FRIENDS

緒方宗谷

文字の大きさ
上 下
76 / 419
一年生の二学期

🐿️

しおりを挟む
 リビングに通された直後に南が足を止め、喜々として声を上げる。
「そうそう、そうだよ。お土産だって買ってきたんだから」
 その言葉に合わせて奈緒が、キルト製の茶色いてさげと一緒に持っていた可愛いお地蔵さんの絵が白線で描かれた紺色のトートバッグから紙袋を出して持ち上げる。
「来る 時に、かわ い い パン屋さん を 見つ け て 買ったの。みんなで 食べ ようと 思って」
 南が速攻で付け加えた。
「いろいろ買ったんだよ。すっごいおいしそうでさ。成瀬なんてとてもはしゃいで、ウサギみたいに飛び跳ねてた」
「絶対においしい」
 杏奈が紙袋を見やる。
「知ってる。わたしのうち、朝は必ずあのパン屋さんの食パンだから」
「食パンいいなぁ」奈緒がとろけた声を発して、夢見る少女のようにまどろむ。
 南が奈緒に言った。
「食パンでそう思えるなんて、幸せな少女だなあ」
「帰りに買おー」
「無理だと思う。すぐ売り切れちゃうから」と安奈。
 無感情に教える姿に、南が威容をつかれたような表情を浮かべる。
「そうなの? 確かにわたしたちも並んだ」
「まさかそれで遅刻?」ハッとして顔を上げ、杏奈が訊く。
「そう」と笑って「でもいいの」と、奈緒が開き直った。
 甘いものは無敵、とでも言いたげな顔にみんなが吹き出す。
 歩みを再開してすぐ、南が騒ぐ。
「ソファ、革張りじゃん。色がなんかアンティーク。座っていいものなの?」
「当たり前じゃない」杏奈が答える。「そのためのソファなんだから」
 恐る恐る座って、南が部屋を見渡した。
「調度品がある家って初めて見た。ほんとに置いてある家あるんだね。テレビの中だけかと思った。丸い絵まで壁にかかってるし」
 そう言いながら、ピアノと、その向こうに飾られたトンドの絵画を指さす。
「どこにでもあるでしょ。玄関とか、なにかしら置いてあるんじゃない?」杏奈が突き放すように言い放つ。



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?

九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。 で、パンツを持っていくのを忘れる。 というのはよくある笑い話。

処理中です...