129 / 378
一年生の二学期
🎀
しおりを挟む
奈緒は首を横に振った。
魚子が瞬息、息を吸う。
「そうだよね、本来だったら学業は学力にあった別の高校でやればいいだけだし、ダンスは習いに行けばいいだけなんだから。それなのに色々なハンデもらって、その上そこに加えて、この交流会でしょ、それじゃあ呆れてもの言えないよ。そこまでしなくてもって思うよ。これじゃあ誰も応援してくれないよね、だってひいきされすぎているあんたを外すほうに正当性があるんだから。そうじゃないと不公平だしバランスとれないじゃん。先生の話で勢いづいた生徒たちがだんまりなのも反論できないからだよ。支援だのボランティアだのって、余裕がある人が出来ることだけど、みんな部活や勉強で余裕ない。地域交流会だって授業の一環なんだから、これで点稼ぎたい子だっているんだよ。課外授業で内申よくしてでも大学受験有利にしたいの。それなのに点が稼げる身障者支援に関われてんのはあたしらだけ。しかも支援されているあんたは、もともと甘く査定されて補習三昧でおんぶにだっこ状態でしょ。あえて援助する必要ないもんね。だってあたしらより条件いいんだし、赤点取ったって卒業できるだろうしね。あの手この手を使ってもらってさ」
静かに聞いていた杏奈が、奈緒の背中をさすって言った。
「成瀬さんだって分かってるよね。ナナたちが教えてくれること、とても感謝しているもんね。日頃からそう言っているものね」
言っていないと言いたげに首を傾げた奈緒を気にする様子でもなく、発言を続ける。
「鍵はわたしと成瀬さんで閉めておくから、みんなは先に帰っていいよ。もう遅いし、気を付けてね。わたしは成瀬さんを送っていく」
そう言ってウィップスを見送った杏奈が、足音が去るのを待ってから、菜緒の双眸をのぞき込んで語る。
「もう少しの辛抱だからね。なんだかんだ言われたって、格好よくダンス披露出来たら、それで勝ちなんだから」
「で も、 “バンズル”だけで踊れない」
泣きべそをかいて恐る恐る瞳を向けるこの子の心配を否定するかのように、杏奈がにっこりと天使のように微笑む。
「バウンズね。大丈夫だから、音楽にノッてバウンズするだけで踊っているように見える。それに、成瀬さんが格好悪く見えないようにしてって、わたしからみんなにちゃんと頼んであるから安心して。わたし、魚子のスパルタで成瀬さんが傷ついていること気がついていたけど、あえて黙ってた。あと少しなにかが変われば、成瀬さん飛躍的に上手くなれるって思ったから。今振り返ってそれ間違っていなかったって思う。わたし言ったでしょう。成瀬さんのことヒロインにしてあげるって。あなたもうすぐヒロインになれるのよ。だから自信をもって。あと少し、そしたらスポットライト浴びて、ダンス披露して、みんなが拍手を送ってくれるんだからね。ほら笑って。ね。なによりガンバだよ」
それを聞いて、奈緒は恥ずかしそうに笑った。
魚子が瞬息、息を吸う。
「そうだよね、本来だったら学業は学力にあった別の高校でやればいいだけだし、ダンスは習いに行けばいいだけなんだから。それなのに色々なハンデもらって、その上そこに加えて、この交流会でしょ、それじゃあ呆れてもの言えないよ。そこまでしなくてもって思うよ。これじゃあ誰も応援してくれないよね、だってひいきされすぎているあんたを外すほうに正当性があるんだから。そうじゃないと不公平だしバランスとれないじゃん。先生の話で勢いづいた生徒たちがだんまりなのも反論できないからだよ。支援だのボランティアだのって、余裕がある人が出来ることだけど、みんな部活や勉強で余裕ない。地域交流会だって授業の一環なんだから、これで点稼ぎたい子だっているんだよ。課外授業で内申よくしてでも大学受験有利にしたいの。それなのに点が稼げる身障者支援に関われてんのはあたしらだけ。しかも支援されているあんたは、もともと甘く査定されて補習三昧でおんぶにだっこ状態でしょ。あえて援助する必要ないもんね。だってあたしらより条件いいんだし、赤点取ったって卒業できるだろうしね。あの手この手を使ってもらってさ」
静かに聞いていた杏奈が、奈緒の背中をさすって言った。
「成瀬さんだって分かってるよね。ナナたちが教えてくれること、とても感謝しているもんね。日頃からそう言っているものね」
言っていないと言いたげに首を傾げた奈緒を気にする様子でもなく、発言を続ける。
「鍵はわたしと成瀬さんで閉めておくから、みんなは先に帰っていいよ。もう遅いし、気を付けてね。わたしは成瀬さんを送っていく」
そう言ってウィップスを見送った杏奈が、足音が去るのを待ってから、菜緒の双眸をのぞき込んで語る。
「もう少しの辛抱だからね。なんだかんだ言われたって、格好よくダンス披露出来たら、それで勝ちなんだから」
「で も、 “バンズル”だけで踊れない」
泣きべそをかいて恐る恐る瞳を向けるこの子の心配を否定するかのように、杏奈がにっこりと天使のように微笑む。
「バウンズね。大丈夫だから、音楽にノッてバウンズするだけで踊っているように見える。それに、成瀬さんが格好悪く見えないようにしてって、わたしからみんなにちゃんと頼んであるから安心して。わたし、魚子のスパルタで成瀬さんが傷ついていること気がついていたけど、あえて黙ってた。あと少しなにかが変われば、成瀬さん飛躍的に上手くなれるって思ったから。今振り返ってそれ間違っていなかったって思う。わたし言ったでしょう。成瀬さんのことヒロインにしてあげるって。あなたもうすぐヒロインになれるのよ。だから自信をもって。あと少し、そしたらスポットライト浴びて、ダンス披露して、みんなが拍手を送ってくれるんだからね。ほら笑って。ね。なによりガンバだよ」
それを聞いて、奈緒は恥ずかしそうに笑った。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
坊主頭の絆:学校を変えた一歩【シリーズ】
S.H.L
青春
高校生のあかりとユイは、学校を襲う謎の病に立ち向かうため、伝説に基づく古い儀式に従い、坊主頭になる決断をします。この一見小さな行動は、学校全体に大きな影響を与え、生徒や教職員の間で新しい絆と理解を生み出します。
物語は、あかりとユイが学校の秘密を解き明かし、新しい伝統を築く過程を追いながら、彼女たちの内面の成長と変革の旅を描きます。彼女たちの行動は、生徒たちにインスピレーションを与え、更には教師にも影響を及ぼし、伝統的な教育コミュニティに新たな風を吹き込みます。
夏の決意
S.H.L
青春
主人公の遥(はるか)は高校3年生の女子バスケットボール部のキャプテン。部員たちとともに全国大会出場を目指して練習に励んでいたが、ある日、突然のアクシデントによりチームは崩壊の危機に瀕する。そんな中、遥は自らの決意を示すため、坊主頭になることを決意する。この決意はチームを再び一つにまとめるきっかけとなり、仲間たちとの絆を深め、成長していく青春ストーリー。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
男子中学生から女子校生になった僕
葵
大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。
普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。
強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる