愛するということ

緒方宗谷

文字の大きさ
128 / 192
41.えっち

1.唯一無二

しおりを挟む
 島根は、自分の心境の変化をびっくりして見つめていた。目の前には、大きなラッフルのついたブラウスを脱いでブラジャーを外した美由紀がいる。着痩せするタイプなのか、とてもいい形の想像より素敵な丸みのある胸だ。
 リモコンで照明を小に落として、美由紀は島根にキスをした。手を取って自分の胸に重ねさせる。とてもさらりとした肌質。島根も拒むことなく唇で応え、弾けるような胸の柔らかい膨らみに触れた。
 だが、島根の興奮は表面的だった。何故だろうか。美由紀はとてもいい女だった。友達だったから、今まで性的な関係を持ったことはない。だが、友達でなく飲み会で知り合ったとしたのなら、間違いなく抱いていただろう。
 今まで付き合った女は5人、付き合うまで至らなかったのは6人。だから、知っている女は11人だ。積極的な女はいた。だが、ここまでねちっこいキスをする女はいなかった。
 島根は、彩絵のことを考えていた。今正に下半身が反応している。だが、この反応は美由紀に対してではない。想像する彩絵の姿に対してだった。
 不思議だ。もともと彩絵に性的な魅力を感じたことは無かった。初めて抱いたあの日、全く反応しなくて、恐怖と見まがうほどの焦りを感じたのを思い出した。正直言って、想像を超える彩絵の幼児体型に、性的興奮は萎えてしまったのだ。
 初めて抱く女性に対しては、特別な興奮がある。初めて見る表情、初めて聞く声、着飾った洋服脱いだ姿を見て、いつもと違う彼女に言い知れぬ感情をいだく。
 だが、彩絵には感じなかった。そればかりか罪悪感に苛まれた。もう大人なのだから問題ないのだが、本当に子供のような体をしている。島根は目を瞑って、必死に魅力の感じることを考えていた。
 最近の可愛い女優さんとかアイドルとかの魅力的な姿や、彼女らと一緒にいる自分を想像して、何とか自分を励まし続ける。
 彩絵は、とても優しく長い時間をかけて触れてくれる島根に、うっとりと身を任せていた。もともと、愛でる時間の長い島根であったが、いつもの3倍くらいの時間をかけて、指で、舌で、彩絵の柔肌を慈しんだ。
 実は元気にならなかったのだ。元気になるまでの時間稼ぎに、島根は長い時間をかけて優しく触れていたに過ぎない。
 だがどういうことだろうか、やっとこさっとこ元気にさせて、十分潤った彩絵に身を沈めると、彼女に対してとてつもない愛おしさが溢れてきた。
 姿かたちへのこだわりは無に帰し、ただただ自分を感じてくれる彩絵が可愛らしく見える。
 もともと、今までの彼女に対しても感じていた感情だ。その延長線で彼女に気持ち良くなってほしい、と願った。そうであることが最大の望みだった。
 彩絵に対して強く欲している。そう思うと更に欲する気持ちが強くなった。もともと彩絵に対してそんな感覚は持ち合わせていなかったから、その変化がとても衝撃的で印象的だった。
 今までの一夜の中で、彩絵を初めて抱いた夜ほど、自分の感情に影響を与えた経験はない。
 悩ましいポーズで島根に体重をかける美由紀は、彼のベルトを乱雑にはずす。お互い既に我慢できない状態だった。美由紀はすぐにでも一つになってしまいたくて、ガウチョを脱ごうとする。
「きゃ」高い声が響く。
 島根は勢いよく、彼女の向こうにあるベッドに美由紀を押し倒して、両手を押さえた。濃厚なキスを何十秒かして、そして言った。

 何故だろうか。その言葉一つで、美由紀は島根が好きになった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

離した手の温もり

橘 凛子
恋愛
3年前、未来を誓った君を置いて、私は夢を追いかけた。キャリアを優先した私に、君と会う資格なんてないのかもしれない。それでも、あの日の選択をずっと後悔している。そして今、私はあの場所へ帰ってきた。もう一度、君に会いたい。ただ、ごめんなさいと伝えたい。それだけでいい。それ以上の願いは、もう抱けないから。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

灰かぶりの姉

吉野 那生
恋愛
父の死後、母が連れてきたのは優しそうな男性と可愛い女の子だった。 「今日からあなたのお父さんと妹だよ」 そう言われたあの日から…。 * * * 『ソツのない彼氏とスキのない彼女』のスピンオフ。 国枝 那月×野口 航平の過去編です。

あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜

瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。 まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。 息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。 あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。 夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで…… 夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。

悪女と呼ばれた王妃

アズやっこ
恋愛
私はこの国の王妃だった。悪女と呼ばれ処刑される。 処刑台へ向かうと先に処刑された私の幼馴染み、私の護衛騎士、私の従者達、胴体と頭が離れた状態で捨て置かれている。 まるで屑物のように足で蹴られぞんざいな扱いをされている。 私一人処刑すれば済む話なのに。 それでも仕方がないわね。私は心がない悪女、今までの行いの結果よね。 目の前には私の夫、この国の国王陛下が座っている。 私はただ、 貴方を愛して、貴方を護りたかっただけだったの。 貴方のこの国を、貴方の地位を、貴方の政務を…、 ただ護りたかっただけ…。 だから私は泣かない。悪女らしく最後は笑ってこの世を去るわ。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ ゆるい設定です。  ❈ 処刑エンドなのでバットエンドです。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

君に何度でも恋をする

明日葉
恋愛
いろいろ訳ありの花音は、大好きな彼から別れを告げられる。別れを告げられた後でわかった現実に、花音は非常識とは思いつつ、かつて一度だけあったことのある翔に依頼をした。 「仕事の依頼です。個人的な依頼を受けるのかは分かりませんが、婚約者を演じてくれませんか」 「ふりなんて言わず、本当に婚約してもいいけど?」 そう答えた翔の真意が分からないまま、婚約者の演技が始まる。騙す相手は、花音の家族。期間は、残り少ない時間を生きている花音の祖父が生きている間。

隣の夫婦 ~離婚する、離婚しない、身近な夫婦の話

紫ゆかり
恋愛
オムニバス形式です。 理解し合って結婚したはずの梓、同級生との再会が思わぬことになる雅美、年下の夫のかつての妻に引け目を感じる千晴、昔の恋の後悔から前向きになれない志織。 大人の女性のストーリーです。

処理中です...