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40.近藤美由紀の島根略奪プロジェクト
3.深層心理
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島根隆弘はとても素晴らしい人だ。彩絵にとって、これほどまでに純粋に愛を注いでくれた人は、両親以外にいない。
背が低くて童顔であった彩絵は、小ばかにされたり見下されたりすることが多かった。可愛いと口では言っていても、その本質は力がなく明らかに格下だと思われる相手に対していだく、優越感からくるものだった。
彩絵はそれを見透かしていて、とても不愉快に思っていた。希にいる自分に興味を持つ男はロリコンばかり。しかも、抵抗されずに汚らわしい性癖を満たすことが出来る、と思っているかのような、おどろおどろしさが見え隠れする。
だが島根は違う。初めて会った時の驚いた様子は、運命の子猫に出会って喜びに満ちた子供の様だった。吸い込まれるように彩絵を見つめていた。彼の中で全細胞に組み込まれた父性のスイッチが、瞬く間に軽やかにテンポよく押されていくのが、見ていた彩絵にも分かった。
当時の彩絵は、島根のことを可笑しな人だと思った程度だったが、振り返ると、当時と今は大分違う印象を覚える。
くすみが混じる隙もない純粋な愛情が湧き出す島根の胸の内を慮ると、子供にならざるを得ない。彩絵があれ程脱したかった童顔幼児体型。島根と一緒に過ごすようになって、初めて肯定的に見ることが出来るようになった。
確かに普通の恋人同士とは違うかもしれない。彩絵の感覚としては、お父さんが大好きな娘の様だった。正確には娘が大好きなお父さんのために親孝行をしている、お父さんが大好きな娘だ。
島根は、演技を含まない正真正銘の体操のお兄さんの様だ。来る日も来る日も手取り足取り彩絵を可愛がった。愛情を注がずにはいられない様子だった。
栄養満点の料理を作り、勉強を教えてあげ、色々なところにも連れて行ってあげた。曇りのない眼で彩絵を見ていたし、彩絵も瞳を見開いて島根の黒目の奥を探り、愛情が本物でることを確信していた。
本当の子供好きが注いでくれる島根の無償の愛情は、両親から受けた愛情に似ている。下劣な欲望を満たすがためだけに人を騙し欺く欺瞞に満ちた笑顔の片鱗など微塵も含まない。何も見返りは欲していない。彩絵の喜ぶ顔だけを求めているようだった。
恋愛感情をいだく前から、彩絵の心の内には、とある感情が芽生えていた。
(もし、私が島根さんの子供を生んだら、今の私を可愛がるように、きっと私達の赤ちゃんも可愛がってくれる)
すくすくと育っていくその想像を想い起こすたびに、何か不思議な気持ちになれた。暖かくて心地よい揺り籠の中にいるような気持ちだった。
だが今は、そこから放り出されたような気持ちだ。温もりを求める赤子の様にどんなに泣き叫んでも、誰も来ない。部屋には誰もいない。家にも誰もいない。声すら誰にも届いていないように思えて覚える不安感。もう二度と温もりに包まれることはないのかもしれないという絶望が頭をもたげる。
(たっちゃんに会いたい、たっちゃんに抱きしめてほしい)
深層心理の更に奥底に育っていた感情が、止めどなく溢れだしていた。それは恋愛感情をも超えるものだった。
背が低くて童顔であった彩絵は、小ばかにされたり見下されたりすることが多かった。可愛いと口では言っていても、その本質は力がなく明らかに格下だと思われる相手に対していだく、優越感からくるものだった。
彩絵はそれを見透かしていて、とても不愉快に思っていた。希にいる自分に興味を持つ男はロリコンばかり。しかも、抵抗されずに汚らわしい性癖を満たすことが出来る、と思っているかのような、おどろおどろしさが見え隠れする。
だが島根は違う。初めて会った時の驚いた様子は、運命の子猫に出会って喜びに満ちた子供の様だった。吸い込まれるように彩絵を見つめていた。彼の中で全細胞に組み込まれた父性のスイッチが、瞬く間に軽やかにテンポよく押されていくのが、見ていた彩絵にも分かった。
当時の彩絵は、島根のことを可笑しな人だと思った程度だったが、振り返ると、当時と今は大分違う印象を覚える。
くすみが混じる隙もない純粋な愛情が湧き出す島根の胸の内を慮ると、子供にならざるを得ない。彩絵があれ程脱したかった童顔幼児体型。島根と一緒に過ごすようになって、初めて肯定的に見ることが出来るようになった。
確かに普通の恋人同士とは違うかもしれない。彩絵の感覚としては、お父さんが大好きな娘の様だった。正確には娘が大好きなお父さんのために親孝行をしている、お父さんが大好きな娘だ。
島根は、演技を含まない正真正銘の体操のお兄さんの様だ。来る日も来る日も手取り足取り彩絵を可愛がった。愛情を注がずにはいられない様子だった。
栄養満点の料理を作り、勉強を教えてあげ、色々なところにも連れて行ってあげた。曇りのない眼で彩絵を見ていたし、彩絵も瞳を見開いて島根の黒目の奥を探り、愛情が本物でることを確信していた。
本当の子供好きが注いでくれる島根の無償の愛情は、両親から受けた愛情に似ている。下劣な欲望を満たすがためだけに人を騙し欺く欺瞞に満ちた笑顔の片鱗など微塵も含まない。何も見返りは欲していない。彩絵の喜ぶ顔だけを求めているようだった。
恋愛感情をいだく前から、彩絵の心の内には、とある感情が芽生えていた。
(もし、私が島根さんの子供を生んだら、今の私を可愛がるように、きっと私達の赤ちゃんも可愛がってくれる)
すくすくと育っていくその想像を想い起こすたびに、何か不思議な気持ちになれた。暖かくて心地よい揺り籠の中にいるような気持ちだった。
だが今は、そこから放り出されたような気持ちだ。温もりを求める赤子の様にどんなに泣き叫んでも、誰も来ない。部屋には誰もいない。家にも誰もいない。声すら誰にも届いていないように思えて覚える不安感。もう二度と温もりに包まれることはないのかもしれないという絶望が頭をもたげる。
(たっちゃんに会いたい、たっちゃんに抱きしめてほしい)
深層心理の更に奥底に育っていた感情が、止めどなく溢れだしていた。それは恋愛感情をも超えるものだった。
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