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一年生の二学期
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奈緒の顔をのぞき込んで語り続ける。
「だって、かおりのステップ見ていて、あれだけのアイソレーションが出来るから、小さな動きでもダイナミックに格好良く見せられるんだって思うでしょ。成瀬さんだって真似して首を動かしてみたりしていたじゃない。やってみてリズムにのれたらどれだけ楽しいかか分かったっていう笑顔見せてくれたじゃない。それでもナナたちが厳しくしすぎて耐えられそうもない時はわたしが言って、教え方を優しく変えてもらったりしたでしょ。変えてくれたってことは、悪意がないって証拠。ずっとバウンズだけじゃつまらなくなっちゃうかもしれないけれど、他のことはなんにも考えずに音楽にのることに集中できれば、きっと楽しいと思えるよ。いろいろしてみたいって気持ちは分かるけれど、どれも中途半端にしかできないものを披露するよりも、完璧に出来るものを一つ披露するほうが、成瀬さんのためにも見に来てくれた人たちのためにもいいんじゃないかな。応援してくれた人たちにもこれだけのことが出来ました、ありがとうございましたっていうダンスを披露できるほうが、すてきだと思うよ」
大いに敷衍された話を聞きながら、ところどころで奈緒が頷く。そしてしばらくして、おもむろに話し始めた。
「わたしが 言いすぎたと 思う。音 楽 に のるのが楽しくて、みんな みたいに 踊り たいって 調子に乗っちゃった。わたしは ば か だ か ら、みんなを見ていて わ た し も 踊 れる ようになれるって 勘違い した。“ういっぷす”がかっこ よ くって、わ た しは、“ういっぷす”の“めんばあ”になって みんなに “おどれ”を 見せ るんだって、興奮しちゃったから、間違えて しまい ました。わたしは もう みんな みたいな 日常は送れないって 知って い た のに 忘 れて。本当は、くるくる回るなんてこと出来ないのにね。バカでした。よくよく 考えたら、わたし出来ません でした。だから、教えてくれた“バズズンズ”だけで 満足でした。それをマスターして お披露目すれば よかった。でも 残念。もう少し 踊れるようになりたかった から。でももういいです。ナナちゃんたちが迷惑 なら、もう踊らない。発表会もいい。三人で踊って。わたしがいると 迷惑になるから、ごめんなさい。もう これで いいです。楽しかったです。ありがとう ございました」
お辞儀をしたあと顔を上げて魚子を見上げた。その瞳には弱弱し憧憬の念が込められているように見える。
瞳の先の女子は黙って表情を変えず、冷ややかな視線を送り返すばかりで、何も答えてはくれなかった。
「だって、かおりのステップ見ていて、あれだけのアイソレーションが出来るから、小さな動きでもダイナミックに格好良く見せられるんだって思うでしょ。成瀬さんだって真似して首を動かしてみたりしていたじゃない。やってみてリズムにのれたらどれだけ楽しいかか分かったっていう笑顔見せてくれたじゃない。それでもナナたちが厳しくしすぎて耐えられそうもない時はわたしが言って、教え方を優しく変えてもらったりしたでしょ。変えてくれたってことは、悪意がないって証拠。ずっとバウンズだけじゃつまらなくなっちゃうかもしれないけれど、他のことはなんにも考えずに音楽にのることに集中できれば、きっと楽しいと思えるよ。いろいろしてみたいって気持ちは分かるけれど、どれも中途半端にしかできないものを披露するよりも、完璧に出来るものを一つ披露するほうが、成瀬さんのためにも見に来てくれた人たちのためにもいいんじゃないかな。応援してくれた人たちにもこれだけのことが出来ました、ありがとうございましたっていうダンスを披露できるほうが、すてきだと思うよ」
大いに敷衍された話を聞きながら、ところどころで奈緒が頷く。そしてしばらくして、おもむろに話し始めた。
「わたしが 言いすぎたと 思う。音 楽 に のるのが楽しくて、みんな みたいに 踊り たいって 調子に乗っちゃった。わたしは ば か だ か ら、みんなを見ていて わ た し も 踊 れる ようになれるって 勘違い した。“ういっぷす”がかっこ よ くって、わ た しは、“ういっぷす”の“めんばあ”になって みんなに “おどれ”を 見せ るんだって、興奮しちゃったから、間違えて しまい ました。わたしは もう みんな みたいな 日常は送れないって 知って い た のに 忘 れて。本当は、くるくる回るなんてこと出来ないのにね。バカでした。よくよく 考えたら、わたし出来ません でした。だから、教えてくれた“バズズンズ”だけで 満足でした。それをマスターして お披露目すれば よかった。でも 残念。もう少し 踊れるようになりたかった から。でももういいです。ナナちゃんたちが迷惑 なら、もう踊らない。発表会もいい。三人で踊って。わたしがいると 迷惑になるから、ごめんなさい。もう これで いいです。楽しかったです。ありがとう ございました」
お辞儀をしたあと顔を上げて魚子を見上げた。その瞳には弱弱し憧憬の念が込められているように見える。
瞳の先の女子は黙って表情を変えず、冷ややかな視線を送り返すばかりで、何も答えてはくれなかった。
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