【電子書籍化】ホラー短編集・ある怖い話の記録~旧 2ch 洒落にならない怖い話風 現代ホラー~

榊シロ

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16.呼応するオカリナ①(怖さレベル:★★★)

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(怖さレベル:★★★:旧2ch 洒落怖くらいの話)
『30代女性 三木本さん(仮名)』

よく、田舎特有の怪異ってありますよね?

秘密基地、
廃村、
森、山、海……。

後半は規模が大きすぎますが、
私の祖父母の住む場所も都会の喧騒とは縁のない、
のどかな海辺の町でした。

祖母の住んでいたその町、
便宜上は町となっていますが、
村といったほうが相応しいのではないかというくらい
辺鄙な海辺の地。

そこの人々は、まさに
海の恵みを生きる糧として生活していました。

村の男衆は漁師かそれに携わる仕事につき、
女も海女をやったり、海苔や干物の製造を担ったりして、
うちの祖父母も例にもれずそれに準じておりました。

都会に出て会社員となった父は、
それでも年に一度、
夏休みの一週間、私をここに預けました。

子どもの少ないこの町では、
私はたいそうかわいがってもらえるので、
毎年その町へいくのがとても楽しみだったんです。

そして、同じように毎年夏休みだけ
帰省するといううちは他にもあって。

二歳年上の小泉君と、
彼と同い年の森君という二人の男の子と、
毎年遊んでいたのです。

とはいえ、
ゲーム機なんてない田舎町。

遊ぶとなれば、
場所はもっぱら海辺か砂浜です。

透きとおった海で泳いだり、
桟橋の先で釣りをしたり、
砂浜で砂の城やトンネルを造ったりと、
屋外でできるいろいろな遊びをやりまくったものです。


そして、
そんなある日のことでした。

私が二人と待ち合わせしていた浜辺に向かうと、

「お、三木本きたぜ」
「おーい、みきちゃん!」

森君と小泉君が、
なにかを片手に大きく手を振ってきました。

「お待たせ、二人とも。……それ、なに?」
「これ、オカリナ!
 オレがさっき砂の穴を掘ってたら、
 釣りしてたおっちゃんがくれたんだ!」

森君が、
自慢げにオカリナを空に掲げました。

「森、みっつ貰ったんだってさ。
 これ、みきちゃんの分」
「あ、ありがと、森君」
「おう! オカリナって実物初めて見たぜー」

くるくるとオカリナを振りまわす彼の言う通り、
せいぜいテレビで目にしたことがある、
というくらい馴染みのないそれ。

せっかくもらったその楽器、
さっそく吹いてみようという話になったのです。

「えっと……これ、どうやって音ならすんだろう」
「えー? テキトーにさぁ、
 リコーダーっぽい感じでいいんじゃねぇ?」

なにせ初めてのオカリナ。

いまいち勝手もわからぬまま、
なんとなく吹き口に息を吹き込んでみます。

「……音、出ないなぁ」
「バッカ、吹き方が悪いんだって。
 もっとこう、力をうまいこと抜いてさぁ」

小泉君が首を傾げている横で、
森君がさも知っているかのようにオカリナに口をつけます。

「……む、ぐ」

若干苦戦した様子を見せた後、

ホゥー、ホゥー

と、
あの独特な空気を揺らす音が鳴りました。

「うし、さすがオレ!」
「森君、さすが!」

ホゥー、ホゥー

彼はしてやったりという表情で、
しきりにオカリナを鳴らします。

どうやら音階も掴めたようで、
つたないながらもピポピポと指を動かしていました。

「うーん……鳴らないな」
「だめだねぇ……」

しかし、私と小泉君はなにがいけないのか、
まったく音を出すことができません。

吹き出した息は、コヒュー、
とただただ空気の抜ける間抜けな音を流すばかりです。

「ねぇ森君、そのオカリナ貸して!」

私はどうしても音を出したくて森君に頼み込んだのですが、

「ダーメ! これはオレが取ってきたヤツだぞ」

と頑として譲ってくれません。

森君はいつも明るく朗らかな男の子でしたが、
こういう頑固というかイジっぱりなところがありました。

私の人形を壊したり、
小泉君のおもちゃを奪ったりと、
乱暴なところもあって、
私も幼い頃から割と気が強かったので、
彼とはよくケンカばかりしていたものです。

「まあまあ、しょうがないって、みきちゃん」

反面、小泉君はおっとり屋で、
それとなく私と彼のケンカを納めてくれたものでした。

「ヘヘッ、吹けるのオレだけだもんねー」

ホゥー、ホゥー、ホゥー

得意げに彼はなんどもオカリナを響かせました。

その透きとおる高音は、
昼過ぎののんびりした時間帯の海に、
まるで汽笛のように響いています。

「小泉! 三木本!
 ほら、まだがんばれば音でるかもよーっ」

挑発する森君に小泉君は苦笑いでしたが、
私はくやしくて、ムキになってオカリナにかじりついていると、

ホゥー、ホゥー、ホゥー

「……アレ?」

どうしてだが、
海の方角からも、
オカリナの音が聞こえてきたのです。
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