Toward a dream 〜とあるお嬢様の挑戦〜

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第二章 勝負の三年間 一年生編

第三十八話 驚異の新入生

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 「前線へ出せ!」


 北東学園高校の監督が叫ぶように言葉を飛ばす。彼の声を聞き、北東学園高校の選手が長いボールを前線へ出そうと右足でボールを当てた。

 ボールは浮き上がる。しかし、すぐに跳ね返る。

 
 「ナイスディフェンス!」


 舞子の声。

 それからすぐに、北東学園高校の選手はもう一度、右足でボールを当てる。

 ボールは浮き上がり、今度は綾乃から見て右へ。綾乃はボールの行方を目で追いながら駆け出す。

 すると、次の瞬間。


 「ゴール前を固めろ!」


 今度は宮城の叫ぶような声。綾乃は一瞬だけ視線を宮城へ。それからすぐに、ボールは人工芝へと向かい始める。

 落下地点には両校の選手。塊となり、ボールを待つ。

 残り時間は少ない。

 その状況が両校の選手に更なる緊張感を与える。

 このワンプレー。

 それが大きな影響を与える。



 「来るぞ!」


 北東学園高校の監督が叫ぶ。



 「奪わせるな!」


 宮城が叫ぶ。



 残り時間は。



 「もう時間がないぞ!打て!」



 声の主は北東学園高校の監督。

 同時に、綾乃の目にはボールを右足で収めた北東学園高校の選手。

 残り時間は僅か数秒。

 
 ボールを持った選手に舞子がつく。

 同時に。


 「ゴール前!」


 瑞穂が叫びながらゴール前へ走る。

 それからすぐ、ボールが放たれた。


 まっすぐの軌道のボールは瑞穂の右腕のすぐ近くを通過。そして、枠を捉える。

 瑞穂は走りながら悔しそうにボールの行方を目で追う。

 観衆は立ち上がる。

  
 健実は左へ横っ跳び。

 同時に、北東学園高校の選手がゴール前へ詰める。

 ボールは健実の右手に当たり、彼女から見て、左斜めへ転がる。そのボールに反応した北東学園高校の選手が右足で合わせる。

 
 これが後半ラストプレー。


 ボールは健実の頭上を越える。健実は腕を伸ばすが、届かない。

 この時、健実は何かを悟る。

 同時に、北東学園高校の応援スタンドは総立ち。


 舞子は鬼の形相でゴール前へ走る。

 並走するように瑞穂も。

 
 すると、次の瞬間。



 「来てるぞ!」


 北東学園高校の監督が声を荒げる。

 彼の視線の先には…。



 「十八番が来てるぞ!」


 いつの間にかゴール前に回り込んでいた綾乃の姿が。

 舞子と瑞穂は驚くように口を小さく開く。


 
 北東学園高校の監督が更に声を荒げる。それから間もなくして、宮城の声が。



 「ボールは生きてるぞ!拾え!」


 声を荒げ、タッチラインのすぐ手前まで行く勢いで歩を進め、ボールを指さす宮城。

 ゴール前で何か凄い光景を見たかのように直立不動になる健実。
 
 ボールはタッチライン方向へ流れる。そのボールを瑞穂が追いかける。彼女の後ろを走る北東学園高校の選手。

 
 「クリア!」


 次の瞬間、舞子が叫ぶ。

 彼女の声に続くようにボールを蹴る音が。

 弧を描くようにボールは北東学園高校陣地内へ。

 ボールを追う北東学園高校の選手。

 それから間もなくして。



 「ピーッ!」


 ホイッスルが鳴り響くと同時に、スタンドから歓声と拍手が沸き起こる。 

 宮城は腕を組み、息をつく。視線の先には一人の選手の元へ集まる舞子達の姿。



 「綾乃ちゃん!」


 笑顔で綾乃に抱きつく舞子。普段見ることのない先輩の姿に若干驚く綾乃。しかし、その表情の中には笑顔が。

 しばらくすると、綾乃の足元がふらつく。そして、ピッチへ膝をつく。


 「だ、大丈夫!?」


 健美が心配そうに声を掛ける。彼女の言葉になんとか作った笑顔で「大丈夫です…」と答えた綾乃。

 綾乃のその姿を見て、舞子が言う。


 「驚異の新入生だよ、まったく…」


 笑顔を浮かべる舞子。

 綾乃は彼女の言葉に、照れるように首を横に振る。

 そして。


 「私はただの一年生です…!」


 笑顔でそう応えた。
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