280 / 378
一年生の三学期
第八十九話 不動中学校・高等学校
しおりを挟む
店を出ると三人は、すぐ正面にある不動中学校・高等学校の正門を見据えた。この高校は七階建てで屋上が緑化されていて、ベランダは無くオフィスビルか病院のようだった。中高一貫校ということもあり、高校のみの学校と比べて建物が大きい。その姿は、大学病院といっても過言ではないほどで、やって来る他校の生徒はみんな驚いている様子だ。
だが、奈緒たちは驚かなかった。施設が充実しているひだまり高校も、二十三区内では有数の大きさを誇っている。階数も同じ七階建てであるばかりか、敷地規模や建物の容積は、自分たちの高校のほうがはるかに大きかったからだ。
ぽかんとファサードを見上げていた南が声を上げた。
「わっ、見て上、時計の横。4号館だって。何棟もあるんだ」
正門の内側はすぐに階段になっていて、中央にある踊り場の右側には胸像が飾られている。
それを見た奈緒が疑問を持った。
「この人だれだろ」
南が答える。
「ああ、この人、ミスター不動だよ。イケメンコンテストで優勝した」
「へぇ、でもおじさんぽい。おじさんカフェにいそう」
二人のおかしな会話を聞いて、杏奈が呆れた。
「もう、変なこと教えないで。誰だか知らないけど、学校の偉い人でしょ」
「なに? うそなの南ちゃん」奈緒が砕けた皿のようは表情で追及する。
「本気にしたの? 奈緒、あほだ、あんた」
南は腹を抱えて笑いながら、叩こうとした奈緒のこぶしをひらりとかわす。そして急いで階段を駆け上がる。
ついていったこの子が昇降口を見上げて、「いきなり玄関がある」と驚いた。
南と一緒に見上げた杏奈が口を開いて、想像を述べる。
「敷地の都合上、仕方ないわね。中高一貫校で生徒数が多いだろうし。ひだまりが六百三十人ちょっとだから、単純にうちより三百人以上多いんじゃないかしら」
「すごっ、マンモスじゃん、ほぼマンモスじゃん」
ぎょっとした南が玄関をくぐり、そのまま正面の扉を抜ける。
「あれ? また外に出ちゃった。なにここ、渡り廊下?」アーチ天井を見上げる。
「奥の建物のが昇降口じゃないかしら」
安奈の指摘に南が「ああ」と答えて一瞥し、左側に張られた緑色の網の目の向こうを見やった。
「柔らかいアスファルトみたいなタイプのグラウンドだ。なんか校舎の大きさと比べて、グラウンドは殺風景で狭いね。小学校の校庭みたい」
だが、奈緒たちは驚かなかった。施設が充実しているひだまり高校も、二十三区内では有数の大きさを誇っている。階数も同じ七階建てであるばかりか、敷地規模や建物の容積は、自分たちの高校のほうがはるかに大きかったからだ。
ぽかんとファサードを見上げていた南が声を上げた。
「わっ、見て上、時計の横。4号館だって。何棟もあるんだ」
正門の内側はすぐに階段になっていて、中央にある踊り場の右側には胸像が飾られている。
それを見た奈緒が疑問を持った。
「この人だれだろ」
南が答える。
「ああ、この人、ミスター不動だよ。イケメンコンテストで優勝した」
「へぇ、でもおじさんぽい。おじさんカフェにいそう」
二人のおかしな会話を聞いて、杏奈が呆れた。
「もう、変なこと教えないで。誰だか知らないけど、学校の偉い人でしょ」
「なに? うそなの南ちゃん」奈緒が砕けた皿のようは表情で追及する。
「本気にしたの? 奈緒、あほだ、あんた」
南は腹を抱えて笑いながら、叩こうとした奈緒のこぶしをひらりとかわす。そして急いで階段を駆け上がる。
ついていったこの子が昇降口を見上げて、「いきなり玄関がある」と驚いた。
南と一緒に見上げた杏奈が口を開いて、想像を述べる。
「敷地の都合上、仕方ないわね。中高一貫校で生徒数が多いだろうし。ひだまりが六百三十人ちょっとだから、単純にうちより三百人以上多いんじゃないかしら」
「すごっ、マンモスじゃん、ほぼマンモスじゃん」
ぎょっとした南が玄関をくぐり、そのまま正面の扉を抜ける。
「あれ? また外に出ちゃった。なにここ、渡り廊下?」アーチ天井を見上げる。
「奥の建物のが昇降口じゃないかしら」
安奈の指摘に南が「ああ」と答えて一瞥し、左側に張られた緑色の網の目の向こうを見やった。
「柔らかいアスファルトみたいなタイプのグラウンドだ。なんか校舎の大きさと比べて、グラウンドは殺風景で狭いね。小学校の校庭みたい」
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
坊主頭の絆:学校を変えた一歩【シリーズ】
S.H.L
青春
高校生のあかりとユイは、学校を襲う謎の病に立ち向かうため、伝説に基づく古い儀式に従い、坊主頭になる決断をします。この一見小さな行動は、学校全体に大きな影響を与え、生徒や教職員の間で新しい絆と理解を生み出します。
物語は、あかりとユイが学校の秘密を解き明かし、新しい伝統を築く過程を追いながら、彼女たちの内面の成長と変革の旅を描きます。彼女たちの行動は、生徒たちにインスピレーションを与え、更には教師にも影響を及ぼし、伝統的な教育コミュニティに新たな風を吹き込みます。
夏の決意
S.H.L
青春
主人公の遥(はるか)は高校3年生の女子バスケットボール部のキャプテン。部員たちとともに全国大会出場を目指して練習に励んでいたが、ある日、突然のアクシデントによりチームは崩壊の危機に瀕する。そんな中、遥は自らの決意を示すため、坊主頭になることを決意する。この決意はチームを再び一つにまとめるきっかけとなり、仲間たちとの絆を深め、成長していく青春ストーリー。
ハーレムに憧れてたけど僕が欲しいのはヤンデレハーレムじゃない!
いーじーしっくす
青春
赤坂拓真は漫画やアニメのハーレムという不健全なことに憧れる健全な普通の男子高校生。
しかし、ある日突然目の前に現れたクラスメイトから相談を受けた瞬間から、拓真の学園生活は予想もできない騒動に巻き込まれることになる。
その相談の理由は、【彼氏を女帝にNTRされたからその復讐を手伝って欲しい】とのこと。断ろうとしても断りきれない拓真は渋々手伝うことになったが、実はその女帝〘渡瀬彩音〙は拓真の想い人であった。そして拓真は「そんな訳が無い!」と手伝うふりをしながら彩音の潔白を証明しようとするが……。
証明しようとすればするほど増えていくNTR被害者の女の子達。
そしてなぜかその子達に付きまとわれる拓真の学園生活。
深まる彼女達の共通の【彼氏】の謎。
拓真の想いは届くのか? それとも……。
「ねぇ、拓真。好きって言って?」
「嫌だよ」
「お墓っていくらかしら?」
「なんで!?」
純粋で不純なほっこりラブコメ! ここに開幕!
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ネットの友達に会いに行ったら、間違ってべつの美少女と仲良くなった俺のラブコメ
扇 多門丸
青春
謳歌高校に通う高校2年生の天宮時雨は、高校1年生の3学期、学校をサボり続けたせいで留年しかけた生徒だった。
そんな彼の唯一無二の友人が、ネットの友達のブルームーン。ある日、いつも一緒にゲームをするけれど、顔の知らない友達だったブルームーンから「ちかくの喫茶店にいる」とチャットが来る。会いたいなら、喫茶店にいる人の中から自分を当てたら会ってやる。その提案に乗り、喫茶店へと走り、きれいな黒髪ストレートの美少女か?と聞いた。しかし、ブルームーンからは「違う」と否定され、すれ違ってしまった。
ブルームーンが黒髪の美少女だという推測を捨てきれずに過ごしていたとき、学校の使われていない音楽室でピアノを弾いている、そいつの姿を見つけた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる