闇ギルドの影は目的を果たすために戦い続ける

夜納木ナヤ

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再会~敵か味方か~

影になった日

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 闇のギルドに入る前、俺は普通よりもちょっといい家で暮らしていた。
 両親は世間体ばかり気にして、学校でいい成績を取ることを強要してきた。
 けれど俺は知っていた。
 実際に会社を回していたのは有能な別の人物で、二人は出社しても騒ぐだけの、煙たがられてる存在だということを。

 それでも、ちょっとでも成績が悪いと罵倒をしてくる。
 俺は、どうしたら怒られないのか考えた。だが、答えなんてなかった。満点をとっても、彼らは文句を言うのだ。

 そんな俺の憩いは、夕方の公園だった。
 ここに来れば同い年の友達がたくさんいて、大人の社会のことは忘れていられた。
 特に仲の良かった女の子がいて、彼女は帰り際にポニーテールを揺らして走っていくと、公園の前で必ず振り向き、手を振ってくれた。
「また明日」と。

 いつもどおりに遊んでいたある日、公園にモンスターが現れた。なんてことない、Fランクのモンスターだった。
 けれど子供には荷が重すぎた。俺たちは次々と食われていった。

 粗暴な奴で、一人は腕だけを食われ、一人は足だけを食われた。
 それはまるで、生き地獄だ。
 痛みだけを残し、すぐには死ねずに悶え苦しむ。

 そして俺もそいつに食われた。
 何を思ったのか、俺だけは、腕も、足も食われた。残ったのは頭と胸から上だけ。
 そこらじゅう熱くて、最早痛みは感じなかった。

 俺は死ぬ。
 そう持った時に浮かんだのは、両親の顔だった。
 走馬灯って奴だろう。
 俺を罵倒し、見下したような態度…どうして俺は、そこまで虐げられないといけなかったんだ?
 俺が子供だから?…いや違う。弱いからだ。
 
 あいつらはモンスターと同じだ。
 自分の方が優位と思っているから、好き勝手やるのだ。目の前にいる、こいつのように。

 きっと俺の顔は、恨みや憎しみで歪んでいる。
 このまま死ぬなんて耐えられない…せめて、あいつらの顔を俺以上の苦痛で歪ませてからではないと。

 そう思った瞬間、ひらめいた。
 どうせみんな体の一部しか残っていないんだ。
 だったらそれをかき集めて、俺の体にすればいい!

 突如、俺を中心に魔法陣が浮かび上がった。
 原理は今も分からない。分かっているのは、倒れている奴らの影が集まってきたことだ。
 傷はふさがり、食われたはずの腕も、足も再生されていった。さっいまで感じていた熱はどこにもない。
 
 立ち上がろうとしたが、体に力が入らない。
 痛みもないのになぜ?

 ふと、目の前で女の子が襲われていた。
 仲のいいあの子だ。
 
 あの子だけは…エリスだけは痛い目に合わせられない!
 そう思った瞬間、俺は叫んでいた。

「代償はいくらでもくれてやる!だからっ、動けよ俺の体!」

 何が起こったわけでもない。
 けれど体は軽かった。

 エリスの前に立つと、モンスターをぶん殴った。
 一撃だった。そいつは倒れ、動かなくなった。

「やった!」

 俺が振り返ると、彼女は怯えていた。
 なぜだ?俺が守ったのに。

 手を伸ばそうとすると、拒否された。
 
「どうして…」

 俺の声に、か細い声が答えた。

「影が…」
 
 言われて気がついた。
 女の子の影が、俺の影に吸収されているのだ。

 そして女の子から、影は消えた。
 モンスターに襲われ、怯えていた顔はさらに歪み、走り去っていた。

 次の日、公園は閉鎖され、俺がエリスに会うことは二度となかった。
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