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第一章
第35話:結婚
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皇紀2218年・王歴222年・冬・ロスリン城
「ハリー殿、国王が選帝侯家から正室を迎えたが、カンリフ騎士家は王家と王国を存続させる気なのか」
爺様が不思議そうに聞いてくるが、俺に聞くなよ。
カンリフ騎士家との繋がりは爺様に任せたのだ。
知りたいのなら、俺に聞かずにカンリフ騎士家のルーカスに直接聞けばいいのだ。
まあ、今は周囲をエクセター侯爵軍に厳しく封鎖されているから、無理だけど。
俺には国王の結婚よりも、エクセター侯爵軍の方が気になるのだ。
だが、情報の共有はとても大切だから、影衆が調べてくれたことと、そこから俺が導き出した予測を話しておかなければいけないな。
「恐らくだが、カンリフ騎士家は、王国貴族はもちろん、多くの貴族士族に反抗されたのだろう。
味方になってくれる、自分達のやっている事を理解してくれる。
そう思っていた、自分達と同じように、主君である王国貴族を滅ぼした士族にまで、反抗され続けたのだろう。
カンリフ騎士家が、王家と同じ一族の三大宰相家や六公爵家だったら、王国貴族も士族もあれほどまでに反抗しなかっただろう。
いや、せめて侯爵家や伯爵家だったら、新たな王家となれただろう。
だがカンリフ騎士家は、主君である伯爵家を滅ぼして地方を支配した。
三大宰相家の分家である伯爵家を滅ぼして、その正室を自分の妻にした。
やってきた事があまりにも露骨で下劣過ぎた」
「いや、ハリー殿、それをやったのは、ルーカス殿ではなく弟のイーサンだ」
「俺や爺様は、公平にカンリフ騎士家を見ることができる。
だが王国貴族や士族は、一族や家臣がやった事もカンリフ騎士家がやった事だと思い、ルーカス殿を嫌い非難する材料にするのだ。
まあ、自分ができない事をやっている、ルーカス殿への妬み嫉みが本当に原因だが、そのような事を正直に口にする奴はおらんさ」
「なるほど、それを感じて、自ら王国を立てる事を諦めたか」
「ただ、完全に諦めたかどうかは分からないぞ。
まずは傀儡にした国王から爵位を手に入れるだろう。
カンリフ騎士家が支配する首都で暮らしている以上、ルーカス殿の叙爵願を拒む事などできないから、ルーカス殿達は王国貴族になる。
俺と同じ手を使って、皇国貴族にも叙爵されるだろう。
もう既に、主流派から疎外された選帝侯家の姫を弟の正室に迎えているのだ。
二代三代と時間をかけて、皇家と王家の外戚となり、皇国と王国の両方を支配して、都合のいい方を残す事もできる。
皇帝陛下を操り、王家を滅ぼして新たな王家を立てる事もできる」
「確かに、二代三代をかけてやるのなら、新王国の建国も可能だろう。
カンリフ騎士家ほどの戦力と富を持つ家が、時間をかけて王家を潰すと決意したら、防ぐことは難しいだろうな」
「だが選帝侯家等の皇国貴族にも、気概のある奴がいるようだ。
為す術もなく皇帝陛下をカンリフ騎士家の傀儡にするのは嫌なのだろう。
あるいは、忠義の為ではなく、自分の権力や名誉を護るためかもしれない。
だがそのどちらであろうと構わない。
王家に娘を送って、カンリフ騎士家と対抗しようとする選帝侯家があるのだ」
「なるほど、今皇国で主流派となっている選帝侯家が、カンリフ騎士家に娘を送り込んだ反主流派に対抗しようとしているのだな」
「ああ、何もしないで放置していたら、何時排除されるか分からないからな。
王家と手を組むことで、反カンリフ騎士家同盟を作るつもりだろう。
自分達が表にでるのは危険だから、国王を表に立ててな」
「なんと、国王はカンリフ騎士家の傀儡にされているだけではなく、選帝侯家の手先にもされているのか、選帝侯家とは恐ろしいものだな」
「ああ、今残っている選帝侯家は四家だが、どこも油断ならない毒虫だ。
爺様も決して気を許さず、母上が持ってくる、皇国貴族令嬢の嫁入り話を、上手く断ってくれよ」
「分かった、今無理にハリー殿の嫁を決めなくても、縁を結びたがっている王国貴族は山ほどいる、面倒な皇国貴族令嬢と無理に縁を結ぶ必要はない」
「だからと言って、母上と争わないでくれよ、爺様。
何時母上やヴィンセント子爵家を頼らなければいけなくなるか分からない。
老練な爺様の外交術を信じているからな。
俺が今一番考えなければいけないのは、エクセター侯爵の事だからな」
「分かった、争うことなく皇国貴族令嬢との縁談は壊して見せる。
ハリー殿は安心してエクセター侯爵の事だけ考えていてくれ」
春になって山の雪が解けたら、エクセター侯爵はクレイヴェン伯爵軍と一緒に攻めてくるのだろう。
問題はトリムレストン子爵家の軍勢かそれに従うか、好機と考えてエクセター侯爵に叛旗を翻すかだ。
それによって俺の狙う相手が変わってくる。
一番強敵のエクセター侯爵家を一番最初に叩き潰すか、それとも属臣となっているトリムレストン子爵家を攻めて領地を奪うか。
それとも、最初から狙っていた、もっとも弱くて領地が富をもたらしてくれる海に接している、クレイヴェン伯爵家を攻め滅ぼすかだ。
選択を間違えると、死なせなくていい家臣領民を死なせてしまう事になる。
「ハリー殿、国王が選帝侯家から正室を迎えたが、カンリフ騎士家は王家と王国を存続させる気なのか」
爺様が不思議そうに聞いてくるが、俺に聞くなよ。
カンリフ騎士家との繋がりは爺様に任せたのだ。
知りたいのなら、俺に聞かずにカンリフ騎士家のルーカスに直接聞けばいいのだ。
まあ、今は周囲をエクセター侯爵軍に厳しく封鎖されているから、無理だけど。
俺には国王の結婚よりも、エクセター侯爵軍の方が気になるのだ。
だが、情報の共有はとても大切だから、影衆が調べてくれたことと、そこから俺が導き出した予測を話しておかなければいけないな。
「恐らくだが、カンリフ騎士家は、王国貴族はもちろん、多くの貴族士族に反抗されたのだろう。
味方になってくれる、自分達のやっている事を理解してくれる。
そう思っていた、自分達と同じように、主君である王国貴族を滅ぼした士族にまで、反抗され続けたのだろう。
カンリフ騎士家が、王家と同じ一族の三大宰相家や六公爵家だったら、王国貴族も士族もあれほどまでに反抗しなかっただろう。
いや、せめて侯爵家や伯爵家だったら、新たな王家となれただろう。
だがカンリフ騎士家は、主君である伯爵家を滅ぼして地方を支配した。
三大宰相家の分家である伯爵家を滅ぼして、その正室を自分の妻にした。
やってきた事があまりにも露骨で下劣過ぎた」
「いや、ハリー殿、それをやったのは、ルーカス殿ではなく弟のイーサンだ」
「俺や爺様は、公平にカンリフ騎士家を見ることができる。
だが王国貴族や士族は、一族や家臣がやった事もカンリフ騎士家がやった事だと思い、ルーカス殿を嫌い非難する材料にするのだ。
まあ、自分ができない事をやっている、ルーカス殿への妬み嫉みが本当に原因だが、そのような事を正直に口にする奴はおらんさ」
「なるほど、それを感じて、自ら王国を立てる事を諦めたか」
「ただ、完全に諦めたかどうかは分からないぞ。
まずは傀儡にした国王から爵位を手に入れるだろう。
カンリフ騎士家が支配する首都で暮らしている以上、ルーカス殿の叙爵願を拒む事などできないから、ルーカス殿達は王国貴族になる。
俺と同じ手を使って、皇国貴族にも叙爵されるだろう。
もう既に、主流派から疎外された選帝侯家の姫を弟の正室に迎えているのだ。
二代三代と時間をかけて、皇家と王家の外戚となり、皇国と王国の両方を支配して、都合のいい方を残す事もできる。
皇帝陛下を操り、王家を滅ぼして新たな王家を立てる事もできる」
「確かに、二代三代をかけてやるのなら、新王国の建国も可能だろう。
カンリフ騎士家ほどの戦力と富を持つ家が、時間をかけて王家を潰すと決意したら、防ぐことは難しいだろうな」
「だが選帝侯家等の皇国貴族にも、気概のある奴がいるようだ。
為す術もなく皇帝陛下をカンリフ騎士家の傀儡にするのは嫌なのだろう。
あるいは、忠義の為ではなく、自分の権力や名誉を護るためかもしれない。
だがそのどちらであろうと構わない。
王家に娘を送って、カンリフ騎士家と対抗しようとする選帝侯家があるのだ」
「なるほど、今皇国で主流派となっている選帝侯家が、カンリフ騎士家に娘を送り込んだ反主流派に対抗しようとしているのだな」
「ああ、何もしないで放置していたら、何時排除されるか分からないからな。
王家と手を組むことで、反カンリフ騎士家同盟を作るつもりだろう。
自分達が表にでるのは危険だから、国王を表に立ててな」
「なんと、国王はカンリフ騎士家の傀儡にされているだけではなく、選帝侯家の手先にもされているのか、選帝侯家とは恐ろしいものだな」
「ああ、今残っている選帝侯家は四家だが、どこも油断ならない毒虫だ。
爺様も決して気を許さず、母上が持ってくる、皇国貴族令嬢の嫁入り話を、上手く断ってくれよ」
「分かった、今無理にハリー殿の嫁を決めなくても、縁を結びたがっている王国貴族は山ほどいる、面倒な皇国貴族令嬢と無理に縁を結ぶ必要はない」
「だからと言って、母上と争わないでくれよ、爺様。
何時母上やヴィンセント子爵家を頼らなければいけなくなるか分からない。
老練な爺様の外交術を信じているからな。
俺が今一番考えなければいけないのは、エクセター侯爵の事だからな」
「分かった、争うことなく皇国貴族令嬢との縁談は壊して見せる。
ハリー殿は安心してエクセター侯爵の事だけ考えていてくれ」
春になって山の雪が解けたら、エクセター侯爵はクレイヴェン伯爵軍と一緒に攻めてくるのだろう。
問題はトリムレストン子爵家の軍勢かそれに従うか、好機と考えてエクセター侯爵に叛旗を翻すかだ。
それによって俺の狙う相手が変わってくる。
一番強敵のエクセター侯爵家を一番最初に叩き潰すか、それとも属臣となっているトリムレストン子爵家を攻めて領地を奪うか。
それとも、最初から狙っていた、もっとも弱くて領地が富をもたらしてくれる海に接している、クレイヴェン伯爵家を攻め滅ぼすかだ。
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