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一年生の二学期
🐿️
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リビングに通された直後に南が足を止め、喜々として声を上げる。
「そうそう、そうだよ。お土産だって買ってきたんだから」
その言葉に合わせて奈緒が、キルト製の茶色いてさげと一緒に持っていた可愛いお地蔵さんの絵が白線で描かれた紺色のトートバッグから紙袋を出して持ち上げる。
「来る 時に、かわ い い パン屋さん を 見つ け て 買ったの。みんなで 食べ ようと 思って」
南が速攻で付け加えた。
「いろいろ買ったんだよ。すっごいおいしそうでさ。成瀬なんてとてもはしゃいで、ウサギみたいに飛び跳ねてた」
「絶対においしい」
杏奈が紙袋を見やる。
「知ってる。わたしのうち、朝は必ずあのパン屋さんの食パンだから」
「食パンいいなぁ」奈緒がとろけた声を発して、夢見る少女のようにまどろむ。
南が奈緒に言った。
「食パンでそう思えるなんて、幸せな少女だなあ」
「帰りに買おー」
「無理だと思う。すぐ売り切れちゃうから」と安奈。
無感情に教える姿に、南が威容をつかれたような表情を浮かべる。
「そうなの? 確かにわたしたちも並んだ」
「まさかそれで遅刻?」ハッとして顔を上げ、杏奈が訊く。
「そう」と笑って「でもいいの」と、奈緒が開き直った。
甘いものは無敵、とでも言いたげな顔にみんなが吹き出す。
歩みを再開してすぐ、南が騒ぐ。
「ソファ、革張りじゃん。色がなんかアンティーク。座っていいものなの?」
「当たり前じゃない」杏奈が答える。「そのためのソファなんだから」
恐る恐る座って、南が部屋を見渡した。
「調度品がある家って初めて見た。ほんとに置いてある家あるんだね。テレビの中だけかと思った。丸い絵まで壁にかかってるし」
そう言いながら、ピアノと、その向こうに飾られたトンドの絵画を指さす。
「どこにでもあるでしょ。玄関とか、なにかしら置いてあるんじゃない?」杏奈が突き放すように言い放つ。
「そうそう、そうだよ。お土産だって買ってきたんだから」
その言葉に合わせて奈緒が、キルト製の茶色いてさげと一緒に持っていた可愛いお地蔵さんの絵が白線で描かれた紺色のトートバッグから紙袋を出して持ち上げる。
「来る 時に、かわ い い パン屋さん を 見つ け て 買ったの。みんなで 食べ ようと 思って」
南が速攻で付け加えた。
「いろいろ買ったんだよ。すっごいおいしそうでさ。成瀬なんてとてもはしゃいで、ウサギみたいに飛び跳ねてた」
「絶対においしい」
杏奈が紙袋を見やる。
「知ってる。わたしのうち、朝は必ずあのパン屋さんの食パンだから」
「食パンいいなぁ」奈緒がとろけた声を発して、夢見る少女のようにまどろむ。
南が奈緒に言った。
「食パンでそう思えるなんて、幸せな少女だなあ」
「帰りに買おー」
「無理だと思う。すぐ売り切れちゃうから」と安奈。
無感情に教える姿に、南が威容をつかれたような表情を浮かべる。
「そうなの? 確かにわたしたちも並んだ」
「まさかそれで遅刻?」ハッとして顔を上げ、杏奈が訊く。
「そう」と笑って「でもいいの」と、奈緒が開き直った。
甘いものは無敵、とでも言いたげな顔にみんなが吹き出す。
歩みを再開してすぐ、南が騒ぐ。
「ソファ、革張りじゃん。色がなんかアンティーク。座っていいものなの?」
「当たり前じゃない」杏奈が答える。「そのためのソファなんだから」
恐る恐る座って、南が部屋を見渡した。
「調度品がある家って初めて見た。ほんとに置いてある家あるんだね。テレビの中だけかと思った。丸い絵まで壁にかかってるし」
そう言いながら、ピアノと、その向こうに飾られたトンドの絵画を指さす。
「どこにでもあるでしょ。玄関とか、なにかしら置いてあるんじゃない?」杏奈が突き放すように言い放つ。
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