#秒恋3 友だち以上恋人未満の貴方に、甘い甘いサプライズを〜貴方に贈るハッピーバースデー〜

ReN

文字の大きさ
上 下
24 / 50
piece4 楽しい遊園地

お化け屋敷モニタリング 前半戦

しおりを挟む
出口の脇に設置されたモニターを、彩奈と悠里はワクワクと見上げる。

「あ、来たきた!」
お化け屋敷内が暗いため、決して画質は良くないが、確かに男子2人の姿が確認できた。


恐る恐る、といったふうに摺り足で歩く拓真の横を、スタスタと剛士が歩いて行く。
『ちょ、ちょっとゴウ!早いって』
『はあ?お前が遅いんだよ』

さっさと行くぞ、と剛士が拓真の腕を掴んで急き立てた。
音声は、素晴らしく鮮明に聴こえる。


「このお化け屋敷って、どんなコンセプトだっけ?」
「えっと……迫りくる呪いの女。あなたはこの恐怖に耐えられるか?」

遊園地のパンフレットを悠里が読み上げたときだった。

『いやああ!』
甲高い悲鳴が、モニターから飛び出してきた。
悠里は、ビクッと肩を震わせてモニターに目を戻す。

「……へ? 今のって、もしかして拓真くんの声?」
彩奈が目を丸くして、悠里を見つめる。

「え? すごい高い声だったよ?」
誰か、他の女の人じゃないかな、と悠里が答えようとしたとき、剛士の声が聞こえた。

『ああ、もう。ただの人形だって』
古びた椅子に腰掛けた、ボロ着物を羽織った人形らしき物体を指している。
『うう……ゴウ、怖いよう』
『大丈夫だっつの』

悠里と彩奈は食い入るようにモニターを見つめ、同時に吹き出した。
「やっぱアレ、拓真くんの悲鳴だったんだ」
「そう、みたいだね……」
マジか!と彩奈が笑い出す。
さすがの悠里も、笑いを堪えきれなかった。


『ほら、行くぞ?』
ビクビクと肩を竦めている拓真を宥め、剛士が進み始める。

『待って、待ってゴウ!置いてかないでえ』
恐怖から若干内股になっている拓真が、慌てて剛士の後を追った。


ミシリ、ミシリ。
2人の歩く廊下が、嫌な音を立てて軋む。

『フフフ……』
どこからか、漏れ出る不気味な女の声。

『ひゃっ!?』
足を止め、不安げに周囲を見回す拓真。
『フフフフフフ……』
ピョンっと拓真は飛び跳ね、剛士にしがみついた。

『アハハハハハハハハ!!』
『ぎゃーっ!?』
『うっせえ!』
耳元で思い切り叫ばれた剛士が、拓真の頭をはたいている。


「ちょ、ちょっと待って?」
彩奈が笑いながら悠里を見る。
「今って、女の笑い声が聞こえるだけの仕掛けだよね?」
「う、うん、そうだね」
悠里も笑みを浮かべ、頷いた。

「拓真くん、ビビり過ぎでしょ。こんな調子で最後まで行けるわけ?」
笑い半分、心配半分で、2人はモニタリングを続ける。


廊下の脇にある障子が、行燈の光でぼんやりと照らされる。
着物を着た乱れ髪の女のシルエットが、すぅっと浮かび上がった。

『フフフフフフ……』
『ひいぃ~やあああああ!?ゴメンナサイゴメンナサイ~!!』
拓真が叫びながら走り出す。

『お、おい』
剛士の静止の声も届かなかったか、拓真は一目散に走り、モニターから消えていった。


ブッと女子2人は吹き出す。
「待て待て、何故謝った?」
「大丈夫かなあ、拓真さん」

と、そこへ、また特大の悲鳴を上げながら拓真が戻ってきた。

『ぎゃああああゴメンナサイ、もうしませんからあああ!!』
剛士の元に戻ってきたのかと思いきや、拓真はそのまま、反対方向に走り去ってしまう。

『おい待て! そっち入口!!』
慌てて拓真を追いかける剛士。


堪えきれず、彩奈と悠里は笑い崩れた。
「う、嘘でしょ拓真くん! これ、一生出てこれないよ!?」
「どうなっちゃうの?」
悠里の大きな瞳にも、笑い過ぎて涙が光っている。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

好きな人がいるならちゃんと言ってよ

しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

アンコール マリアージュ

葉月 まい
恋愛
理想の恋って、ありますか? ファーストキスは、どんな場所で? プロポーズのシチュエーションは? ウェディングドレスはどんなものを? 誰よりも理想を思い描き、 いつの日かやってくる結婚式を夢見ていたのに、 ある日いきなり全てを奪われてしまい… そこから始まる恋の行方とは? そして本当の恋とはいったい? 古風な女の子の、泣き笑いの恋物語が始まります。 ━━ʚ♡ɞ━━ʚ♡ɞ━━ʚ♡ɞ━━ 恋に恋する純情な真菜は、 会ったばかりの見ず知らずの相手と 結婚式を挙げるはめに… 夢に描いていたファーストキス 人生でたった一度の結婚式 憧れていたウェディングドレス 全ての理想を奪われて、落ち込む真菜に 果たして本当の恋はやってくるのか?

#秒恋5 恋人同士まで、秒読みの、筈だった

ReN
恋愛
#秒恋シリーズ5作目 恋人同士まで、秒読み段階に入った、筈だった 元彼女の友だちによる妨害。 思わぬ出来事に暗雲が立ち込めるけれど、 互いに恋焦がれる気持ちは高まるばかり。 手を取り合って、どんな障害も乗り越えてみせる。 元彼女の友だちから受ける嫌がらせ、 親友との大喧嘩、 家族との繋がり、 そして、恋。 悠里と剛士の秒針は、ドキドキと思いを刻み続けます。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

愛のかたち

凛子
恋愛
プライドが邪魔をして素直になれない夫(白藤翔)。しかし夫の気持ちはちゃんと妻(彩華)に伝わっていた。そんな夫婦に訪れた突然の別れ。 ある人物の粋な計らいによって再会を果たした二人は…… 情けない男の不器用な愛。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

処理中です...