242 / 835
一年生の三学期
🎀
しおりを挟む
務と春樹は足がすくんでいるのか、どちらもついていかない。小声だったので何も聞こえないが、理沙たちが話している間、四人は耳を澄ませて監視するように眺めながら待った。
戻ってきた萌音が、頭を傾けて顎を上げた上から目線でみんなに言う。
「わたしたち無実だよ。今日は二人でたまプラーザに行ってたし。それに原チャリをパクった危ない場所にいつまでもいないって。そもそも自分らの持ってるのに、なんでパクんの」
「なんで原チャリって分かんだよ。バイクとしか言ってないのによ」春樹がすごむ。
たじろぐ様子もなく、炯眼で答える。
「わたしら単車乗んないもん。バイクって言ったら原チャリだけだから」
堂々たる顔色で語っていたが、ふと奈緒がスクーターのハンドルを見やると、様相が転じた。
「前と違うバイクだ」この子が呟く。
萌音は、テストで間違えた個所を他の生徒に見られまいとする生徒みたく、鍵穴を隠すように足をインナーレッグシールドに伸ばした。だが、少し動揺した雰囲気を醸しつつも、姿勢を変えただけだと言いたげにすぐに下ろす。そこには、カナダの国旗をプリントした透明のキーホルダーと怪獣のキーチェーンがついていた。
「とりあえず、警察署に来てもらおうぜ」春樹がスマホを取り出して続ける。「あと逃げても大丈夫なように、写真撮っておこう。こいつらですって言えんだろ。そしたら全国指名手配だ」
ほかの三人が、明るくなったスマホの画面に意識を奪われた瞬間だった。
「ほら出せ」理沙がスクーターの後ろにまたがって小さく叫ぶ。と同時に、春樹の持っていたスマホを下からたたき上げて落とす。
その瞬間、萌音がハンドルを回してエンジンをふかすと、ブレーキを放してすぐさま発進した。
「「ああっ」」四人が悲鳴を上げる。
すかさず男子二人が手を伸ばすがあとの祭り。握った指は空を掴むばかりで下に落ちる。崩したバランスを立て直して追いかけるが全く追いつけず、二人はすぐに諦めて速度を緩めて立ち止まった。
「ばいばーい」理沙の勝ち誇ったような嬌声が響き渡る。
四人は、振り向いて大きく左手を振る姿を見送るしかなかった。
戻ってきた萌音が、頭を傾けて顎を上げた上から目線でみんなに言う。
「わたしたち無実だよ。今日は二人でたまプラーザに行ってたし。それに原チャリをパクった危ない場所にいつまでもいないって。そもそも自分らの持ってるのに、なんでパクんの」
「なんで原チャリって分かんだよ。バイクとしか言ってないのによ」春樹がすごむ。
たじろぐ様子もなく、炯眼で答える。
「わたしら単車乗んないもん。バイクって言ったら原チャリだけだから」
堂々たる顔色で語っていたが、ふと奈緒がスクーターのハンドルを見やると、様相が転じた。
「前と違うバイクだ」この子が呟く。
萌音は、テストで間違えた個所を他の生徒に見られまいとする生徒みたく、鍵穴を隠すように足をインナーレッグシールドに伸ばした。だが、少し動揺した雰囲気を醸しつつも、姿勢を変えただけだと言いたげにすぐに下ろす。そこには、カナダの国旗をプリントした透明のキーホルダーと怪獣のキーチェーンがついていた。
「とりあえず、警察署に来てもらおうぜ」春樹がスマホを取り出して続ける。「あと逃げても大丈夫なように、写真撮っておこう。こいつらですって言えんだろ。そしたら全国指名手配だ」
ほかの三人が、明るくなったスマホの画面に意識を奪われた瞬間だった。
「ほら出せ」理沙がスクーターの後ろにまたがって小さく叫ぶ。と同時に、春樹の持っていたスマホを下からたたき上げて落とす。
その瞬間、萌音がハンドルを回してエンジンをふかすと、ブレーキを放してすぐさま発進した。
「「ああっ」」四人が悲鳴を上げる。
すかさず男子二人が手を伸ばすがあとの祭り。握った指は空を掴むばかりで下に落ちる。崩したバランスを立て直して追いかけるが全く追いつけず、二人はすぐに諦めて速度を緩めて立ち止まった。
「ばいばーい」理沙の勝ち誇ったような嬌声が響き渡る。
四人は、振り向いて大きく左手を振る姿を見送るしかなかった。
0
あなたにおすすめの小説
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
鷹鷲高校執事科
三石成
青春
経済社会が崩壊した後に、貴族制度が生まれた近未来。
東京都内に広大な敷地を持つ全寮制の鷹鷲高校には、貴族の子息が所属する帝王科と、そんな貴族に仕える、優秀な執事を育成するための執事科が設立されている。
物語の中心となるのは、鷹鷲高校男子部の三年生。
各々に悩みや望みを抱えた彼らは、高校三年生という貴重な一年間で、学校の行事や事件を通して、生涯の主人と執事を見つけていく。
表紙イラスト:燈実 黙(@off_the_lamp)
黒に染まった華を摘む
馬場 蓮実
青春
夏の終わりに転校してきたのは、忘れられない初恋の相手だった——。
高須明希は、人生で“二番目”に好きになった相手——河西栞に密かに想いを寄せている。
「夏休み明けの初日。この席替えで、彼女との距離を縮めたい。話すきっかけがほしい——」
そんな願いを胸に登校したその朝、クラスに一人の転校生がやってくる。
彼女の名は、立石麻美。
昔の面影を残しながらも、まるで別人のような気配をまとう彼女は——明希にとって、忘れられない“初恋の人”だった。
この再会が、静かだった日常に波紋を広げていく。
その日の放課後。
明希は、"性の衝動"に溺れる自身の姿を、麻美に見られてしまう——。
塞がっていた何かが、ゆっくりと崩れはじめる。
そして鬱屈した青春は、想像もしていなかった熱と痛みを帯びて動き出す。
すべてに触れたとき、
明希は何を守り、何を選ぶのか。
光と影が交錯する、“遅れてきた”ひと夏の物語。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
【完結】メインヒロインとの恋愛フラグを全部ブチ壊した俺、サブヒロインと付き合うことにする
エース皇命
青春
《将来ヤンデレになるメインヒロインより、サブヒロインの方が良くね?》
16歳で自分が前世にハマっていた学園ドラマの主人公の人生を送っていることに気付いた風野白狼。しかしそこで、今ちょうどいい感じのメインヒロインが付き合ったらヤンデレであることを思い出す。
告白されて付き合うのは2か月後。
それまでに起こる体育祭イベント、文化祭イベントでの恋愛フラグを全てぶち壊し、3人の脈ありサブヒロインと付き合うために攻略を始めていく。
3人のサブヒロインもまた曲者揃い。
猫系ふわふわガールの火波 猫音子に、ツンデレ義姉の風野 犬織、アニオタボーイッシュガールの空賀 栗涼。
この3人の中から、最終的に誰を選び、付き合うことになるのか。てかそもそも彼女たちを落とせるのか!?
もちろん、メインヒロインも黙ってはいない!
5人の癖強キャラたちが爆走する、イレギュラーなラブコメ、ここに誕生!
※カクヨム、小説家になろうでも連載中!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる