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第一章
第34話:和平
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皇紀2218年・王歴222年・冬・ロスリン城
俺が着々と軍を整えている間に、王家とカンリフ騎士家が和平を成し遂げた。
影衆が情報収集をしてくれていたから、事前に分かっていた事ではある。
だが実際に和平がなってみると、よくやったものだと感心する。
王家に忠誠を尽くすセール宮中伯家のアダムが、必死で成し遂げた和平だった。
王家よりも王国を大切にする男だとは聞いていたが、十分王家にも尽くしている。
身勝手な人間が大嫌いな俺では、絶対にできない事だ。
ただ本当にアダム一人で成し遂げられたかと言えば、そうではない。
アダムが努力した事に間違いはないが、周辺の事情が大きく変わった事も大きい。
俺が裏切者の国王を領地から追い出して、カンリフ騎士家と秘密交渉をした。
エクセター侯爵が俺の事を警戒して、カンリフ騎士家と争うよりも、俺を討伐する事を優先した、などという事情があったのだ。
そういう状況になって、ようやく国王やその廷臣が危機感を覚えた。
もう俺の領地に逃げ込む事はできないし、エクセター侯爵もあてにできない。
安全な自由都市に逃げ込んでいるはずだったが、味方してくれる貴族がいなくなると、自由都市を支配している教会が不気味に見えてくる。
この時代の教会は、恐ろしいくらい現世利益に貪欲なのだ。
国王達が逃げ込んでいる自由都市は、二つの教団による歪んだ支配になっている。
領地を支配しているのは、この国で一番権威と兵力を持った教団だが、この教団は思いっきり腐敗していて、酒は飲む女は抱く御神体を神輿に乗せて首都で暴れる。
自分たちの欲望を満たすためなら、何でもやるのだ。
特にあくどいのが、自分達が奉じている主神ではなく、別の古い神を報じる教団を傀儡にして、年利五割という暴利で民に金を貸し付け、返せないと土地を奪うのだ。
そして自由都市に住む多くの民が信じている教団も、現世利益に貪欲だ。
こちらの教団はもっと露骨で、信徒を兵士にして、別の教団が奉じている神を信じる民を殺して土地を奪うのだ。
最近では平民の土地だけではなく、士族貴族を殺して領地まで奪っている。
恐ろしい事に、地方を任された伯爵家や侯爵家まで滅ぼしている。
そんな恐ろしい二つの教団が、貴族の支援を失った王家をどう扱うだろう。
皇家の子弟を傀儡教主にしている、この国で一番権威を持つベリアル教団。
王家を滅ぼして古の外戚政治を手本に、皇帝を皇族教主に操らせ、皇族教主を教団幹部が操る政治にしようとするかもしれない。
実際に今も皇族教主を操る事で、教団の権威を高めて貴族家を圧迫しているのだ。
それが可能なだけの宗教権威と教団騎士団と言う兵力を持っている。
そして貴族まで滅ぼすような武闘派のアザエル教団ならば、王家を滅ぼして自分達が新たな王家になろうとする可能性が高いだろう。
実際に今も伯爵家や侯爵家を滅ぼして、三つの地方を教団の支配下に置いている。
王家を首都から追い払う位の実力があるカンリフ騎士家だが、その先代当主はアザエル教団に襲撃されて自害しているのだ。
あまりの悔しさに、腹を斬って内臓を天井に投げつけたというほどだ。
そんな二つの教団が、陰で権力闘争を行っている自由都市に、貴族の支援を失くした状態でいる事は、何時殺されるか分からないという事だ。
安全を確保するためには、自由都市から逃げ出さなければいけない。
だがこれ以上首都から遠い場所に逃げてしまったら、もう王家の威信を取り戻す事は不可能だろう。
最悪の場合はカンリフ騎士家が新たな王家を建てるだろうし、王家が残るとしても、自分ではなくジェームズが傀儡王に立てられるだろう。
卑怯下劣な国王だが、馬鹿ではないので、それくらいの事は分かる。
エクセター侯爵と完全に敵対せずに、勧めてくれた和平を受ける事で恩を売る。
カンリフ騎士家とセール宮中伯家に対しても、和平を受ける事で恩を売る。
セール宮中伯家が維持していた王家組織を利用して、遠方の貴族家を味方にする。
今はエクセター侯爵とカンリフ騎士家の勢力均衡の間で生き残る。
その程度の事は考えて、今回の和平を受け入れて首都に戻ったのだろう。
「皆の者、今度の和平を好機としてエクセター侯爵が攻め込んでくるぞ。
クレイヴェン伯爵家への侵攻は後回しだ、まずはエクセター侯爵を撃退する。
攻め込んできたエクセター侯爵とクレイヴェン伯爵を叩いて、エクセター侯爵家をしばらく動けない状態にして、その間にクレイヴェン伯爵領を奪うぞ」
「「「「「おう」」」」」
俺が着々と軍を整えている間に、王家とカンリフ騎士家が和平を成し遂げた。
影衆が情報収集をしてくれていたから、事前に分かっていた事ではある。
だが実際に和平がなってみると、よくやったものだと感心する。
王家に忠誠を尽くすセール宮中伯家のアダムが、必死で成し遂げた和平だった。
王家よりも王国を大切にする男だとは聞いていたが、十分王家にも尽くしている。
身勝手な人間が大嫌いな俺では、絶対にできない事だ。
ただ本当にアダム一人で成し遂げられたかと言えば、そうではない。
アダムが努力した事に間違いはないが、周辺の事情が大きく変わった事も大きい。
俺が裏切者の国王を領地から追い出して、カンリフ騎士家と秘密交渉をした。
エクセター侯爵が俺の事を警戒して、カンリフ騎士家と争うよりも、俺を討伐する事を優先した、などという事情があったのだ。
そういう状況になって、ようやく国王やその廷臣が危機感を覚えた。
もう俺の領地に逃げ込む事はできないし、エクセター侯爵もあてにできない。
安全な自由都市に逃げ込んでいるはずだったが、味方してくれる貴族がいなくなると、自由都市を支配している教会が不気味に見えてくる。
この時代の教会は、恐ろしいくらい現世利益に貪欲なのだ。
国王達が逃げ込んでいる自由都市は、二つの教団による歪んだ支配になっている。
領地を支配しているのは、この国で一番権威と兵力を持った教団だが、この教団は思いっきり腐敗していて、酒は飲む女は抱く御神体を神輿に乗せて首都で暴れる。
自分たちの欲望を満たすためなら、何でもやるのだ。
特にあくどいのが、自分達が奉じている主神ではなく、別の古い神を報じる教団を傀儡にして、年利五割という暴利で民に金を貸し付け、返せないと土地を奪うのだ。
そして自由都市に住む多くの民が信じている教団も、現世利益に貪欲だ。
こちらの教団はもっと露骨で、信徒を兵士にして、別の教団が奉じている神を信じる民を殺して土地を奪うのだ。
最近では平民の土地だけではなく、士族貴族を殺して領地まで奪っている。
恐ろしい事に、地方を任された伯爵家や侯爵家まで滅ぼしている。
そんな恐ろしい二つの教団が、貴族の支援を失った王家をどう扱うだろう。
皇家の子弟を傀儡教主にしている、この国で一番権威を持つベリアル教団。
王家を滅ぼして古の外戚政治を手本に、皇帝を皇族教主に操らせ、皇族教主を教団幹部が操る政治にしようとするかもしれない。
実際に今も皇族教主を操る事で、教団の権威を高めて貴族家を圧迫しているのだ。
それが可能なだけの宗教権威と教団騎士団と言う兵力を持っている。
そして貴族まで滅ぼすような武闘派のアザエル教団ならば、王家を滅ぼして自分達が新たな王家になろうとする可能性が高いだろう。
実際に今も伯爵家や侯爵家を滅ぼして、三つの地方を教団の支配下に置いている。
王家を首都から追い払う位の実力があるカンリフ騎士家だが、その先代当主はアザエル教団に襲撃されて自害しているのだ。
あまりの悔しさに、腹を斬って内臓を天井に投げつけたというほどだ。
そんな二つの教団が、陰で権力闘争を行っている自由都市に、貴族の支援を失くした状態でいる事は、何時殺されるか分からないという事だ。
安全を確保するためには、自由都市から逃げ出さなければいけない。
だがこれ以上首都から遠い場所に逃げてしまったら、もう王家の威信を取り戻す事は不可能だろう。
最悪の場合はカンリフ騎士家が新たな王家を建てるだろうし、王家が残るとしても、自分ではなくジェームズが傀儡王に立てられるだろう。
卑怯下劣な国王だが、馬鹿ではないので、それくらいの事は分かる。
エクセター侯爵と完全に敵対せずに、勧めてくれた和平を受ける事で恩を売る。
カンリフ騎士家とセール宮中伯家に対しても、和平を受ける事で恩を売る。
セール宮中伯家が維持していた王家組織を利用して、遠方の貴族家を味方にする。
今はエクセター侯爵とカンリフ騎士家の勢力均衡の間で生き残る。
その程度の事は考えて、今回の和平を受け入れて首都に戻ったのだろう。
「皆の者、今度の和平を好機としてエクセター侯爵が攻め込んでくるぞ。
クレイヴェン伯爵家への侵攻は後回しだ、まずはエクセター侯爵を撃退する。
攻め込んできたエクセター侯爵とクレイヴェン伯爵を叩いて、エクセター侯爵家をしばらく動けない状態にして、その間にクレイヴェン伯爵領を奪うぞ」
「「「「「おう」」」」」
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