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昨日の夕方から振り始めた雨は今日の朝になってもやんでいなかった。テレビニュースでは梅雨入りしたと発表されている。これから数週間は蒸し暑い日が続くのかと思うと、気が滅入ってしまう。
「梅雨入りか」
お味噌汁を飲んでいたお父さんがテレビに視線をやってつぶやく。分厚いレンズのメガネの奥で、目がしょぼしょぼしているのが見える。
最近仕事がうまく行っていないみたいで、昨日の帰りも遅かった。きっと、あまり眠れていないんだろう。
そんなお父さんの体調変化に連動するように、お母さんの機嫌もあまりよくないみたいだ。
「真美。早くご飯食べちゃいなさい。遅刻するわよ」
中学に入学してから一度も遅刻なんてしたことのない私へ向けて、八つ当たりのように注意してくる。
私はお母さんの言葉を無視して、箸に手を伸ばしたのだった。
☆☆☆
透明な雨傘に雨が叩きつけてきて、周囲の音を消してしまう。こんなに大振りなのは久しぶりで、足元が悪くて仕方ない。
朝から最悪な気分で学校に到着すると、いつもどおり里子は先に登校してきていた。
「おはよう」
変わらず声をかけると、本を読んでいた里子が少し驚いた表情でこちらを見た。
「お、おはよう」
ぎこちない挨拶に首をかしげる。
「朝から読書なんて珍しいね」
里子が本を読み始めるのはたいてい朝のホームルームが終わってからだ。
しかし里子は首をかしげて「いつも読んでるけど……」と、ぎこちない様子で言った。
「え?」
何言ってるんだろう。いつもはこの時間は私とおしゃべりしているのに。
そう言おうとしたときだった。教室のドアが開いて麻衣たちが登校してきた。その瞬間教室の空気が一気に華やかになる。
暗くてジメジメした梅雨の時期も麻衣たちには全然関係ないみたいだ。
「おっはよ! 真美!」
麻衣が私の背中を少し痛いくらいに叩く。
「そんなところに突っ立ってどうしたの?」
「え?」
普段普通の挨拶くらいは交わすけれど、こうして自然に会話に流れていくことはほとんどなくて返答に戸惑う。
私は麻衣と里子を交互に見つめた。里子は興味を失ったのか、すぐに本へ視線を戻してしまった。
「麻衣、真美、こっちおいでよ!」
麻衣の取り巻きが雑誌を広げて手招きをしている。
「麻衣、行こ!」
真美が私の腕を掴んで歩き出す。あっけにとられたている私は転けそうになりながらもなんとか麻衣についていった。
「やっぱり今年の新作バッグはどれもかわいいねぇ」
「絶対欲しいよね! でもちょっと高いかぁ」
「高校生になったらバイトして、欲しいもの全部買うんだなぁ!」
「欲張り!」
麻衣の友人らに混ざってファッション誌へ視線を向ける。そこには今年の流行の小物が載っていた。
でも、これはどういうことだろう。どうして私はこんなふうに麻衣たちと一緒にいるんだろう。
「真美今日はどうしたの? やけに静かなじゃい?」
麻衣が首をかしげてこちらへ視線を向ける。
「え、えっと、そう、かな?」
なんだかわからないまま、笑顔を浮かべてみる。
「いつもの真美だったら、『これ欲しい』とか『これ可愛い』とか、言ってくるじゃん」
いつもの真美という言葉に心臓がドクンッと跳ねた。さっき里子もいつも読んでるけどと言っていた。
でも私の記憶では昨日まではこんなことはなかったはずだ。麻衣たちと一緒に雑誌を囲んで読んだことなんて一度もない。
混乱する頭の中に浮かんできたのは昨日の七不思議だった。
交換階段。それを私はやってみたんだ。
交換階段をすると、その翌日には願いが反映されるのだと里子は言っていた。
まさか、あれが本物だった……?
そんなわけないという気持ちと、実際に里子や麻衣の態度が普段と違うことが交差する。
「真美、本当に大丈夫?」
麻衣が心配そうな顔つきになる。
「だ、大丈夫だよ」
自分だけおかしなことを他に悟られてはいけない。私はそう思って、必死で麻衣に合わせたのだった。
☆☆☆
最初はとまどうことが多かったけれど、麻衣はいつでもにぎやかで、その輪の中にいることで私も同じ様に楽しい気持ちになっていた。
元々ファッションには興味があったし、麻衣たちの知っている流行を聞くだけで勉強にもなった。
「今度の休みは買い物行こうよ!」
「いいね!」
麻衣たちは週末になると少し遠出をしてもブランドもののお店がある街まででかけていくらしい。
だから学校へ持ってきている小物や文房具も、この辺では見かけないものなのだと、やっと理解できた。そのくらい、麻衣たちの意識は高いんだ。
「中学出たら絶対この街から出るんだぁ。もっとおしゃれな街に暮らすの!」
それが麻衣の夢だった。
その夢に向かって確実に進んでいく麻衣の姿は眩しくて、今まで夢を持ったことのない私には尊敬するところも多かった。
どんなことがキッカケになって夢を持つかわからない。麻衣たちは常にそのアンテナをはっているように思えた。
「すごいねみんな」
「どうしたの真美。そんなしみじみした顔してさ」
「そうだよ、なんか今日変だよ?」
みんなの中で昨日までの私は、きっと明るくて前向きで、麻衣たちと釣り合う存在だったんだろう。
不思議そうな視線を向けられてしまった。
「ううん、なんでもない。私も夢とか持てたらいいなぁと思っただけ」
できるだけ明るく、違和感のないようにしゃべる。
麻衣たちと深く関わることで、話し方にも特徴があることがわかってきたから、それを真似る。
「よ~し! じゃあ今日はみんなで遊びに行こうか!」
麻衣が指揮を切ってみんなを誘う。
「いいね! 新しいメーク道具見に行きたかったんだ」
「私も!」
そんな声が次々と上がる中麻衣がこちらを見た。
「真美も行くよね?」
「う、うん!」
私は大きく頷いたのだった。
☆☆☆
里子はバス通学だから、こうして放課後みんなと遊びに行くのは久しぶりのことだった。
彼氏の海人となら何度か放課後デートをしているけれど、こんなに明るく、華やかにはならない。
「麻衣、今年の秋のメークってなにが来そう?」
「う~ん、今年の秋はねぇ」
若い子向けのメークブランド店でみんなそんな会話をしている。誰よりも流行に敏感な麻衣はあちこちで友達から引っ張りだこだ。
「真美、今日は完全にノーメイクだよね。どうかしたの?」
「別に、どうもしてないけど……」
普段から日焼け止めくらいしかつけない私は麻衣の言葉に戸惑う。
「してあげるから、ここに座って」
そこは店内でメーク道具のお試しができるコーナーだった。
こんなところがあるなんて事自体初めて知った私は戸惑いながらも、麻衣に言われるまま椅子に座る。
そこから先はまるで魔法みたいだった。麻衣が手を動かしたそばから私の顔が変化していく。
目は倍くらいに大きく、眉は柔らかく優しそうな印象に、唇はうるうるに。そして出来上がった自分の姿に驚いて鏡に見入ってしまった。
「すごい! まるで別人みたい!」
驚く私に麻衣は自信満々に微笑んだ。
「私メークの腕上げたでしょう?」
「こんなことができるなんて本当にすごいよ!」
鏡の中私はまるで別人だ。親が見たらきっと驚くだろう。
「将来はメークアップアーティストになるんだもん。当然でしょう?」
胸を張る麻衣の姿がとてもまぶしい。
「それでこの街を出るの?」
麻衣は大きく頷く。
「そうだよ。私は芸能人やモデルさんを綺麗にしてあげたい」
「麻衣が芸能人やモデルになったらいいのに!」
それくらい綺麗で華があると思う。
「あはは! ありがと」
麻衣は照れ隠しなのか大きな声で笑って、私の肩を叩いたのだった。
☆☆☆
麻衣が友達でよかった。
麻衣は今まで私が知らなかった世界を沢山見せてくれた。たった一日で、自分の人生まで変わってしまったかのように感じられる。
「まだドキドキしてる」
家に帰ってからも興奮しているみたいで、なかなか落ち着いて勉強することができなかった。
手鏡を取り出して何度も自分の顔を確認した。
家に帰ってきてもその美しい顔には変わりがなかった。
こんなことができるんなんて本当にすごい! 宿題をそっちのけで自分の顔をジッと見つめ、溜息を吐き出す。ここまでじっくりと自分の顔を見たのは初めての経験だった。
この後お風呂に入ってメークを落とさないといけないことが、もったいなくて仕方ない。
「そうだ! 里子にも教えてあげよう!」
そう思い立ってスマホを掴み、里子とのメッセージ画面を表示しようとする。けれどどこを探しても里子の名前が出てこないのだ。
「あれ、おかしいな」
試しに登録してある電話帳を確認してみるけれど、そこからも里子の名前が消えていたのだ。
「なんで……?」
呟いた瞬間、里子はもう自分の友達ではないことを思い出した。友達じゃないから、メッセージのやりとりなどしていないのだ。
登録情報は消えて、代わりに麻衣と、その友人らの情報が入っている。
「嘘、登録情報まで消えちゃうなんて聞いてない!」
慌てて里子とのやりとりの痕跡を探すけれど、ひとつも残されていないことがわかった。
電話もメッセージも写真も、すべての記憶から里子が削除されている。
背筋に冷たい汗が流れていく。自分はとんでもないことをしてしまったんじゃないかと、心臓が早くなる。
「でも、みんなの記憶の中では私と里子は友達じゃなくなってるんだもんね?」
自分を落ち着かせるように呟いた。
みんなの記憶の中では私は麻衣と友達なのだ。それなら、そんなに心配する必要はない。
明日からも麻衣たちと仲良くしていればいいだけんだから。
それに今日はとても楽しかった。その楽しさはきっと里子とじゃ味わえなかったものだ。
私はそっとスマホを机に置いたのだった。
「梅雨入りか」
お味噌汁を飲んでいたお父さんがテレビに視線をやってつぶやく。分厚いレンズのメガネの奥で、目がしょぼしょぼしているのが見える。
最近仕事がうまく行っていないみたいで、昨日の帰りも遅かった。きっと、あまり眠れていないんだろう。
そんなお父さんの体調変化に連動するように、お母さんの機嫌もあまりよくないみたいだ。
「真美。早くご飯食べちゃいなさい。遅刻するわよ」
中学に入学してから一度も遅刻なんてしたことのない私へ向けて、八つ当たりのように注意してくる。
私はお母さんの言葉を無視して、箸に手を伸ばしたのだった。
☆☆☆
透明な雨傘に雨が叩きつけてきて、周囲の音を消してしまう。こんなに大振りなのは久しぶりで、足元が悪くて仕方ない。
朝から最悪な気分で学校に到着すると、いつもどおり里子は先に登校してきていた。
「おはよう」
変わらず声をかけると、本を読んでいた里子が少し驚いた表情でこちらを見た。
「お、おはよう」
ぎこちない挨拶に首をかしげる。
「朝から読書なんて珍しいね」
里子が本を読み始めるのはたいてい朝のホームルームが終わってからだ。
しかし里子は首をかしげて「いつも読んでるけど……」と、ぎこちない様子で言った。
「え?」
何言ってるんだろう。いつもはこの時間は私とおしゃべりしているのに。
そう言おうとしたときだった。教室のドアが開いて麻衣たちが登校してきた。その瞬間教室の空気が一気に華やかになる。
暗くてジメジメした梅雨の時期も麻衣たちには全然関係ないみたいだ。
「おっはよ! 真美!」
麻衣が私の背中を少し痛いくらいに叩く。
「そんなところに突っ立ってどうしたの?」
「え?」
普段普通の挨拶くらいは交わすけれど、こうして自然に会話に流れていくことはほとんどなくて返答に戸惑う。
私は麻衣と里子を交互に見つめた。里子は興味を失ったのか、すぐに本へ視線を戻してしまった。
「麻衣、真美、こっちおいでよ!」
麻衣の取り巻きが雑誌を広げて手招きをしている。
「麻衣、行こ!」
真美が私の腕を掴んで歩き出す。あっけにとられたている私は転けそうになりながらもなんとか麻衣についていった。
「やっぱり今年の新作バッグはどれもかわいいねぇ」
「絶対欲しいよね! でもちょっと高いかぁ」
「高校生になったらバイトして、欲しいもの全部買うんだなぁ!」
「欲張り!」
麻衣の友人らに混ざってファッション誌へ視線を向ける。そこには今年の流行の小物が載っていた。
でも、これはどういうことだろう。どうして私はこんなふうに麻衣たちと一緒にいるんだろう。
「真美今日はどうしたの? やけに静かなじゃい?」
麻衣が首をかしげてこちらへ視線を向ける。
「え、えっと、そう、かな?」
なんだかわからないまま、笑顔を浮かべてみる。
「いつもの真美だったら、『これ欲しい』とか『これ可愛い』とか、言ってくるじゃん」
いつもの真美という言葉に心臓がドクンッと跳ねた。さっき里子もいつも読んでるけどと言っていた。
でも私の記憶では昨日まではこんなことはなかったはずだ。麻衣たちと一緒に雑誌を囲んで読んだことなんて一度もない。
混乱する頭の中に浮かんできたのは昨日の七不思議だった。
交換階段。それを私はやってみたんだ。
交換階段をすると、その翌日には願いが反映されるのだと里子は言っていた。
まさか、あれが本物だった……?
そんなわけないという気持ちと、実際に里子や麻衣の態度が普段と違うことが交差する。
「真美、本当に大丈夫?」
麻衣が心配そうな顔つきになる。
「だ、大丈夫だよ」
自分だけおかしなことを他に悟られてはいけない。私はそう思って、必死で麻衣に合わせたのだった。
☆☆☆
最初はとまどうことが多かったけれど、麻衣はいつでもにぎやかで、その輪の中にいることで私も同じ様に楽しい気持ちになっていた。
元々ファッションには興味があったし、麻衣たちの知っている流行を聞くだけで勉強にもなった。
「今度の休みは買い物行こうよ!」
「いいね!」
麻衣たちは週末になると少し遠出をしてもブランドもののお店がある街まででかけていくらしい。
だから学校へ持ってきている小物や文房具も、この辺では見かけないものなのだと、やっと理解できた。そのくらい、麻衣たちの意識は高いんだ。
「中学出たら絶対この街から出るんだぁ。もっとおしゃれな街に暮らすの!」
それが麻衣の夢だった。
その夢に向かって確実に進んでいく麻衣の姿は眩しくて、今まで夢を持ったことのない私には尊敬するところも多かった。
どんなことがキッカケになって夢を持つかわからない。麻衣たちは常にそのアンテナをはっているように思えた。
「すごいねみんな」
「どうしたの真美。そんなしみじみした顔してさ」
「そうだよ、なんか今日変だよ?」
みんなの中で昨日までの私は、きっと明るくて前向きで、麻衣たちと釣り合う存在だったんだろう。
不思議そうな視線を向けられてしまった。
「ううん、なんでもない。私も夢とか持てたらいいなぁと思っただけ」
できるだけ明るく、違和感のないようにしゃべる。
麻衣たちと深く関わることで、話し方にも特徴があることがわかってきたから、それを真似る。
「よ~し! じゃあ今日はみんなで遊びに行こうか!」
麻衣が指揮を切ってみんなを誘う。
「いいね! 新しいメーク道具見に行きたかったんだ」
「私も!」
そんな声が次々と上がる中麻衣がこちらを見た。
「真美も行くよね?」
「う、うん!」
私は大きく頷いたのだった。
☆☆☆
里子はバス通学だから、こうして放課後みんなと遊びに行くのは久しぶりのことだった。
彼氏の海人となら何度か放課後デートをしているけれど、こんなに明るく、華やかにはならない。
「麻衣、今年の秋のメークってなにが来そう?」
「う~ん、今年の秋はねぇ」
若い子向けのメークブランド店でみんなそんな会話をしている。誰よりも流行に敏感な麻衣はあちこちで友達から引っ張りだこだ。
「真美、今日は完全にノーメイクだよね。どうかしたの?」
「別に、どうもしてないけど……」
普段から日焼け止めくらいしかつけない私は麻衣の言葉に戸惑う。
「してあげるから、ここに座って」
そこは店内でメーク道具のお試しができるコーナーだった。
こんなところがあるなんて事自体初めて知った私は戸惑いながらも、麻衣に言われるまま椅子に座る。
そこから先はまるで魔法みたいだった。麻衣が手を動かしたそばから私の顔が変化していく。
目は倍くらいに大きく、眉は柔らかく優しそうな印象に、唇はうるうるに。そして出来上がった自分の姿に驚いて鏡に見入ってしまった。
「すごい! まるで別人みたい!」
驚く私に麻衣は自信満々に微笑んだ。
「私メークの腕上げたでしょう?」
「こんなことができるなんて本当にすごいよ!」
鏡の中私はまるで別人だ。親が見たらきっと驚くだろう。
「将来はメークアップアーティストになるんだもん。当然でしょう?」
胸を張る麻衣の姿がとてもまぶしい。
「それでこの街を出るの?」
麻衣は大きく頷く。
「そうだよ。私は芸能人やモデルさんを綺麗にしてあげたい」
「麻衣が芸能人やモデルになったらいいのに!」
それくらい綺麗で華があると思う。
「あはは! ありがと」
麻衣は照れ隠しなのか大きな声で笑って、私の肩を叩いたのだった。
☆☆☆
麻衣が友達でよかった。
麻衣は今まで私が知らなかった世界を沢山見せてくれた。たった一日で、自分の人生まで変わってしまったかのように感じられる。
「まだドキドキしてる」
家に帰ってからも興奮しているみたいで、なかなか落ち着いて勉強することができなかった。
手鏡を取り出して何度も自分の顔を確認した。
家に帰ってきてもその美しい顔には変わりがなかった。
こんなことができるんなんて本当にすごい! 宿題をそっちのけで自分の顔をジッと見つめ、溜息を吐き出す。ここまでじっくりと自分の顔を見たのは初めての経験だった。
この後お風呂に入ってメークを落とさないといけないことが、もったいなくて仕方ない。
「そうだ! 里子にも教えてあげよう!」
そう思い立ってスマホを掴み、里子とのメッセージ画面を表示しようとする。けれどどこを探しても里子の名前が出てこないのだ。
「あれ、おかしいな」
試しに登録してある電話帳を確認してみるけれど、そこからも里子の名前が消えていたのだ。
「なんで……?」
呟いた瞬間、里子はもう自分の友達ではないことを思い出した。友達じゃないから、メッセージのやりとりなどしていないのだ。
登録情報は消えて、代わりに麻衣と、その友人らの情報が入っている。
「嘘、登録情報まで消えちゃうなんて聞いてない!」
慌てて里子とのやりとりの痕跡を探すけれど、ひとつも残されていないことがわかった。
電話もメッセージも写真も、すべての記憶から里子が削除されている。
背筋に冷たい汗が流れていく。自分はとんでもないことをしてしまったんじゃないかと、心臓が早くなる。
「でも、みんなの記憶の中では私と里子は友達じゃなくなってるんだもんね?」
自分を落ち着かせるように呟いた。
みんなの記憶の中では私は麻衣と友達なのだ。それなら、そんなに心配する必要はない。
明日からも麻衣たちと仲良くしていればいいだけんだから。
それに今日はとても楽しかった。その楽しさはきっと里子とじゃ味わえなかったものだ。
私はそっとスマホを机に置いたのだった。
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