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第一章
第5話:雪崩
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「私もお願いしたい、どうか我が家と同盟してください」
「我が家も、我が家も同盟していただきたい」
「どうか我が家も同盟させていただきたい。
我が家は男爵家でしかないが、精一杯公爵家の役にたてるようにいたしますので、どうか同盟に参加させてください」
「エドアルド騎士団長閣下、我が家は王国騎士家でしかありませんが、武芸には自信がございます、どうか公爵家の騎士団に加えさせてください」
「私も忠誠を誓わせていただきます、どうか騎士団に加えてください」
機を見るに敏、と言えばいいのだろうか。
多少でも先を読む力のある貴族が同盟を望んできた。
王家に仕える騎士に至っては、主を王家から俺に替えるとまで言っている。
だが主である王家を裏切るイメージがつくのは嫌なのだろう。
王家騎士ではなく王国騎士と名乗っている。
その気持ちは分かるから、その点に関して文句はないが、どうしても受け入れられない点がある。
「今同盟や臣従を申し込んできた方々には、勘違いしないでいただきたい。
アウレリウス・ジェノバ公爵家の現当主は義父のフェデリコ閣下である事。
次期当主はマリアお嬢様であって、私は義兄でしかない。
アウレリウス・ジェノバ公爵家の家宰と騎士団長を務めさせていただいてはいるが、王国第一騎士団長も大将軍もフェデリコ閣下だ。
私はあくまで王国第一騎士団長代理であり大将軍代理でしかない。
その事は決して忘れないでいただきたい。
だからこそ、私には王家や王太子に対する忠誠心など全くない。
我が主は義父であるフェデリコ閣下で、何時でも王家と王太子に剣を向けられる」
話しているうちに興奮してしまったのか、つい剣を振るってしまった。
敵の強さを読む力もない実戦経験皆無の愚か者、フラヴィオ王太子。
俺が気を抑えているから本能的な恐怖を感じずにすんでいる事が分からない馬鹿。
背後から斬りつける事が、騎士や王侯貴族にとってどれだけ恥ずべきことか分かっているのに、それでも卑劣なマネができる性根の腐った屑。
背後から斬りかかってくる卑怯で下劣で愚かな王太子に向けて、殺意を籠った必殺の剣を振るってしまった。
だが目の端に、マリアお嬢様の不安と恐怖必死で抑えながら、それでも卑怯下劣な王太子の行いに憐れみを浮かべられる気高い表情をとらえたら、殺せなかった。
マリアお嬢様の前で盛りのついた豚の屠殺などできない。
だから、顔の皮一枚を斬るだけで、目に触れるか触れないかの位置で剣を止めた。
「ひぃいいいい、うわっ、ああ、ああ、うわっあ、こ、こ、ころ、ころさないで」
俺の殺意を一身に受けて、震える事もできなくなっていた王太子が、ようやく正気に戻るまでには結構な時間が経っていた。
その場にいた王侯貴族や騎士はもちろん、接待をするために会場にいた侍従や侍女までもが、憐れみと蔑みの目で王太子を見ていた。
王太子本人は恐怖のあまり自覚していないだろうが、塵一つないほど掃き清められた会場の床に、王太子が垂れ流した小便が水溜まりを作っていた。
それどころか、誰一人間違えようのない臭気が会場中に漂っていた。
最高の騎士でなければいけない王家の、それも王太子が、ただ剣を向けられただけで、恐怖のあまり失禁脱糞していたのだ。
「マリアお嬢様、このような穢れた場所はアウレリウス・ジェノバ公爵家のご令嬢には相応しくありません。
一旦王都の屋敷に戻って旅の準備をいたしましょう」
「我が家も、我が家も同盟していただきたい」
「どうか我が家も同盟させていただきたい。
我が家は男爵家でしかないが、精一杯公爵家の役にたてるようにいたしますので、どうか同盟に参加させてください」
「エドアルド騎士団長閣下、我が家は王国騎士家でしかありませんが、武芸には自信がございます、どうか公爵家の騎士団に加えさせてください」
「私も忠誠を誓わせていただきます、どうか騎士団に加えてください」
機を見るに敏、と言えばいいのだろうか。
多少でも先を読む力のある貴族が同盟を望んできた。
王家に仕える騎士に至っては、主を王家から俺に替えるとまで言っている。
だが主である王家を裏切るイメージがつくのは嫌なのだろう。
王家騎士ではなく王国騎士と名乗っている。
その気持ちは分かるから、その点に関して文句はないが、どうしても受け入れられない点がある。
「今同盟や臣従を申し込んできた方々には、勘違いしないでいただきたい。
アウレリウス・ジェノバ公爵家の現当主は義父のフェデリコ閣下である事。
次期当主はマリアお嬢様であって、私は義兄でしかない。
アウレリウス・ジェノバ公爵家の家宰と騎士団長を務めさせていただいてはいるが、王国第一騎士団長も大将軍もフェデリコ閣下だ。
私はあくまで王国第一騎士団長代理であり大将軍代理でしかない。
その事は決して忘れないでいただきたい。
だからこそ、私には王家や王太子に対する忠誠心など全くない。
我が主は義父であるフェデリコ閣下で、何時でも王家と王太子に剣を向けられる」
話しているうちに興奮してしまったのか、つい剣を振るってしまった。
敵の強さを読む力もない実戦経験皆無の愚か者、フラヴィオ王太子。
俺が気を抑えているから本能的な恐怖を感じずにすんでいる事が分からない馬鹿。
背後から斬りつける事が、騎士や王侯貴族にとってどれだけ恥ずべきことか分かっているのに、それでも卑劣なマネができる性根の腐った屑。
背後から斬りかかってくる卑怯で下劣で愚かな王太子に向けて、殺意を籠った必殺の剣を振るってしまった。
だが目の端に、マリアお嬢様の不安と恐怖必死で抑えながら、それでも卑怯下劣な王太子の行いに憐れみを浮かべられる気高い表情をとらえたら、殺せなかった。
マリアお嬢様の前で盛りのついた豚の屠殺などできない。
だから、顔の皮一枚を斬るだけで、目に触れるか触れないかの位置で剣を止めた。
「ひぃいいいい、うわっ、ああ、ああ、うわっあ、こ、こ、ころ、ころさないで」
俺の殺意を一身に受けて、震える事もできなくなっていた王太子が、ようやく正気に戻るまでには結構な時間が経っていた。
その場にいた王侯貴族や騎士はもちろん、接待をするために会場にいた侍従や侍女までもが、憐れみと蔑みの目で王太子を見ていた。
王太子本人は恐怖のあまり自覚していないだろうが、塵一つないほど掃き清められた会場の床に、王太子が垂れ流した小便が水溜まりを作っていた。
それどころか、誰一人間違えようのない臭気が会場中に漂っていた。
最高の騎士でなければいけない王家の、それも王太子が、ただ剣を向けられただけで、恐怖のあまり失禁脱糞していたのだ。
「マリアお嬢様、このような穢れた場所はアウレリウス・ジェノバ公爵家のご令嬢には相応しくありません。
一旦王都の屋敷に戻って旅の準備をいたしましょう」
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