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今度こそ
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1日の仕事を終えて会社から出ると、そこに一樹が待っていた。
なにも約束はしていなかったのに一樹は優莉奈の姿を見るなり近づいてきた。
その顔には笑みが浮かんでいる。
周りを見回してみても誰もいないことから、優莉奈を待っていたことがわかる。
「お疲れさま」
「お、お疲れさまです」
突然目の前に一樹が現れたことに動揺しつつ、どうにか挨拶をする。
「今日はこのまま真っ直ぐ帰るの?」
ごく自然に質問されて少しだけ緊張がほぐれた。
「そうですね。コンビニでもよって帰るつもりです」
朝ごはんを仕掛けてこなかったから、今日の晩ごはんはコンビニ弁当で決まりだった。
毎日だと飽きてしまうけれど、月に数回ならコンビニのお弁当も美味しく食べられるし、自分の生活に気負いすぎないために必要な息抜きでもあった。
だけどそれを一樹に知られるのはちょっとだけ恥ずかしくて頬が赤らんだ。
いつもズボラをしていると思われなければいいけれど。
「よかった。それなら一緒に御飯に行かない?」
「ご、ご飯ですか?」
それはまた約束を取り付けて行くものだと思っていたので、優莉奈は慌てふためいてしまう。
今日はジーンズにTシャツというとてもラフな格好だから、おしゃれなお店にはとても行けそうにない。
「大丈夫。そこにイタリアンだから」
そう言って一樹が指差したのは会社の斜め向かい側にあるファミリーレストランだった。
それを知ってホッと胸をなでおろした。
あそこなら、それほど格好を気にすることもなさそうだ。
なによりも一樹とふたりで高級レストランなんかに行くと緊張して味がわからなくなるに決まっている。
その点においても安心できた。
「それとも、もっとオシャレなところがいいかな? 今から予約ができるお店は……」
スマホを取り出して近辺のお店を調べ始めたので優莉奈はすぐに止めに入った。
「あのお店で十分です!」
「そう? 初デートで休み店だと嫌われるって、なにかで見たことがあったけど」
ブツブツと呟く中に聞き捨てならない単語があった。
初デート!?
これって一樹さんにとって初デートなの!?
そう思うととたんに優莉奈の心臓はバクバクと早鐘を打ち始める。
緊張で手と足が一緒に出てしまうくらいだ。
「俺なにか変なこと言ったかな?」
優莉奈の態度が急変したことに気がついて、一樹が心配気な表情になる。
「そ、そんなことないです」
どうにかレストランに到着すると中は家族連れが多く賑やかで、優莉奈の緊張がほどよくほぐれた。
「ごめん、やっぱりここじゃ落ち着かないんじゃない?」
4人席へ座ってから一樹が申し訳なさそうな顔を浮かべる。
「全然大丈夫です」
むしろこのくらいの喧騒があったほうが気楽でいい。
なにか失敗したとしても、笑ってごまかせる雰囲気もある。
ふたりはドリンクバーとパスタをピザを注文した。
出てくるまでに色々と会話しようと思ったのだけれど、さすがはファミリーレストラン。
それほど待つことなく料理が運ばれてきた。
目の前で湯気を立てる美味しそうなクリームパスタに急速に空腹感が湧いてきた。
仕事が終わった直後は確かにお腹が減っていたけれど、一樹が待っていたことで驚いてしまって、空腹感がどこかへ飛んでいってしまっていたのだ。
「うわぁ、おいしそう」
フォークとスプーンを使ってクルクルと麺を巻きつけていって口に運ぶ。
つるりとした舌触りと、クリームのまろやかさが口一杯にひろがって幸せに包まれる。
「おいしーい」
思わず子供みたいにはしゃいだ声を出してしまった。
自然と頬もほころぶ。
普段、自分ではあまりパスタを作らないから、美味しさもひとしおなのだ。
「喜んでもらえてよかった」
一樹も自分が注文したトマトパスタを食べすすめる。
食事をしながらの会話はもっぱらふたりの趣味に関することだった。
一樹との共通の趣味は映画鑑賞で、新しい映画が上映されるとつい映画館に足が向かうと言っていた。
一方の優莉奈は家でのんびり映画を見るのが好きだった。
そのため流行り物よりも、少し昔の映画を見ることがおおかった。
「それなら今度は一緒に映画を見に行こうか。家でもいいし、映画館でもいい」
「そうですね」
頷いてから気がついた。
家で見ることになったら、当然どちらかの部屋に行くことになる。
そう考えると急に恥ずかしくなってしまってうつむいてしまった。
今更こんなことで恥ずかしがることもないのだけれど、イケメンが相手だとどうしても妙に意識してしまう。
「さて、そろそろ出ようか」
デザートのアイスまで美味しく頂いて、会計は一樹が全部持ってくれた。
ファミレスだから金額も大したことなく、優莉奈も素直に甘えることができた。
外に出て夜道を歩いていると風が心地よく頬をなでていく。
「家はどっち?」
「あっちです」
一樹に質問されて優莉奈はごく当たり前のように答えていた。
でもよく考えたら家を教えてしまったことになるのだ。
「それなら近くまで送ってくよ」
そう言われて手を握られた瞬間、また心臓がドクンッと跳ねる。
そろそろと顔を上げて横を歩く一樹を見てみれば、やっぱりカッコイイ。
道行く女性たちがみんな一樹を見ているような気がして、なんだかいたたまれない気持ちになってくる。
自分と一樹が並んでいるのを見て他の人たちはどう思ってるんだろう?
絶対、釣り合っているとは思われていなさそうだ。
自分に対する侮蔑の声が聞こえてきそうでこわい。
こんなこと考えても無駄なのに、どうしても気になってしまう。
「私のマンション、ここです」
灰色のマンション・ビルの前で立ち止まると一樹から手を離した。
少し寂しい気もしたけれど、安堵している自分もいる。
一樹と一緒にいるとまだまだ緊張し通しだ。
「それじゃまた明日」
一樹はそのまま手を振って帰っていった。
一瞬部屋に上がると言われるかもしれないと思っていたので、そこでも安堵した。
「あぁ、疲れたぁ」
ご飯は美味しかったし会話も楽しかった。
だけど気づかれした部分が多くあったかもしれない。
「でもまぁ、付き合い始めのカップルってこんなもんだし」
と、呟いて一樹とはまだ正式に付き合い始めていないことを思い出し、ひとりで赤面してしまった。
私ってば先走りすぎなんだよね。
先走って考えすぎれば、この恋もまた失敗するかもしれない。
「気をつけなきゃ」
自分にそう言い聞かせて浴室へと向かったのだった。
☆☆☆
「あれれ、先輩? なんだか肌の調子がよさそうじゃないですかぁ?」
どうしてマイちゃんはこんなに鋭いんだろう。
翌日の会社でさっそく肌の調子を指摘したマイちゃんも、いつものことながらツヤツヤとした肌を輝かせている。
自分こそお肌ツヤツヤだけどなにかいいことあった?
と、質問してみたかったけれど、彼氏とのノロケ話を聞かされるだけだろうからやめておいた。
「別に、そんなことないと思うけど」
無難な答え方をするとマイちゃんは不服そうな表情になった。
「そうですかぁ? 昨日なにかいいことあったんじゃないですかぁ?」
食い下がってくるマイちゃんを無視してパソコンの電源を入れる。
立ち上がるのを待つ間に目元のマッサージをすることにした。
ずっとデスクに張り付いて仕事をしていると、どうしても眼精疲労が溜まっていく。
一方マイちゃんはいつもどおり手鏡とリップを準備している。
「もしかして小野木さんといいことあったんですか?」
リップを塗り直しながら器用に話しかけてくる。
「別に、食事をしただけ」
なんでもない風に言ってみたけれど、マイちゃんはすぐに目を輝かせた。
「いいなぁ! 小野木さんと食事なんてしちゃって。他の女性社員に恨まれますよ、絶対に!」
そんな嫌なことを強調して言わなくてもいいのに。
もしかしてマイちゃんも嫉妬してるタイプかな?
そんなことを考えてふくれっ面になっているところへ俊介がやってきた。
「はよ~」
朝から間抜けな声になんだか脱力してしまう。
よく見ればいつもは髪の毛もちゃんと整えているのに、今日は後ろのほうが寝癖で立っている。
目もしょぼしょぼさせていて明らかに眠り足りていないみたいだ。
「寝てないの?」
俊介は欠伸をしながら席に座り、それから「そうなんだよな」と、頷いた。
「だけど谷川さんの肌もツヤツヤしてません?」
リップを直し終えたマイちゃんがまたまた目ざとくそんなことを言う。
俊介はギクリとした様子で目を見開き、それからまた大あくびをした。
興味があるのかないのか、わからない反応だ。
「もしかして梓ちゃんと一緒にいた?」
「いや、そうじゃない」
優莉奈の質問に左右に首を振って否定しながらも、まんざらではない顔だ。
「実は一晩中電話してたんだ。彼女、電話好きなんだな」
そう言って照れ笑いを浮かべる。
なるほど。
一晩中あの美女の声を耳元で聞いていたのなら、そのまま寝不足になってしまうだろう。
変な妄想までしてなきゃいいけれど。
「そんなに、なにを話してたの?」
「色々だよ。仕事の話とか、趣味の話とか」
なにせお互いになにも知らない者同士だから、話し始めたらあれもこれもと話題が着きない。
気がつけばまどから朝日が差し込んでいたらしい。
寝不足だけれど俊介の心は充実していて、お肌もツヤツヤになったということだった。
「いいなぁふたりとも! 青春しちゃってぇ」
「マイちゃんだって彼氏いるでしょ」
「いますけどぉ、大学時代から付き合ってると新鮮味がなくなるっていうかぁ」
不満そうな表情のマイちゃんに「贅沢」と、ツッコミを入れる。
こっちは長く付き合いたくてもうまくいかないことばかりだったから、マイちゃんが羨ましいくらいなのに。
「とにかくさ、お互いにうまくいくといいですねぇ?」
マイちゃんが俊介と優莉奈へ向けて満面の笑みを浮かべる。
優莉奈と俊介は目を見交わせて、なんとなく気まずい笑みを互いに見せた。
その笑みの意味を、今はまだ誰も知らなかった。
☆☆☆
もしもこの恋がダメならどうなるだろう。
仕事の休憩中にふとそんなことが頭をよぎった。
優莉奈はもう27歳で、ここから新しく恋愛をはじめるのだってちょっと疲れてきている。
そんな中で一樹に声をかけられて、それでもダメだったら?
想像しただけで背筋がスッと寒くなる感じがした。
例えば元カレと同じように2年付き合って別れたら、優莉奈はそのときすでに29歳になっていることになる。
30歳手前で彼氏と別れて次の恋へ?
そんなの想像しただけでも疲れ果ててしまう。
時間も手間もかける恋愛は若いからこそできるものだと思っていた。
「どうしよう。今回の恋愛だけは絶対に成功させないと」
そんな強迫観念に囚われて思わず口に出してしまった。
「何言ってるんですか先輩。恋多き女はいい女ですよぉ?」
給湯室にひとりでいたはずなのにそんな風に声をかけられて飛び上がらんばかりに驚いた。
視線を向けると、給湯室の陰にいつの間にかマイちゃんがいて、片手にプリンを持っている。
「マ、マイちゃんいつからそこに!?」
「さっきからずっと。給湯室に入ってくるときに一声かけたんですけど、先輩全然気が付かないからぁ」
言いながらスプーンを片手にプリンを食べ始めてしまった。
「こんなところで食べるの?」
給湯室の隣にはこじんまりとした休憩スペースがあり、軽食はそこでするようになっている。
パソコンを使う仕事のため、部屋に持ち入れるのは蓋つきの飲み物のみとなっている。
「だって、休憩室じゃ他の人たちに話を聞かれちゃいますよぉ?」
それもそうだ。
「って、私は別に話を聞いてほしいわけじゃないし」
慌ててコーヒーを入れて給湯室から出る。
そのままの足で休憩室へ入っていくと、マイちゃんが後ろからついてきた。
「ま、先輩がどんな恋愛しようが関係ないですけど、でも興味はありますよねぇ」
「マイちゃんはそういうことに興味を持ちすぎなのよ」
ため息まじりに言うと、マイちゃんは首をかしげた。
「そりゃあだって、先輩は仕事も先輩でもありますけど、人生の先輩でもありますしぃ。その先輩がどんな恋愛をこれからしていくのか、聞きたくもなりません?」
なんだかいいように丸め込まれている気がする。
このままじゃ私の心の中をすべて暴露させられてしまいそうだ。
優莉奈は咳払いをしてコーヒーを一口飲む。
熱々のコーヒーがジワリと体の中に染み渡っていくのがわかる。
内部から温かいものに包み込まれているようなこの感覚が好きだった。
「それにしても意外でしたぁ」
「意外?」
「私、てっきり先輩と谷川さんが付き合うものとばかり思ってたんで。それなのにふたりとも別の人といい感じになっちゃうからぁ」
突然俊介の名前を出されてむせてしまいそうになった。
「な、なに言ってるの。どうして俊介の名前がそこで出てくるわけ?」
「だって、幼馴染なんでしょう? 運命的な再開なんでしょう? それって絶対恋愛フラグじゃないですかぁ」
説明しながらも、自分の想像とは違う展開になっていることに不服そうな顔になっている。
「少女漫画の読みすぎじゃない?」
確かにこの会社で俊介と再開したときは驚いたし、懐かしくもあった。
だけどそれだけだ。
それ以上の関係になるなんて、ちょっと考えられない。
優莉奈はゆっくりと熱いコーヒーを飲み干してマイちゃんと共に部屋へ戻ったのだった。
☆☆☆
それから数日間は何事もなく過ぎていった。
ただいつもと違ったと言えば、朝起きたときと眠る前に一樹からメッセージが届くという点だ。
《一樹:おはよう》
《一樹:おやすみ》
たったそれだけのメッセージだったけれど、読む度に優莉奈の心は暖かくなる。
思えばこんなやりとりは元カレのときにはしなかったな。
そんな風に考えてブンブンと頭を左右に振る。
終わった恋のことなんて思い出すだけムダ!
自分にそう言い聞かせて、会社へ行く準備をするのだった。
「先輩たち、明日は休日ですねぇ?」
仕事を進めている横でマイちゃんがそんなことを聞いてきた。
「そんなの、カレンダーを見ればわかるじゃない」
優莉奈はパソコン画面から視線をそらさずに答える。
俊介も仕事に打ち込んでいて、マイちゃんの言葉も届いていない様子だ。
「そうじゃなくて! デートの予定とかないんですかぁ?」
それが聞きたかったのかとため息を吐き出して手を止める。
今日は仕事が多くてデートのことを考えている余裕なんてなかった。
明日デートしたいのでああれば、まずは目の前の業務を片付ける必要がある。
「デートの前にこの仕事を片付ける必要があるんだけど、マイちゃんわかってる?」
マイちゃんはさっきから手が止まったままだ。
仕事が多いと集中力が持続しなくなってしまうのが、マイちゃんの欠点だった。
「わかってますけどぉ、飽きてきちゃって」
「仕事に飽きるとか、聞いたことないけど」
「嘘ぉ? 先輩のまわりの人たち、どれだけ仕事好きなんですかぁ?」
そう聞かれると返事に困る。
実際に仕事に秋が来ていてもマイちゃんみたいに素直にそれを口にしてしまう人がいないというだけだろうし。
「とにかく今は仕事!」
優莉奈の活にマイちゃんが嫌々ながら背筋を伸ばした。
そしてパソコン画面を睨みつける。
「わかりましたよぅ」
そう呟くように返事をした後は、マイちゃんも真剣に仕事を再開させたのだった。
☆☆☆
「おわったー!!」
すべての業務をどうにか定時内で終わらせることができた優莉奈は、椅子に座ってまま両手を点に伸ばして体をほぐした。
長時間同じ体勢のままだったから、それだけで背中がバキバキと音を立てる。
「お疲れ様」
俊介もほぼ同時に仕事が終わったようで、大あくびをしている。
マイちゃんはと言えば半死半生状態だけれど、こちらも仕事が終わったみたいだ。
今はデスクに突っ伏して半目を開けて眠っている。
「ほらマイちゃん。今日は彼氏とデートなんじゃないの?」
優莉奈がマイの肩を揺さぶるとガバッと跳ね起きた。
「そうです。今日は……デートなんです……」
起きているものの半分眠っているような状態で、上半身をフラフラと揺らす。
突っ伏していたせいで前髪に変な癖がついてしまっている。
優莉奈は自分の手鏡を取り出してマイの顔の前にかかげた。
「マイちゃん、こんな顔で彼氏と会うの?」
その問いかけにマイちゃんは完全に覚醒した。
ハッと目を見開くと鏡の中自分の姿をマジマジと見つめる。
すると「ギャアア!!」と化け物でも目撃したかのような悲鳴を上げて、化粧ポーチをむんずと掴むと女子トイレへと走っていった。
嵐のようなマイちゃんが去って、周囲に静けさが戻ってくる。
「……帰ろうか」
俊介がポツリと呟く。
「そうだね」
優莉奈はコクンとうなずいたのだった。
なにも約束はしていなかったのに一樹は優莉奈の姿を見るなり近づいてきた。
その顔には笑みが浮かんでいる。
周りを見回してみても誰もいないことから、優莉奈を待っていたことがわかる。
「お疲れさま」
「お、お疲れさまです」
突然目の前に一樹が現れたことに動揺しつつ、どうにか挨拶をする。
「今日はこのまま真っ直ぐ帰るの?」
ごく自然に質問されて少しだけ緊張がほぐれた。
「そうですね。コンビニでもよって帰るつもりです」
朝ごはんを仕掛けてこなかったから、今日の晩ごはんはコンビニ弁当で決まりだった。
毎日だと飽きてしまうけれど、月に数回ならコンビニのお弁当も美味しく食べられるし、自分の生活に気負いすぎないために必要な息抜きでもあった。
だけどそれを一樹に知られるのはちょっとだけ恥ずかしくて頬が赤らんだ。
いつもズボラをしていると思われなければいいけれど。
「よかった。それなら一緒に御飯に行かない?」
「ご、ご飯ですか?」
それはまた約束を取り付けて行くものだと思っていたので、優莉奈は慌てふためいてしまう。
今日はジーンズにTシャツというとてもラフな格好だから、おしゃれなお店にはとても行けそうにない。
「大丈夫。そこにイタリアンだから」
そう言って一樹が指差したのは会社の斜め向かい側にあるファミリーレストランだった。
それを知ってホッと胸をなでおろした。
あそこなら、それほど格好を気にすることもなさそうだ。
なによりも一樹とふたりで高級レストランなんかに行くと緊張して味がわからなくなるに決まっている。
その点においても安心できた。
「それとも、もっとオシャレなところがいいかな? 今から予約ができるお店は……」
スマホを取り出して近辺のお店を調べ始めたので優莉奈はすぐに止めに入った。
「あのお店で十分です!」
「そう? 初デートで休み店だと嫌われるって、なにかで見たことがあったけど」
ブツブツと呟く中に聞き捨てならない単語があった。
初デート!?
これって一樹さんにとって初デートなの!?
そう思うととたんに優莉奈の心臓はバクバクと早鐘を打ち始める。
緊張で手と足が一緒に出てしまうくらいだ。
「俺なにか変なこと言ったかな?」
優莉奈の態度が急変したことに気がついて、一樹が心配気な表情になる。
「そ、そんなことないです」
どうにかレストランに到着すると中は家族連れが多く賑やかで、優莉奈の緊張がほどよくほぐれた。
「ごめん、やっぱりここじゃ落ち着かないんじゃない?」
4人席へ座ってから一樹が申し訳なさそうな顔を浮かべる。
「全然大丈夫です」
むしろこのくらいの喧騒があったほうが気楽でいい。
なにか失敗したとしても、笑ってごまかせる雰囲気もある。
ふたりはドリンクバーとパスタをピザを注文した。
出てくるまでに色々と会話しようと思ったのだけれど、さすがはファミリーレストラン。
それほど待つことなく料理が運ばれてきた。
目の前で湯気を立てる美味しそうなクリームパスタに急速に空腹感が湧いてきた。
仕事が終わった直後は確かにお腹が減っていたけれど、一樹が待っていたことで驚いてしまって、空腹感がどこかへ飛んでいってしまっていたのだ。
「うわぁ、おいしそう」
フォークとスプーンを使ってクルクルと麺を巻きつけていって口に運ぶ。
つるりとした舌触りと、クリームのまろやかさが口一杯にひろがって幸せに包まれる。
「おいしーい」
思わず子供みたいにはしゃいだ声を出してしまった。
自然と頬もほころぶ。
普段、自分ではあまりパスタを作らないから、美味しさもひとしおなのだ。
「喜んでもらえてよかった」
一樹も自分が注文したトマトパスタを食べすすめる。
食事をしながらの会話はもっぱらふたりの趣味に関することだった。
一樹との共通の趣味は映画鑑賞で、新しい映画が上映されるとつい映画館に足が向かうと言っていた。
一方の優莉奈は家でのんびり映画を見るのが好きだった。
そのため流行り物よりも、少し昔の映画を見ることがおおかった。
「それなら今度は一緒に映画を見に行こうか。家でもいいし、映画館でもいい」
「そうですね」
頷いてから気がついた。
家で見ることになったら、当然どちらかの部屋に行くことになる。
そう考えると急に恥ずかしくなってしまってうつむいてしまった。
今更こんなことで恥ずかしがることもないのだけれど、イケメンが相手だとどうしても妙に意識してしまう。
「さて、そろそろ出ようか」
デザートのアイスまで美味しく頂いて、会計は一樹が全部持ってくれた。
ファミレスだから金額も大したことなく、優莉奈も素直に甘えることができた。
外に出て夜道を歩いていると風が心地よく頬をなでていく。
「家はどっち?」
「あっちです」
一樹に質問されて優莉奈はごく当たり前のように答えていた。
でもよく考えたら家を教えてしまったことになるのだ。
「それなら近くまで送ってくよ」
そう言われて手を握られた瞬間、また心臓がドクンッと跳ねる。
そろそろと顔を上げて横を歩く一樹を見てみれば、やっぱりカッコイイ。
道行く女性たちがみんな一樹を見ているような気がして、なんだかいたたまれない気持ちになってくる。
自分と一樹が並んでいるのを見て他の人たちはどう思ってるんだろう?
絶対、釣り合っているとは思われていなさそうだ。
自分に対する侮蔑の声が聞こえてきそうでこわい。
こんなこと考えても無駄なのに、どうしても気になってしまう。
「私のマンション、ここです」
灰色のマンション・ビルの前で立ち止まると一樹から手を離した。
少し寂しい気もしたけれど、安堵している自分もいる。
一樹と一緒にいるとまだまだ緊張し通しだ。
「それじゃまた明日」
一樹はそのまま手を振って帰っていった。
一瞬部屋に上がると言われるかもしれないと思っていたので、そこでも安堵した。
「あぁ、疲れたぁ」
ご飯は美味しかったし会話も楽しかった。
だけど気づかれした部分が多くあったかもしれない。
「でもまぁ、付き合い始めのカップルってこんなもんだし」
と、呟いて一樹とはまだ正式に付き合い始めていないことを思い出し、ひとりで赤面してしまった。
私ってば先走りすぎなんだよね。
先走って考えすぎれば、この恋もまた失敗するかもしれない。
「気をつけなきゃ」
自分にそう言い聞かせて浴室へと向かったのだった。
☆☆☆
「あれれ、先輩? なんだか肌の調子がよさそうじゃないですかぁ?」
どうしてマイちゃんはこんなに鋭いんだろう。
翌日の会社でさっそく肌の調子を指摘したマイちゃんも、いつものことながらツヤツヤとした肌を輝かせている。
自分こそお肌ツヤツヤだけどなにかいいことあった?
と、質問してみたかったけれど、彼氏とのノロケ話を聞かされるだけだろうからやめておいた。
「別に、そんなことないと思うけど」
無難な答え方をするとマイちゃんは不服そうな表情になった。
「そうですかぁ? 昨日なにかいいことあったんじゃないですかぁ?」
食い下がってくるマイちゃんを無視してパソコンの電源を入れる。
立ち上がるのを待つ間に目元のマッサージをすることにした。
ずっとデスクに張り付いて仕事をしていると、どうしても眼精疲労が溜まっていく。
一方マイちゃんはいつもどおり手鏡とリップを準備している。
「もしかして小野木さんといいことあったんですか?」
リップを塗り直しながら器用に話しかけてくる。
「別に、食事をしただけ」
なんでもない風に言ってみたけれど、マイちゃんはすぐに目を輝かせた。
「いいなぁ! 小野木さんと食事なんてしちゃって。他の女性社員に恨まれますよ、絶対に!」
そんな嫌なことを強調して言わなくてもいいのに。
もしかしてマイちゃんも嫉妬してるタイプかな?
そんなことを考えてふくれっ面になっているところへ俊介がやってきた。
「はよ~」
朝から間抜けな声になんだか脱力してしまう。
よく見ればいつもは髪の毛もちゃんと整えているのに、今日は後ろのほうが寝癖で立っている。
目もしょぼしょぼさせていて明らかに眠り足りていないみたいだ。
「寝てないの?」
俊介は欠伸をしながら席に座り、それから「そうなんだよな」と、頷いた。
「だけど谷川さんの肌もツヤツヤしてません?」
リップを直し終えたマイちゃんがまたまた目ざとくそんなことを言う。
俊介はギクリとした様子で目を見開き、それからまた大あくびをした。
興味があるのかないのか、わからない反応だ。
「もしかして梓ちゃんと一緒にいた?」
「いや、そうじゃない」
優莉奈の質問に左右に首を振って否定しながらも、まんざらではない顔だ。
「実は一晩中電話してたんだ。彼女、電話好きなんだな」
そう言って照れ笑いを浮かべる。
なるほど。
一晩中あの美女の声を耳元で聞いていたのなら、そのまま寝不足になってしまうだろう。
変な妄想までしてなきゃいいけれど。
「そんなに、なにを話してたの?」
「色々だよ。仕事の話とか、趣味の話とか」
なにせお互いになにも知らない者同士だから、話し始めたらあれもこれもと話題が着きない。
気がつけばまどから朝日が差し込んでいたらしい。
寝不足だけれど俊介の心は充実していて、お肌もツヤツヤになったということだった。
「いいなぁふたりとも! 青春しちゃってぇ」
「マイちゃんだって彼氏いるでしょ」
「いますけどぉ、大学時代から付き合ってると新鮮味がなくなるっていうかぁ」
不満そうな表情のマイちゃんに「贅沢」と、ツッコミを入れる。
こっちは長く付き合いたくてもうまくいかないことばかりだったから、マイちゃんが羨ましいくらいなのに。
「とにかくさ、お互いにうまくいくといいですねぇ?」
マイちゃんが俊介と優莉奈へ向けて満面の笑みを浮かべる。
優莉奈と俊介は目を見交わせて、なんとなく気まずい笑みを互いに見せた。
その笑みの意味を、今はまだ誰も知らなかった。
☆☆☆
もしもこの恋がダメならどうなるだろう。
仕事の休憩中にふとそんなことが頭をよぎった。
優莉奈はもう27歳で、ここから新しく恋愛をはじめるのだってちょっと疲れてきている。
そんな中で一樹に声をかけられて、それでもダメだったら?
想像しただけで背筋がスッと寒くなる感じがした。
例えば元カレと同じように2年付き合って別れたら、優莉奈はそのときすでに29歳になっていることになる。
30歳手前で彼氏と別れて次の恋へ?
そんなの想像しただけでも疲れ果ててしまう。
時間も手間もかける恋愛は若いからこそできるものだと思っていた。
「どうしよう。今回の恋愛だけは絶対に成功させないと」
そんな強迫観念に囚われて思わず口に出してしまった。
「何言ってるんですか先輩。恋多き女はいい女ですよぉ?」
給湯室にひとりでいたはずなのにそんな風に声をかけられて飛び上がらんばかりに驚いた。
視線を向けると、給湯室の陰にいつの間にかマイちゃんがいて、片手にプリンを持っている。
「マ、マイちゃんいつからそこに!?」
「さっきからずっと。給湯室に入ってくるときに一声かけたんですけど、先輩全然気が付かないからぁ」
言いながらスプーンを片手にプリンを食べ始めてしまった。
「こんなところで食べるの?」
給湯室の隣にはこじんまりとした休憩スペースがあり、軽食はそこでするようになっている。
パソコンを使う仕事のため、部屋に持ち入れるのは蓋つきの飲み物のみとなっている。
「だって、休憩室じゃ他の人たちに話を聞かれちゃいますよぉ?」
それもそうだ。
「って、私は別に話を聞いてほしいわけじゃないし」
慌ててコーヒーを入れて給湯室から出る。
そのままの足で休憩室へ入っていくと、マイちゃんが後ろからついてきた。
「ま、先輩がどんな恋愛しようが関係ないですけど、でも興味はありますよねぇ」
「マイちゃんはそういうことに興味を持ちすぎなのよ」
ため息まじりに言うと、マイちゃんは首をかしげた。
「そりゃあだって、先輩は仕事も先輩でもありますけど、人生の先輩でもありますしぃ。その先輩がどんな恋愛をこれからしていくのか、聞きたくもなりません?」
なんだかいいように丸め込まれている気がする。
このままじゃ私の心の中をすべて暴露させられてしまいそうだ。
優莉奈は咳払いをしてコーヒーを一口飲む。
熱々のコーヒーがジワリと体の中に染み渡っていくのがわかる。
内部から温かいものに包み込まれているようなこの感覚が好きだった。
「それにしても意外でしたぁ」
「意外?」
「私、てっきり先輩と谷川さんが付き合うものとばかり思ってたんで。それなのにふたりとも別の人といい感じになっちゃうからぁ」
突然俊介の名前を出されてむせてしまいそうになった。
「な、なに言ってるの。どうして俊介の名前がそこで出てくるわけ?」
「だって、幼馴染なんでしょう? 運命的な再開なんでしょう? それって絶対恋愛フラグじゃないですかぁ」
説明しながらも、自分の想像とは違う展開になっていることに不服そうな顔になっている。
「少女漫画の読みすぎじゃない?」
確かにこの会社で俊介と再開したときは驚いたし、懐かしくもあった。
だけどそれだけだ。
それ以上の関係になるなんて、ちょっと考えられない。
優莉奈はゆっくりと熱いコーヒーを飲み干してマイちゃんと共に部屋へ戻ったのだった。
☆☆☆
それから数日間は何事もなく過ぎていった。
ただいつもと違ったと言えば、朝起きたときと眠る前に一樹からメッセージが届くという点だ。
《一樹:おはよう》
《一樹:おやすみ》
たったそれだけのメッセージだったけれど、読む度に優莉奈の心は暖かくなる。
思えばこんなやりとりは元カレのときにはしなかったな。
そんな風に考えてブンブンと頭を左右に振る。
終わった恋のことなんて思い出すだけムダ!
自分にそう言い聞かせて、会社へ行く準備をするのだった。
「先輩たち、明日は休日ですねぇ?」
仕事を進めている横でマイちゃんがそんなことを聞いてきた。
「そんなの、カレンダーを見ればわかるじゃない」
優莉奈はパソコン画面から視線をそらさずに答える。
俊介も仕事に打ち込んでいて、マイちゃんの言葉も届いていない様子だ。
「そうじゃなくて! デートの予定とかないんですかぁ?」
それが聞きたかったのかとため息を吐き出して手を止める。
今日は仕事が多くてデートのことを考えている余裕なんてなかった。
明日デートしたいのでああれば、まずは目の前の業務を片付ける必要がある。
「デートの前にこの仕事を片付ける必要があるんだけど、マイちゃんわかってる?」
マイちゃんはさっきから手が止まったままだ。
仕事が多いと集中力が持続しなくなってしまうのが、マイちゃんの欠点だった。
「わかってますけどぉ、飽きてきちゃって」
「仕事に飽きるとか、聞いたことないけど」
「嘘ぉ? 先輩のまわりの人たち、どれだけ仕事好きなんですかぁ?」
そう聞かれると返事に困る。
実際に仕事に秋が来ていてもマイちゃんみたいに素直にそれを口にしてしまう人がいないというだけだろうし。
「とにかく今は仕事!」
優莉奈の活にマイちゃんが嫌々ながら背筋を伸ばした。
そしてパソコン画面を睨みつける。
「わかりましたよぅ」
そう呟くように返事をした後は、マイちゃんも真剣に仕事を再開させたのだった。
☆☆☆
「おわったー!!」
すべての業務をどうにか定時内で終わらせることができた優莉奈は、椅子に座ってまま両手を点に伸ばして体をほぐした。
長時間同じ体勢のままだったから、それだけで背中がバキバキと音を立てる。
「お疲れ様」
俊介もほぼ同時に仕事が終わったようで、大あくびをしている。
マイちゃんはと言えば半死半生状態だけれど、こちらも仕事が終わったみたいだ。
今はデスクに突っ伏して半目を開けて眠っている。
「ほらマイちゃん。今日は彼氏とデートなんじゃないの?」
優莉奈がマイの肩を揺さぶるとガバッと跳ね起きた。
「そうです。今日は……デートなんです……」
起きているものの半分眠っているような状態で、上半身をフラフラと揺らす。
突っ伏していたせいで前髪に変な癖がついてしまっている。
優莉奈は自分の手鏡を取り出してマイの顔の前にかかげた。
「マイちゃん、こんな顔で彼氏と会うの?」
その問いかけにマイちゃんは完全に覚醒した。
ハッと目を見開くと鏡の中自分の姿をマジマジと見つめる。
すると「ギャアア!!」と化け物でも目撃したかのような悲鳴を上げて、化粧ポーチをむんずと掴むと女子トイレへと走っていった。
嵐のようなマイちゃんが去って、周囲に静けさが戻ってくる。
「……帰ろうか」
俊介がポツリと呟く。
「そうだね」
優莉奈はコクンとうなずいたのだった。
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