
『ああ、余裕だな』
「わあ……」
部活動のハードな一面を聞き、悠里は絶句する。
『でもウチの監督は、短い時間で効率的に、がモットーだから。今日は20時までだったけど、日によっては18時終わりもあるし』
「でもゴウさん、朝練は毎日あるって言ってたよね」
『うん、そうだな。朝練は自由参加だけど』
「朝は、何時起き?」
『大体、4時くらい』
「わあ!」
剛士はきっと、帰宅したら勉強もするのだろう。
彼の多忙な毎日を想像し、悠里は心配そうに問いかける。
「ゴウさん、寝てる……?」
『はは、普通に寝てるよ。夜は早めに寝るし、学校では休み時間、基本寝てるし』
「休み時間」
『うん。昼休みとか、メシ食ったらお前のネックウォーマーを枕にして、寝る』
「あはは」
話の流れで、悠里からのプレゼントを使っていると知らせてくれる。
剛士の自然な優しさが、悠里の胸を温めてくれる。
『めちゃめちゃ寝心地いい』
「ふふ、嬉しいな」
『睡眠大事だからな。成績も落とせねえし』
勇誠学園バスケ部は、文武両道を信念として掲げている。
テストの平均が70点を下回ると試合に出さない。
成績の低迷が続く生徒は謹慎。
改善が無ければ退部勧告など、学業に関しても厳しい目標を課されるのだ。
剛士は部全体として目標をクリアするために、テスト前には勉強会を開いたりと、献身的に部員を支えている。
「……ゴウさんは、すごいね」
改めて、自分が恋をしている彼は、こんなに素敵な人なのだと思う。
『ん?』
「カッコいいよ……」
剛士が柔らかく笑う。
『電話で言われると、さすがに照れるな』
「ふふ、ごめん」
『逆にお前は、電話だと平気なんだな?』
冗談めかし、剛士が悔しがる。
『くそぉ。お前がいま目の前にいたら、頭撫でて赤くしてやるのに』
「あはは」
笑いながら悠里は、剛士の暖かい手の感触を思い出していた。
大きな手が、長い指が、クシャクシャと髪を撫でてくれる、甘い感覚。
優しい切れ長の瞳で、悠里を見つめる、剛士の笑顔――
『……あれ、悠里?』
急に沈黙した悠里に、剛士は呼びかける。
「な、なんでも、ない……」
『赤くなったな』
「な、なってないもん」
『はは、やべ、可愛い』
「……可愛いって、言っちゃダメ……」
剛士が、弾かれたように笑い出す。
何回めかのコールの後、剛士が少し慌てたような声で応えてくれた。
「ゴウさん」
嬉しくて、ホッとして、悠里も彼を呼ぶ。
『よかった、間に合った』
電話越しの剛士が、笑った。
「ごめんなさい。急がせちゃった?」
『はは、大丈夫だよ。今ちょうど部活終わって、着替えてたんだ』
時刻は20時を回っていた。
耳をすませば、微かに男子の話し声や笑い声が聞こえる。
きっと、部室にいるのだろう。
「ごめんね。急に電話しちゃって」
『ん?なんで?俺、嬉しいよ?』
剛士が、優しく笑う。
『悠里から掛けてきてくれるの、珍しいから……ちょっと、浮かれた』
「ふふっ」
照れくさくなり、お互いに笑ってしまった。
剛士は部室を出て、どこかへ移動したらしい。
ふっと、周りから音が消えた。
「遅い時間まで、お疲れさま」
『ん、さんきゅ。これでも、練習時間は短い方だけどな』
「そうなの?」
『うん。他の学校はもっと遅い時間まで、毎日やってると思う』
「え……夜9時、とか?」
『ああ、余裕だな』
「わあ……」
部活動のハードな一面を聞き、悠里は絶句する。
『でもウチの監督は、短い時間で効率的に、がモットーだから。今日は20時までだったけど、日によっては18時終わりもあるし』
「でもゴウさん、朝練は毎日あるって言ってたよね」
『うん、そうだな。朝練は自由参加だけど』
「朝は、何時起き?」
『大体、4時くらい』
「わあ!」
剛士はきっと、帰宅したら勉強もするのだろう。
彼の多忙な毎日を想像し、悠里は心配そうに問いかける。
「ゴウさん、寝てる……?」
『はは、普通に寝てるよ。夜は早めに寝るし、学校では休み時間、基本寝てるし』
「休み時間」
『うん。昼休みとか、メシ食ったらお前のネックウォーマーを枕にして、寝る』
「あはは」
話の流れで、悠里からのプレゼントを使っていると知らせてくれる。
剛士の自然な優しさが、悠里の胸を温めてくれる。
『めちゃめちゃ寝心地いい』
「ふふ、嬉しいな」
『睡眠大事だからな。成績も落とせねえし』
勇誠学園バスケ部は、文武両道を信念として掲げている。
テストの平均が70点を下回ると試合に出さない。
成績の低迷が続く生徒は謹慎。
改善が無ければ退部勧告など、学業に関しても厳しい目標を課されるのだ。
剛士は部全体として目標をクリアするために、テスト前には勉強会を開いたりと、献身的に部員を支えている。
「……ゴウさんは、すごいね」
改めて、自分が恋をしている彼は、こんなに素敵な人なのだと思う。
『ん?』
「カッコいいよ……」
剛士が柔らかく笑う。
『電話で言われると、さすがに照れるな』
「ふふ、ごめん」
『逆にお前は、電話だと平気なんだな?』
冗談めかし、剛士が悔しがる。
『くそぉ。お前がいま目の前にいたら、頭撫でて赤くしてやるのに』
「あはは」
笑いながら悠里は、剛士の暖かい手の感触を思い出していた。
大きな手が、長い指が、クシャクシャと髪を撫でてくれる、甘い感覚。
優しい切れ長の瞳で、悠里を見つめる、剛士の笑顔――
『……あれ、悠里?』
急に沈黙した悠里に、剛士は呼びかける。
「な、なんでも、ない……」
『赤くなったな』
「な、なってないもん」
『はは、やべ、可愛い』
「……可愛いって、言っちゃダメ……」
剛士が、弾かれたように笑い出す。
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