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武田義信
銭の効果
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10月『躑躅ヶ崎館 信玄私室』
「銭の効果が出ているようだな。」
今日も俺の料理を貪りながら信玄が鉄砲鍛冶の事を言う。
因みに今日の料理は
1・新巻鮭の塩焼き
鮭・塩
2・猪の生姜焼き
猪・葱・生姜・たまり醤油
3・白和え
青菜・豆腐・煎銀杏・塩抜筍・茹大豆
4・玄米飯
玄米
5・味噌汁
麦味噌・干椎茸・泥鰌・牛蒡
6・梅干
7・葡萄白玉
甲州葡萄を煮詰めたものに白玉を入れたもの
木気 梅干
火気 筍・銀杏・牛蒡
土気 大豆・玄米
金気 生姜・葱
水気 塩・たまり醤油・
「はい、将軍家は2人の鉄砲鍛冶をよこしてくれました。」
足利義晴将軍は、気前好く2人も鉄砲鍛冶を送ってくれた、まあ、まだこの時期は珍奇な道具と言う程度の認識なのかもしれない。
「予定通りの500貫文で済んだ、三条卿への500貫文も効果が出ている。」
「どのような形に収まりそうですか?」
「二郎と三郎を養子にするのは納得されたようだ、ただ、実子が産まれた場合はその子を優先するとのことだ。」
まあそうだろうな、俺も精力剤を送っておいたからな。
「京都の屋敷をこちが使う件はどうなっております?」
「嫌も応も無い、御前の荷役が、堺商人を呼び寄せて商いをしているのであろう? 屋敷は賑やかになるわ、商人達からチヤホヤされるは献上品は貰えるわ、ご機嫌で自由に使って構わんと手紙が来たわ。」
「河原者の子供や老人を屋敷内に立ち入らせている件は?」
「屋敷の修築や掃除に必要と虎繁が申しているのだろ? 虎繁からの説明と、実際の働きを見て喜んでおられるようだ、何百人もの下人に傅かれて御満悦なのだろうさ。」
まあそうだろうな、極貧の生活が長かったんだ、家人や下人などほとんどいなかっただろう、数百人に傅かれての生活など、今の公家には1人もいないだろうしな、人生で1番の幸福期かもしれないな。京都に責任者として送り込んだ、秋山虎繁も上手くやってるようだ。
「しかし、虎繁は女癖が悪いぞ? 公家の娘に手を付けたら問題が起こるぞ。」
へ? 女癖が悪いの?駄目じゃんそれ!
「代わりの者を送ります!」
「冗談じゃ、但し手紙で釘を刺しておけ、朝廷や幕府への工作の加減が有る、こちらが指示した女以外は身分の高い娘に手を出すなとな。」
「承りました。」
「ところで善信、唐揚げは無いのか?」
まだ喰うのかよ? 喰うんだろうな、何か揚げて美味いものに有ったか?
「料理長、山鳥が吊るして有ったな?」
「はい、ございます。」
黙って廊下に控えていた、料理長の相賀光重は即座に答えた。
「丁寧に筋切りしてから、唐揚げにして御持ちしろ。」
「承りました。」
「精をつけんとな、今宵は三条の所に渡る。」
これこれ、息子の前でそんな話するんじゃない、まあ、俺も元服済ませてるし、遠慮する必要もないのか?
「仲がよろしい事は何よりです。」
「三条にはもう幾人か男子を産んで欲しい、二郎を養子にやるなら尚更だ、その為には食養と漢方薬のどちらが好い?」
「母上には密かに食養を行っております、二郎と三郎の健康にも細心の注意を図っております。」
「善信! 御前が極力毎日の食事を差配しているのはそのためか?」
「はい、我が父母兄弟を病から守るのも善信の務めと考えております。」
「先々の事も有る、相賀を始めとする料理人を鍛えて、出来るだけ早く御前の手が離れる様にしろ!」
「承りました、我が小人衆も鍛えております、信繁叔父上をはじめとする一門衆にも、食養の為に料理人を派遣したいのですが。」
「一人前に料理が作れるのなら皆喜ぶであろう、話して置こう。」
「御願い申し上げます。」
よし、これで一門衆の家人に素破を潜り込ませられる。何よりも、元難民の小人達の中には荷役や素破に向かないものもいる、料理に適性が有る者にも仕官先が出来たな。
『躑躅ヶ崎館 善信私室』
「若殿、麦から酒を造る職人が見つかりました。」
「でかした、何処にいたのだ?」
「壱岐の国でございます。」
また九州かよ、随分遠くまで探しに行ってくれているのだな。
「遠方まで御苦労であるな、それで、甲斐に迎えられそうか?」
「知行50石を保証し、武士待遇で迎えることで納得したそうです。何よりも足利将軍家・細川管領家・三条家の御教書が効いたようでございます。ただ上手くいきすぎて、杜氏が6人も来たいと申しておるようですが?」
「6人全員に来てもらってくれ、多ければ多いほど酒に使う米を減らせる。」
「承りました、直ぐに使者を送ります。」
「京都の三条屋敷はどんな状態だ?」
「西国や九州に向かう荷役の好い拠点に成っております。堺商人も日参しております。」
「都は惨い状態と聞いているが、焼け出された子供は多いのか?」
「はい、河原者に加わって命永らえられれば好い方です、大抵は奴隷として売られております」
「三条屋敷に収容するのも限界があろう、甲斐まで連れてこれるか?」
「京でで荷を捌いた者に、子供達を甲斐に連れてくるよう指示しております。」
「うむ、好く手配してくれた、そのまま出来る限り助け出してやってくれ。だがその為の食料は確保できているか?」
「作柄は平年並みでございます。狩猟や漁猟は小人が増えた分大猟です。鹿の捕獲養殖も順調で、春には大量の鹿茸が手に入ると思われます。」
「それは好かった、開墾した田畑は甲斐の水田が8000反・畑が3000反、伊那郡の水田が4000反・畑が8000反だったな?」
「はい、恐らく年間で玄米で1万2000石、雑穀が2万3000石収穫できます」
遣り繰りすれば、2万人くらいの難民を喰わせていけるか?
「葡萄の苗などの果樹は上手く育っておるか?」
「順調でございます、植樹の終わった山々は、10年後には豊穣の山となりましょう」
「養蜂はどうだ?」
「若殿の申されるように、城壁に囲まれた場所の所為か、植樹ほど順調ではございませんが、秘法を守るため致し方ございません。それでも確実に巣箱に蜂が集まりだしております。」
「今年は蜂密は集めず、確実に冬を越えさせてくれ。」
「承りました。」
「養蚕の方は順調と聞いているが?」
「はい、白絹の出来は素晴らしい物があります。」
「餌にする桑の植樹は順調か?」
「河原など荒地を中心に植えておりますが、果樹と共に山々にも植えみております。」
「牛馬の数は増えているか?」
「御指示通り、購入価格を3貫文に増やしたところ、順調に購入できました。牝馬が522頭・牝牛が219頭です。春に産まれた子馬が209頭・子牛が118頭でございます。」
「田畑には公平に貸し与えてくれ、雄の仔馬は軍馬への調教を始めてくれ。」
「承りました。」
「職人を始めとする難民は幾人になった?」
「以前からの職人も含めて、鉄砲鍛冶2人、刀鍛冶が18人、弓師が19人、甲冑師が18人、皮革職人が42人、竹細工職人が41人、木地師が95人、大工が15人、塗師が13人でございます。難民は甲斐の開拓地は5223人、福与城内に1000兵、荒神山城に2203人、竜ケ崎城に2322人、高遠城に2392人、あと正確な人数は把握しておりませんが、上之平城・大出城・箕輪城・松島城・北の城・下の城・大草城・的場城・春日城・殿島城などには400人規模の難民を住まわせております。」
「1万7000人前後と言うことか?」
「左様でございます、皆が狩猟採取に励んでおります。」
「まだ助けられそうか?」
「修築した城は、2000人収容できるように、拡張増築を指示しております。」
「軍資金は6万貫文からどれくらい増えた?」
「牛馬の購入費、御屋形様へも献上銭1万貫文、荷役への歩銭、領民の労務へ賃金、武具甲冑などの購入費、全て支払ったうえで、10万2131貫文残っております。勿論荷役が持ち出している分は計算しておりません。」
「堺商人へ大量販売したのが利を産んだのか?」
「左様でございます、それと、京の三条屋敷を拠点とした西国への販売も効果的でした。」
「さて、一番聞きたいことが有る。難民達の忠誠心はどうだ? 彼らは儂に落胆失望していないか?」
「他国の忍びが紛れ込んでいないとも限りません、全ての民が真っ当な心根の者とは申せません、しかし、城内に住居を拝領し、新たな難民住居の為に築城すら行っておられます! 何が有っても護って貰えると目に見えて実感できたのです、殆どの者は心から感謝しております。」
「そうか、安心した。」
「銭の効果が出ているようだな。」
今日も俺の料理を貪りながら信玄が鉄砲鍛冶の事を言う。
因みに今日の料理は
1・新巻鮭の塩焼き
鮭・塩
2・猪の生姜焼き
猪・葱・生姜・たまり醤油
3・白和え
青菜・豆腐・煎銀杏・塩抜筍・茹大豆
4・玄米飯
玄米
5・味噌汁
麦味噌・干椎茸・泥鰌・牛蒡
6・梅干
7・葡萄白玉
甲州葡萄を煮詰めたものに白玉を入れたもの
木気 梅干
火気 筍・銀杏・牛蒡
土気 大豆・玄米
金気 生姜・葱
水気 塩・たまり醤油・
「はい、将軍家は2人の鉄砲鍛冶をよこしてくれました。」
足利義晴将軍は、気前好く2人も鉄砲鍛冶を送ってくれた、まあ、まだこの時期は珍奇な道具と言う程度の認識なのかもしれない。
「予定通りの500貫文で済んだ、三条卿への500貫文も効果が出ている。」
「どのような形に収まりそうですか?」
「二郎と三郎を養子にするのは納得されたようだ、ただ、実子が産まれた場合はその子を優先するとのことだ。」
まあそうだろうな、俺も精力剤を送っておいたからな。
「京都の屋敷をこちが使う件はどうなっております?」
「嫌も応も無い、御前の荷役が、堺商人を呼び寄せて商いをしているのであろう? 屋敷は賑やかになるわ、商人達からチヤホヤされるは献上品は貰えるわ、ご機嫌で自由に使って構わんと手紙が来たわ。」
「河原者の子供や老人を屋敷内に立ち入らせている件は?」
「屋敷の修築や掃除に必要と虎繁が申しているのだろ? 虎繁からの説明と、実際の働きを見て喜んでおられるようだ、何百人もの下人に傅かれて御満悦なのだろうさ。」
まあそうだろうな、極貧の生活が長かったんだ、家人や下人などほとんどいなかっただろう、数百人に傅かれての生活など、今の公家には1人もいないだろうしな、人生で1番の幸福期かもしれないな。京都に責任者として送り込んだ、秋山虎繁も上手くやってるようだ。
「しかし、虎繁は女癖が悪いぞ? 公家の娘に手を付けたら問題が起こるぞ。」
へ? 女癖が悪いの?駄目じゃんそれ!
「代わりの者を送ります!」
「冗談じゃ、但し手紙で釘を刺しておけ、朝廷や幕府への工作の加減が有る、こちらが指示した女以外は身分の高い娘に手を出すなとな。」
「承りました。」
「ところで善信、唐揚げは無いのか?」
まだ喰うのかよ? 喰うんだろうな、何か揚げて美味いものに有ったか?
「料理長、山鳥が吊るして有ったな?」
「はい、ございます。」
黙って廊下に控えていた、料理長の相賀光重は即座に答えた。
「丁寧に筋切りしてから、唐揚げにして御持ちしろ。」
「承りました。」
「精をつけんとな、今宵は三条の所に渡る。」
これこれ、息子の前でそんな話するんじゃない、まあ、俺も元服済ませてるし、遠慮する必要もないのか?
「仲がよろしい事は何よりです。」
「三条にはもう幾人か男子を産んで欲しい、二郎を養子にやるなら尚更だ、その為には食養と漢方薬のどちらが好い?」
「母上には密かに食養を行っております、二郎と三郎の健康にも細心の注意を図っております。」
「善信! 御前が極力毎日の食事を差配しているのはそのためか?」
「はい、我が父母兄弟を病から守るのも善信の務めと考えております。」
「先々の事も有る、相賀を始めとする料理人を鍛えて、出来るだけ早く御前の手が離れる様にしろ!」
「承りました、我が小人衆も鍛えております、信繁叔父上をはじめとする一門衆にも、食養の為に料理人を派遣したいのですが。」
「一人前に料理が作れるのなら皆喜ぶであろう、話して置こう。」
「御願い申し上げます。」
よし、これで一門衆の家人に素破を潜り込ませられる。何よりも、元難民の小人達の中には荷役や素破に向かないものもいる、料理に適性が有る者にも仕官先が出来たな。
『躑躅ヶ崎館 善信私室』
「若殿、麦から酒を造る職人が見つかりました。」
「でかした、何処にいたのだ?」
「壱岐の国でございます。」
また九州かよ、随分遠くまで探しに行ってくれているのだな。
「遠方まで御苦労であるな、それで、甲斐に迎えられそうか?」
「知行50石を保証し、武士待遇で迎えることで納得したそうです。何よりも足利将軍家・細川管領家・三条家の御教書が効いたようでございます。ただ上手くいきすぎて、杜氏が6人も来たいと申しておるようですが?」
「6人全員に来てもらってくれ、多ければ多いほど酒に使う米を減らせる。」
「承りました、直ぐに使者を送ります。」
「京都の三条屋敷はどんな状態だ?」
「西国や九州に向かう荷役の好い拠点に成っております。堺商人も日参しております。」
「都は惨い状態と聞いているが、焼け出された子供は多いのか?」
「はい、河原者に加わって命永らえられれば好い方です、大抵は奴隷として売られております」
「三条屋敷に収容するのも限界があろう、甲斐まで連れてこれるか?」
「京でで荷を捌いた者に、子供達を甲斐に連れてくるよう指示しております。」
「うむ、好く手配してくれた、そのまま出来る限り助け出してやってくれ。だがその為の食料は確保できているか?」
「作柄は平年並みでございます。狩猟や漁猟は小人が増えた分大猟です。鹿の捕獲養殖も順調で、春には大量の鹿茸が手に入ると思われます。」
「それは好かった、開墾した田畑は甲斐の水田が8000反・畑が3000反、伊那郡の水田が4000反・畑が8000反だったな?」
「はい、恐らく年間で玄米で1万2000石、雑穀が2万3000石収穫できます」
遣り繰りすれば、2万人くらいの難民を喰わせていけるか?
「葡萄の苗などの果樹は上手く育っておるか?」
「順調でございます、植樹の終わった山々は、10年後には豊穣の山となりましょう」
「養蜂はどうだ?」
「若殿の申されるように、城壁に囲まれた場所の所為か、植樹ほど順調ではございませんが、秘法を守るため致し方ございません。それでも確実に巣箱に蜂が集まりだしております。」
「今年は蜂密は集めず、確実に冬を越えさせてくれ。」
「承りました。」
「養蚕の方は順調と聞いているが?」
「はい、白絹の出来は素晴らしい物があります。」
「餌にする桑の植樹は順調か?」
「河原など荒地を中心に植えておりますが、果樹と共に山々にも植えみております。」
「牛馬の数は増えているか?」
「御指示通り、購入価格を3貫文に増やしたところ、順調に購入できました。牝馬が522頭・牝牛が219頭です。春に産まれた子馬が209頭・子牛が118頭でございます。」
「田畑には公平に貸し与えてくれ、雄の仔馬は軍馬への調教を始めてくれ。」
「承りました。」
「職人を始めとする難民は幾人になった?」
「以前からの職人も含めて、鉄砲鍛冶2人、刀鍛冶が18人、弓師が19人、甲冑師が18人、皮革職人が42人、竹細工職人が41人、木地師が95人、大工が15人、塗師が13人でございます。難民は甲斐の開拓地は5223人、福与城内に1000兵、荒神山城に2203人、竜ケ崎城に2322人、高遠城に2392人、あと正確な人数は把握しておりませんが、上之平城・大出城・箕輪城・松島城・北の城・下の城・大草城・的場城・春日城・殿島城などには400人規模の難民を住まわせております。」
「1万7000人前後と言うことか?」
「左様でございます、皆が狩猟採取に励んでおります。」
「まだ助けられそうか?」
「修築した城は、2000人収容できるように、拡張増築を指示しております。」
「軍資金は6万貫文からどれくらい増えた?」
「牛馬の購入費、御屋形様へも献上銭1万貫文、荷役への歩銭、領民の労務へ賃金、武具甲冑などの購入費、全て支払ったうえで、10万2131貫文残っております。勿論荷役が持ち出している分は計算しておりません。」
「堺商人へ大量販売したのが利を産んだのか?」
「左様でございます、それと、京の三条屋敷を拠点とした西国への販売も効果的でした。」
「さて、一番聞きたいことが有る。難民達の忠誠心はどうだ? 彼らは儂に落胆失望していないか?」
「他国の忍びが紛れ込んでいないとも限りません、全ての民が真っ当な心根の者とは申せません、しかし、城内に住居を拝領し、新たな難民住居の為に築城すら行っておられます! 何が有っても護って貰えると目に見えて実感できたのです、殆どの者は心から感謝しております。」
「そうか、安心した。」
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