3 / 4
3
しおりを挟む
「ルイ~。」
「あ、ディーン。」
調理場の前を通ると調理中のディーンさんが俺を見つけて手招きした。
走って近寄ると横には大きなボウルにジャガイモが乗っていた。
「すまんが、少し手伝ってくれるかな?」
「ジャガイモの皮剥き?」
「あぁ、ティオ達が別件の仕事でな。」
料理人は他にもいるが、今日はメインのティオ・ウォーレン・レヴィの3人は諜報活動で森へ行っているらしい。
「すぐ帰る予定だったんだが、さっき連絡蝶が来て帰りが遅くなるらしい。」
連絡蝶…それは連絡手段の一種で、手紙を魔力封じて出来た蝶々が送り先まで飛んでくる。
大昔は生きている魔鳥を使っていたようだけど他の魔獣にウッカリ食べられてしまう事もあったらしく、魔法も色々と開発されて今ではここまで進歩した。
正直人間界のスマホ?…みたいな物があれば良いんだけど、俺達の世界は魔法に頼り過ぎていて科学はかなり発展途上だ。きっとこの先もそうだろう。
「じゃぁ、今度俺の大好物のやつ作ってよ。」
「ん~…あの人間界で食べたっていうアイスクリームか?」
「それっ!…で、生クリームと果物添えんのっ♪」
「…お前、あっまいの好きだよなぁ。」
「うん、人間界のイチゴってやつを前に食べたけど、あれもう一度食べたいっ!」
「あれな、今度人間界に調査で行くから持って帰ってきてやるよ。」
「やったぁ♪じゃぁ頑張って手伝う!」
「よしよし、頑張って手伝ってくれ。賄い分と合わせて結構あるからなぁ。」
リュー様以外の俺達は多かれ少なかれ、みんな食事を必要としている。
毎日美味しい料理を作ってくれているディーンは魔法の手を持ってると思う。
どうしたらあんなに美味しいものを作り出せるんだろう。
「お前は剣術が長けているせいか、本当に刃物使いが上手だよなぁ。」
「アハハ…インキュバスなのにね。」
「まぁ、それもアリじゃないか?人間界でも色々な才能を持ってる奴がいる。俺達魔族だってアンドリュー様みたいな人間臭い主人だっているんだ。インキュバスだからって剣術が強くて何が悪いんだって俺は思うね。」
「ディーン…」
「なりたい才能と出来る才能は誰しも同じとは限らない。俺だって家督を継いで魔族の騎士として一線で働きたかったけど才能がなかった。家を追い出された時にアンドリュー様が拾ってくれなかったら俺は今ここにいなかっただろう。」
そうだ、シャーリーやディーン…ここにいるほとんどの者はリュー様に救われている。
「魔界じゃ変わり者として言われているけど、俺はそんなアンドリュー様が大好きだね。」
「…うん…俺も…あっ。」
___ピッ___
「ルイッ!」
つい油断をして刃が滑って軽く指を切ってしまった。
「油断しちゃった、ごめんなさい。」
「大丈夫か…血が出てるじゃないか。」
ディーンが俺の手首を掴んで自分の唇へと持っていき指を含んだ。
「…んっ…」
___チュク…___
「…ぁ…」
「…大丈夫みたい……あ゛。」
___ゴゴゴ…___
「リュ…あ、アンドリュー様。」
固まったディーンの視線の先を見ると、怖い顔をしたリュー様が立っていた。
どうしたんだろう、お腹空いて機嫌が悪くなってるのかな?
「…ルイ……怪我をしたのか?」
「はい、ついウッカリ。」
「そうですぅっ、ついウッカリ咥えてしまいましたぁっっ‼︎」
ん、ディーンさん何言ってんだ?
「ほぅ……それはいけないな…手当をしに行かねば。ちょうど俺の部屋に傷を手当する箱がある。一緒に行こう。」
「え…でも俺…お手伝いが…」
「いぃいっ!大丈夫だからっ‼︎」
「そう?じゃぁ…」
俺はリュー様に連れられ、リュー様の寝室へとやってきた。
リュー様の寝室へはほとんど入った事がない。
側近のレナードさんがほとんどお世話をしているし、レナードさんが難しい時はシャーリーや他の側近がお世話をしているからだ。
「そこに座りなさい。」
「はい。」
リュー様に言われて俺はベッドへ腰掛けた。
リュー様のベッドはフワフワしていて、行った事はないけど天界の雲の上ってこんな感じなのではと思った。
…指の血が止まってて良かった…垂らしてしまったら掃除が大事だもんな。
リュー様が別室から小さな箱を持ってきて開けると、小さな小瓶がいくつか入っていた。
「手を出して…」
「はい……んっ…ぁっ…」
怪我をした手を差し出すと、リュー様はゆっくりと俺の指を口に含んだ。
リュー様の指がぬるりと俺の指に絡まる。
___ゾク…___
「…んっ…」
そのままゆっくりと俺の指を出し入れしていった。
これ…何か…エッチ過ぎる…本当に治療なのかな?
「…ん…ルイ…今日は…ここに…泊まれ…」
「ぁ…え…」
指が完全に口から離れ、小瓶から液体を布に掛けて手当をしながらリュー様が言った。
「ルイの魅了が強くなって………いや違うな。」
そう言ってリュー様は言葉を詰まらせた。
「リュー様?」
「…ルイ……私は…お前が好きだ…」
「え…」
「お前の指導と言いながら、私は日に日にお前の虜となってしまったんだ。」
「リュー様…」
どうしよう…
「他に好きな者が出来たら私が妨げになったはいけないと、お前の将来を考えて指導も公にはしなかったが…ディーンにされていたあの光景を見て目が覚めた。お前を誰にも渡したくはない。」
嬉しい。
「私のものになってくれるか?」
そっと、リュー様の手が俺の手に重なった。
「……はい…喜んで…」
俺はリュー様の手を握り、そして唇へ寄せてキスをした。
「あ、ディーン。」
調理場の前を通ると調理中のディーンさんが俺を見つけて手招きした。
走って近寄ると横には大きなボウルにジャガイモが乗っていた。
「すまんが、少し手伝ってくれるかな?」
「ジャガイモの皮剥き?」
「あぁ、ティオ達が別件の仕事でな。」
料理人は他にもいるが、今日はメインのティオ・ウォーレン・レヴィの3人は諜報活動で森へ行っているらしい。
「すぐ帰る予定だったんだが、さっき連絡蝶が来て帰りが遅くなるらしい。」
連絡蝶…それは連絡手段の一種で、手紙を魔力封じて出来た蝶々が送り先まで飛んでくる。
大昔は生きている魔鳥を使っていたようだけど他の魔獣にウッカリ食べられてしまう事もあったらしく、魔法も色々と開発されて今ではここまで進歩した。
正直人間界のスマホ?…みたいな物があれば良いんだけど、俺達の世界は魔法に頼り過ぎていて科学はかなり発展途上だ。きっとこの先もそうだろう。
「じゃぁ、今度俺の大好物のやつ作ってよ。」
「ん~…あの人間界で食べたっていうアイスクリームか?」
「それっ!…で、生クリームと果物添えんのっ♪」
「…お前、あっまいの好きだよなぁ。」
「うん、人間界のイチゴってやつを前に食べたけど、あれもう一度食べたいっ!」
「あれな、今度人間界に調査で行くから持って帰ってきてやるよ。」
「やったぁ♪じゃぁ頑張って手伝う!」
「よしよし、頑張って手伝ってくれ。賄い分と合わせて結構あるからなぁ。」
リュー様以外の俺達は多かれ少なかれ、みんな食事を必要としている。
毎日美味しい料理を作ってくれているディーンは魔法の手を持ってると思う。
どうしたらあんなに美味しいものを作り出せるんだろう。
「お前は剣術が長けているせいか、本当に刃物使いが上手だよなぁ。」
「アハハ…インキュバスなのにね。」
「まぁ、それもアリじゃないか?人間界でも色々な才能を持ってる奴がいる。俺達魔族だってアンドリュー様みたいな人間臭い主人だっているんだ。インキュバスだからって剣術が強くて何が悪いんだって俺は思うね。」
「ディーン…」
「なりたい才能と出来る才能は誰しも同じとは限らない。俺だって家督を継いで魔族の騎士として一線で働きたかったけど才能がなかった。家を追い出された時にアンドリュー様が拾ってくれなかったら俺は今ここにいなかっただろう。」
そうだ、シャーリーやディーン…ここにいるほとんどの者はリュー様に救われている。
「魔界じゃ変わり者として言われているけど、俺はそんなアンドリュー様が大好きだね。」
「…うん…俺も…あっ。」
___ピッ___
「ルイッ!」
つい油断をして刃が滑って軽く指を切ってしまった。
「油断しちゃった、ごめんなさい。」
「大丈夫か…血が出てるじゃないか。」
ディーンが俺の手首を掴んで自分の唇へと持っていき指を含んだ。
「…んっ…」
___チュク…___
「…ぁ…」
「…大丈夫みたい……あ゛。」
___ゴゴゴ…___
「リュ…あ、アンドリュー様。」
固まったディーンの視線の先を見ると、怖い顔をしたリュー様が立っていた。
どうしたんだろう、お腹空いて機嫌が悪くなってるのかな?
「…ルイ……怪我をしたのか?」
「はい、ついウッカリ。」
「そうですぅっ、ついウッカリ咥えてしまいましたぁっっ‼︎」
ん、ディーンさん何言ってんだ?
「ほぅ……それはいけないな…手当をしに行かねば。ちょうど俺の部屋に傷を手当する箱がある。一緒に行こう。」
「え…でも俺…お手伝いが…」
「いぃいっ!大丈夫だからっ‼︎」
「そう?じゃぁ…」
俺はリュー様に連れられ、リュー様の寝室へとやってきた。
リュー様の寝室へはほとんど入った事がない。
側近のレナードさんがほとんどお世話をしているし、レナードさんが難しい時はシャーリーや他の側近がお世話をしているからだ。
「そこに座りなさい。」
「はい。」
リュー様に言われて俺はベッドへ腰掛けた。
リュー様のベッドはフワフワしていて、行った事はないけど天界の雲の上ってこんな感じなのではと思った。
…指の血が止まってて良かった…垂らしてしまったら掃除が大事だもんな。
リュー様が別室から小さな箱を持ってきて開けると、小さな小瓶がいくつか入っていた。
「手を出して…」
「はい……んっ…ぁっ…」
怪我をした手を差し出すと、リュー様はゆっくりと俺の指を口に含んだ。
リュー様の指がぬるりと俺の指に絡まる。
___ゾク…___
「…んっ…」
そのままゆっくりと俺の指を出し入れしていった。
これ…何か…エッチ過ぎる…本当に治療なのかな?
「…ん…ルイ…今日は…ここに…泊まれ…」
「ぁ…え…」
指が完全に口から離れ、小瓶から液体を布に掛けて手当をしながらリュー様が言った。
「ルイの魅了が強くなって………いや違うな。」
そう言ってリュー様は言葉を詰まらせた。
「リュー様?」
「…ルイ……私は…お前が好きだ…」
「え…」
「お前の指導と言いながら、私は日に日にお前の虜となってしまったんだ。」
「リュー様…」
どうしよう…
「他に好きな者が出来たら私が妨げになったはいけないと、お前の将来を考えて指導も公にはしなかったが…ディーンにされていたあの光景を見て目が覚めた。お前を誰にも渡したくはない。」
嬉しい。
「私のものになってくれるか?」
そっと、リュー様の手が俺の手に重なった。
「……はい…喜んで…」
俺はリュー様の手を握り、そして唇へ寄せてキスをした。
88
お気に入りに追加
108
あなたにおすすめの小説
かくして王子様は彼の手を取った
亜桜黄身
BL
麗しい顔が近づく。それが挨拶の距離感ではないと気づいたのは唇同士が触れたあとだった。
「男を簡単に捨ててしまえるだなどと、ゆめゆめ思わないように」
──
目が覚めたら異世界転生してた外見美少女中身男前の受けが、計算高い腹黒婚約者の攻めに婚約破棄を申し出てすったもんだする話。
腹黒で策士で計算高い攻めなのに受けが鈍感越えて予想外の方面に突っ走るから受けの行動だけが読み切れず頭掻きむしるやつです。
受けが同性に性的な意味で襲われる描写があります。
究極の雨男で疎まれていた俺ですが異世界では熱烈歓迎を受けています
まつぼっくり
BL
ずっとこの可笑しな体質が嫌だった。でも、いつかこの体質で救える命もあるんじゃないかと思っていた。
シリアスそうでシリアスではない
攻 異世界の虎さん✕ 受 究極の雨男
ムーンさんからの転載です
屈強冒険者のおっさんが自分に執着する美形名門貴族との結婚を反対してもらうために直訴する話
信号六
BL
屈強な冒険者が一夜の遊びのつもりでひっかけた美形青年に執着され追い回されます。どうしても逃げ切りたい屈強冒険者が助けを求めたのは……?
美形名門貴族青年×屈強男性受け。
以前Twitterで呟いた話の短編小説版です。
(ムーンライトノベルズ、pixivにも載せています)
BL「いっぱい抱かれたい青年が抱かれる方法を考えたら」(ツイノベBL風味)
浅葱
BL
男という性しか存在しない世界「ナンシージエ」
青年は感じやすい身体を持て余していた。でも最初に付き合ったカレシも、その後にできたカレシも、一度は抱いてくれるもののその後はあまり抱いてくれなかった。
もうこうなったら”天使”になって、絶対に抱かれないといけない身体になった方がいいかも?
と思ってしまい……
元カレ四人×青年。
天使になってしまった青年を元カレたちは受け入れるのか?
らぶらぶハッピーエンドです。
「抱かれたい青年は抱いてもらう方法を考えた」の別バージョンです。
神子様のお気に入り!
荷稲 まこと
BL
異世界に召喚された主人公、百瀬瑠衣。
そこは女性が存在しないBLゲームの世界だった。
『神子様』と呼ばれイケメンたちにちやほやされる瑠衣であったが、彼はどうも不満そうで…。
長編の合間の息抜きに書きました。
ふわっと設定なのでふわわっと読んでください。
すけべシーンには※が付いてます。
悩ましき騎士団長のひとりごと
きりか
BL
アシュリー王国、最強と云われる騎士団長イザーク・ケリーが、文官リュカを伴侶として得て、幸せな日々を過ごしていた。ある日、仕事の為に、騎士団に詰めることとなったリュカ。最愛の傍に居たいがため、団長の仮眠室で、副団長アルマン・マルーンを相手に飲み比べを始め…。
ヤマもタニもない、単に、イザークがやたらとアルマンに絡んで、最後は、リュカに怒られるだけの話しです。
『悩める文官のひとりごと』の攻視点です。
ムーンライト様にも掲載しております。
よろしくお願いします。
メゴ ~追いやられた神子様と下男の俺~
てんつぶ
BL
ニホンから呼び寄せられた神子様は、おかしな言葉しか喋られない。
そのせいであばら家に追いやられて俺みたいな下男1人しかつけて貰えない。
だけどいつも楽しそうな神子様に俺はどんどん惹かれていくけれど、ある日同僚に襲われてーー
日本人神子(方言)×異世界平凡下男
旧題「メゴ」
水嶋タツキ名義で主催アンソロに掲載していたものです
方言監修してもらいましたがおかしい部分はお目こぼしください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる