四代目 豊臣秀勝

克全

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第二章

甲斐信濃混乱

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 本能寺の変の後、上杉景勝は信濃川中島四郡を確保すべく、あらゆる手を打った。
 川中島四郡を確保したい上杉景勝は、なりふり構わず武田家遺臣や信濃衆旧臣の本領を安堵した。
 自身も海津城に入り、武田家遺臣や信濃衆旧臣の慰撫に努めた。
 だが新発田重家という反乱分子を抱えているため、信濃中部や南部に侵攻することが出来なかった。
 織田信孝と柴田勝家から同盟の使者が来ていたが、無条件で信じる事など出来なかった。
 洞雪斎の甥・小笠原貞慶は徳川家康の所にいたが、織田家が徳川家の甲斐信濃介入を認めないため、表向き支援を受けられなかった。
 だが洞雪斎が上杉の傀儡であることに苛立った旧臣達に迎えられ、深志城を上杉家から奪還した。
 更に徳川家康は、武田の遺臣・岡部正綱に密命を与え、横死した穴山信君の遺領・甲斐河内領を接収させ、菅沼城を築かせた。
 同じく武田の遺臣・依田信蕃にも密使を送り、佐久郡へ向かわせた。
 依田信蕃は、武田遺臣九百兵を集めて小諸城を奪った。
 曽根昌世と駒井政直にも武田の遺臣を集めさせ、甲斐信濃各地で蜂起させた。
 だが清州会議で徳川家康の信濃甲斐介入が禁じられたため、表向き徳川家を離れた形となっていた。
 視線を転じて滝川一益を破った後北条家だが、上野の国衆地侍を降伏臣従させていた。
 六月二十六日には信濃佐久郡の豪族を臣従させた。
 二十八日には先方軍を佐久郡に送り込んだ。
 七月に入って真田昌幸が臣従を誓うと、昌幸に先方を命じ、上野から碓氷峠を越えて後北条軍主力四万三千兵を進軍させた。
 徳川家の援軍を受けられない依田信蕃は、小諸城を捨てて逃げ出した。
 御坂峠に御坂城を築き、徳川家の侵攻に備えた。
 どうしても川中島四郡を確保したい上杉景勝と、上杉家と徳川家の同盟を危惧する後北条家は和議を結び、上杉家の川中島四郡領有を認める代わりに、後北条家の甲斐・信濃中部南部の切り取り勝手を認めた。
 絶え間ない織田家の侵攻を受けていた上杉家は、御館の乱後遺症も深く、後北条家と正面衝突出来る状態ではなかったのだ。
 上杉と和議を結んだ北条は、徳川家康が陰で糸を引く武田家遺臣の籠る城に向けて進軍した。
 主力軍四万は南に転進した。
 北条氏忠や北条氏勝に一万兵を指揮させて、御坂峠に陣取らせた。
 北条氏邦にも秩父から甲斐に侵攻する準備をさせた。
 徳川家康の直接支援を受けられない武田遺臣は、甲斐信濃を捨てて徳川家康の元に逃げ帰る者と、後北条家に降伏臣従する者に別れた。
 武田の遺臣達は、北条氏直が武田信玄の外孫であることを大義名分として、旧領を安堵してもらえればよかったのだ。
 その相手が徳川家康であろうと、北条氏政であろうと何方でもよかったのだ。
 織田信雄が信濃甲斐に攻め込んだ時には、川中島四郡以外の信濃と甲斐一国は、後北条家が占領した直後だった。
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