FRIENDS

緒方宗谷

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一年生の二学期

🍭

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「物が違うでしょ。なにあれ」
南が指さした方向を見やるみんなに続けた。
「白くて青い絵が描いてある瀬戸物なんて、普通ないでしょ」
「瀬戸物は瀬戸で焼いたものなんじゃねーの?」春樹が問う。
「同じ陶器でしょ」
 そう言い返す南に、杏奈が教えた。
「あれ磁器だよ。お皿も花瓶も壺も。まあ、どれも同じ見た目だから分かると思うけど」
「うん。陶器には見えないよね」務が付け加える。
 恥をかいて言葉に詰まる南は、自分を笑うみんなの思考をそらせるように言った。
「それにしても、チラシに載ってるマンションみたいな家だね。ピアノまであるし、壁紙とかフローリングとか、普通と全然違う。ドア一つとっても彫刻あるし、ノブにも模様あるし、来た時もみんなで驚いたんだよ、レンガ造りだって。普通、それふうなの貼っただけじゃん。レンガ調とか木目調とかタイル調とかさ。本物でしょ?」 
 杏奈が頷く。
「うん、本物のレンガ積み。でも表面だけで、家そのものは確か鉄筋コンクリートだったかな? よく知らないけど」
 みんながソファに腰かけるのを見届けてから隣のダイニングへと向かう杏奈に、南が声をかけ続ける。
「暖炉あるってすごいよね。生暖炉初めて見た」
「なんだよ、生暖炉って」春樹が再びつっこむ。
 ティーポットとリーフを用意しながら、杏奈が答えた。
「本物じゃないの。マントルピースだけあって、煙突はなし。ストーブ置き場って感じかな」
「じゃあ、ほんとには薪焚けないの?」南が残念そうに言った。
「焚いたら大変。ただくぼんでいるだけだから、煙で家中が充満しちゃうよ」
「へぇ、てことは、本当に装飾目的のためだけのデザインか。余計にすごい」
「うちなんて、ストーブぽんだよ」奈緒が何気に呟く。
「どこもそうだよね」務が答えた。
 杏奈が、タッセルを広げたようなアラベスク模様のクラシックな白いハンドルトレイにティーセットを乗せて戻ってきた。
「今はかたしていてないんだけど、ほんとは灯油ストーブがあるの」
「甲冑みたいな薪ストーブってやつだよね」務が笑って言うと、南が眉をひそめて「そんな重そうなものかたすなんて、気が知れない」と続けた。
 すぐさま春樹が身を乗り出す。
「そんなことより、なんでつっちー知ってんだよ」
「何度か来たことあるから。委員会のことで」
 レリーフが施されたローテーブルにティーセットを置くと、杏奈がつけんどんに声を発する。
「高木君には関係ないでしょ」
「なんでストーブないの?」南が訊く。
「ハロウィンのための飾りつけをするのよ」
「暖炉の中に? へぇ、すごい。ヨーロッパのクリスマスみたい」
「ハロウィンだっつってんのに」春樹がすかさず言葉でぴしゃり。
「うるさいなぁ」
「もう食べま しょ う よ。焼き立てパンが 台無しよ」と奈緒に怒られて、二人は黙った。


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