10 / 21
9
しおりを挟む
「マコ、ここに座りなさい。」
「……やだ…って、わわっ!」
何となく説教されると思っていたので断ったら無理矢理抱き上げられてソファーに座らされた。
「………何だよ…」
「ハァ…マコは自覚なさ過ぎ。」
ユキに1人で勝手に人気の無い所に行くなと説教された。
確かにさ…攻略対象の2人に変な絡まれ方したけどさぁ…俺、モブよ?お助けキャラよ??
基本どこに行っても大丈夫なはずじゃん。
少し不満があったので反論したらケンカになり、俺達は寝る以外別行動となった。
今までならユキから謝ってくるのにその気配もなく1週間が過ぎ…流石に不安になった時に用事が一段落ついた実咲が休日ランチに誘ってくれた。
「…で、何でこうなってんの?やっと3人で一緒にいれると思ったらユキに断られたんだけど?」
「……俺、悪くないもん。」
「もん…じゃ、分かんないだろ。」
ケンカの事情を説明し、話しが終わると実咲から同じ事を言われた。
「そりゃ、マコが悪い。」
「えぇ⁉何でだよっ。」
「そろそろ寮長・副寮長の選抜だろ?マコ、結構世話好きだから目を付けられてんだよ。」
「そうなのか?」
「俺達の生徒会とかの手伝いの件だって、元々はマコに頼もうとしてたのを俺達がそれぞれ受け持ったんだからな。そうじゃなきゃ、今頃お前は生徒会関係者だ。」
「えぇぇ…」
何だよ、その展開。
「ユキはお前が大変な思いをして欲しくなかったみたいだぞ。」
そっか…だからあんなに慌てて…
「ゴメン…」
「…ん…謝るの人が違うだろ?」
「うん…そうだな。でも、実咲も手伝ってくれてただろ?だから、ゴメン。」
「フフッ、俺は別にこういうのって嫌いじゃないから良いんだけどさ。」
実咲が俺の後ろに周り、俺を立ち上がらせて背中を押した。
「ま、取り敢えず謝ってこい。」
「…うん…実咲。」
「何?」
「いつもありがとな。」
「良いよ、何かあったらいつでも俺に言ってくれよな。」
「うん。」
…あれ?何か引っ掛かるけど今はそんな事言ってられない。
俺は部屋に戻ってみると1枚の紙があった。
___学校の桜の木の下に来て___
実咲とは仲良くやってはいるけど本格的な恋愛に発展していない。
多分学級委員や生徒会側でのイベントが発生しているはずだけどユキは俺以外に美咲にしか『ユキ』呼びを許してないし、あったとしても発展している気配はない。
今回いくつか違う事はあるけど、一番は俺がお助けキャラとしての役目を果たしていない事だろうか…
………ん、待てよ?………
あ、そっか。
実咲との相談を寮じゃ出来ないから学校で分かりやすい所に呼び出したのか。
実咲、毎回ノックもせずに俺達の部屋に来るもんな。
もしかしたら向こうも謝ろうとしてるのかもしれない。
フフッ、ユキも頑固なとこあるもんなぁ…うんうん、今回の人生は今までとは違うけど、財前の時に警戒すべきだったよな。
実咲以外でモブと引っ付いたらフォロー出来ないし、俺も気を引き締めないと…
俺達寮生は学校と同じ敷地内なので、自宅生と違って行き来がしやすい。
寮と学校の間にある通用門の警備員に学生証を見せて「忘れ物をした」「生徒会の用事で」と言えば通してくれる。
毎日挨拶をしているので俺やユキは尚更顔パスに近かった。
大きな桜の木の下に来ると既にユキが待っていた。
「ゴメン、待たせたな。」
まだまだ桜も咲く前で北風に葉がカラカラと鳴いている。
今日は幸い暖かい日で良かったけど、夜になったら寒くなりそうだ。
「あのさ…」
「ゴメン!」
俺が謝るより先にユキが謝ってきた。
「俺もゴメン!ユキ、実咲と一緒に俺の代わりに手伝いに行ってくれてたんだろ?それに先輩達の事も俺…知らなくて…」
それは全てユキに起こる事だったし。
「ううん、手伝いに関しては俺も言われてたから大丈夫。その時横にいた実咲も自分が手伝うって言ってくれてたし。先輩達に関しては……ゴメン…それは俺のワガママ。」
「ユキ…」
急に泣きそうな顔になったユキを見て、思わず頬に手を添えた。
「…っ…冷たっ…お前、いつからいたんだよっ!」
指先から伝わる冷たい頬に長い時間そこにいた事を物語っていた。
「マコ…俺を嫌いにならないで。」
ユキの頬に添えた俺の手の上にマコの手が重なる。
「嫌いにならないよ…ってか、なるわけ無いだろ?今回は俺が悪いし。」
大好きな推しだもん、嫌いになんてなれない。
「……き……」
「…ん?」
「マコ……好き。」
「……え…?」
「初めて会った時からずっと好きだった。」
えぇえ⁉ちょっと待って、俺モブゥッ!
思わず後ろへ後ずさったが、後ろは桜の木でそれ以上は進めなかった。
逃げようにも片手は握られたまま、もう片方の手は壁ドン状態で逃げ場がない。
「…知ってる?この桜の木の下で告白すると成就しやすいんだって。」
えぇ、知ってます!
何度もお前で経験済だからっ。
「…冬だけど…春になったらたくさんの新しい子が寮に増えるし…」
そう言ってユキは俺の手の平を自分の唇へと引き寄せた。
「…手の平じゃなく…マコの唇にキスしたい……お願い…俺を…受け入れて。」
ゆっくりと顔が近付いてくる…
「……マコ…」
そのまま唇が軽く合わさり、そしてすぐに離れた。
「…ぁ…」
ユキの唇は冷たくて…外にいた時間が長かったせいか少しカサカサしていた。
……これが部屋ならもっと変わっていたんだろうか……
「マコ…帰ろっか。」
「…うん…」
ユキと手を繋いで歩きながら…重なった唇がすぐに離れた事を俺は残念に思っていた。
「……やだ…って、わわっ!」
何となく説教されると思っていたので断ったら無理矢理抱き上げられてソファーに座らされた。
「………何だよ…」
「ハァ…マコは自覚なさ過ぎ。」
ユキに1人で勝手に人気の無い所に行くなと説教された。
確かにさ…攻略対象の2人に変な絡まれ方したけどさぁ…俺、モブよ?お助けキャラよ??
基本どこに行っても大丈夫なはずじゃん。
少し不満があったので反論したらケンカになり、俺達は寝る以外別行動となった。
今までならユキから謝ってくるのにその気配もなく1週間が過ぎ…流石に不安になった時に用事が一段落ついた実咲が休日ランチに誘ってくれた。
「…で、何でこうなってんの?やっと3人で一緒にいれると思ったらユキに断られたんだけど?」
「……俺、悪くないもん。」
「もん…じゃ、分かんないだろ。」
ケンカの事情を説明し、話しが終わると実咲から同じ事を言われた。
「そりゃ、マコが悪い。」
「えぇ⁉何でだよっ。」
「そろそろ寮長・副寮長の選抜だろ?マコ、結構世話好きだから目を付けられてんだよ。」
「そうなのか?」
「俺達の生徒会とかの手伝いの件だって、元々はマコに頼もうとしてたのを俺達がそれぞれ受け持ったんだからな。そうじゃなきゃ、今頃お前は生徒会関係者だ。」
「えぇぇ…」
何だよ、その展開。
「ユキはお前が大変な思いをして欲しくなかったみたいだぞ。」
そっか…だからあんなに慌てて…
「ゴメン…」
「…ん…謝るの人が違うだろ?」
「うん…そうだな。でも、実咲も手伝ってくれてただろ?だから、ゴメン。」
「フフッ、俺は別にこういうのって嫌いじゃないから良いんだけどさ。」
実咲が俺の後ろに周り、俺を立ち上がらせて背中を押した。
「ま、取り敢えず謝ってこい。」
「…うん…実咲。」
「何?」
「いつもありがとな。」
「良いよ、何かあったらいつでも俺に言ってくれよな。」
「うん。」
…あれ?何か引っ掛かるけど今はそんな事言ってられない。
俺は部屋に戻ってみると1枚の紙があった。
___学校の桜の木の下に来て___
実咲とは仲良くやってはいるけど本格的な恋愛に発展していない。
多分学級委員や生徒会側でのイベントが発生しているはずだけどユキは俺以外に美咲にしか『ユキ』呼びを許してないし、あったとしても発展している気配はない。
今回いくつか違う事はあるけど、一番は俺がお助けキャラとしての役目を果たしていない事だろうか…
………ん、待てよ?………
あ、そっか。
実咲との相談を寮じゃ出来ないから学校で分かりやすい所に呼び出したのか。
実咲、毎回ノックもせずに俺達の部屋に来るもんな。
もしかしたら向こうも謝ろうとしてるのかもしれない。
フフッ、ユキも頑固なとこあるもんなぁ…うんうん、今回の人生は今までとは違うけど、財前の時に警戒すべきだったよな。
実咲以外でモブと引っ付いたらフォロー出来ないし、俺も気を引き締めないと…
俺達寮生は学校と同じ敷地内なので、自宅生と違って行き来がしやすい。
寮と学校の間にある通用門の警備員に学生証を見せて「忘れ物をした」「生徒会の用事で」と言えば通してくれる。
毎日挨拶をしているので俺やユキは尚更顔パスに近かった。
大きな桜の木の下に来ると既にユキが待っていた。
「ゴメン、待たせたな。」
まだまだ桜も咲く前で北風に葉がカラカラと鳴いている。
今日は幸い暖かい日で良かったけど、夜になったら寒くなりそうだ。
「あのさ…」
「ゴメン!」
俺が謝るより先にユキが謝ってきた。
「俺もゴメン!ユキ、実咲と一緒に俺の代わりに手伝いに行ってくれてたんだろ?それに先輩達の事も俺…知らなくて…」
それは全てユキに起こる事だったし。
「ううん、手伝いに関しては俺も言われてたから大丈夫。その時横にいた実咲も自分が手伝うって言ってくれてたし。先輩達に関しては……ゴメン…それは俺のワガママ。」
「ユキ…」
急に泣きそうな顔になったユキを見て、思わず頬に手を添えた。
「…っ…冷たっ…お前、いつからいたんだよっ!」
指先から伝わる冷たい頬に長い時間そこにいた事を物語っていた。
「マコ…俺を嫌いにならないで。」
ユキの頬に添えた俺の手の上にマコの手が重なる。
「嫌いにならないよ…ってか、なるわけ無いだろ?今回は俺が悪いし。」
大好きな推しだもん、嫌いになんてなれない。
「……き……」
「…ん?」
「マコ……好き。」
「……え…?」
「初めて会った時からずっと好きだった。」
えぇえ⁉ちょっと待って、俺モブゥッ!
思わず後ろへ後ずさったが、後ろは桜の木でそれ以上は進めなかった。
逃げようにも片手は握られたまま、もう片方の手は壁ドン状態で逃げ場がない。
「…知ってる?この桜の木の下で告白すると成就しやすいんだって。」
えぇ、知ってます!
何度もお前で経験済だからっ。
「…冬だけど…春になったらたくさんの新しい子が寮に増えるし…」
そう言ってユキは俺の手の平を自分の唇へと引き寄せた。
「…手の平じゃなく…マコの唇にキスしたい……お願い…俺を…受け入れて。」
ゆっくりと顔が近付いてくる…
「……マコ…」
そのまま唇が軽く合わさり、そしてすぐに離れた。
「…ぁ…」
ユキの唇は冷たくて…外にいた時間が長かったせいか少しカサカサしていた。
……これが部屋ならもっと変わっていたんだろうか……
「マコ…帰ろっか。」
「…うん…」
ユキと手を繋いで歩きながら…重なった唇がすぐに離れた事を俺は残念に思っていた。
489
お気に入りに追加
915
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢の弟転生 ~断罪回避の為に”なんでも”してたら、攻略対象が愛を告げてきた~
ぽんぽこ狸
BL
僕は攻略対象の一人であるグレンと女装して体を重ねていた。何故こんなことになっているのか。
それは僕が乙女ゲームの悪役令嬢の弟に転生してしまったからである。
僕の姉さまはそれはもう一点の曇りもなく悪役令嬢であり、攻略対象達に酷いトラウマを与えて主人公の邪魔をし、最後には断罪されて一家諸共、吊るし首にされる。
そんなことになっては僕の人生、目も当てられない。
だから姉さまのせいで女嫌いになってしまったグレンには、すんなり主人公とくっついて貰うために絶賛こうして治療中だし、他にもたくさん破滅を回避するために行動している。
多分そのせいで原作は崩壊してるけど、知ったことでは無いのだ!
そんなわけでもうすぐ始まるシナリオに怯えながらも、今日もグレンと無機質な行為をするのだった。
書き忘れていましたが、BL大賞に応募しています! ぽちっと投票していただけますと大変うれしいです。
伴侶設定(♂×♂)は無理なので別れてくれますか?
月歌(ツキウタ)
BL
歩道を歩いていた幼馴染の俺たちの前に、トラックが突っ込んできた。二人とも即死したはずが、目覚めれば俺たちは馴染みあるゲーム世界のアバターに転生していた。ゲーム世界では、伴侶(♂×♂)として活動していたが、現実には流石に無理なので俺たちは別れた方が良くない?
男性妊娠ありの世界
ハーレムルートと王子ルートが初めから閉じていて「まーじーかー!」と言っている神子は私と王子を見てハアハアしている
ネコフク
BL
ルカソール王子と私は太陽神と月の女神の加護を受け婚約しており将来伴侶となる事が産まれた時から決められている。学園に通っている今、新しく『花の神子』となったユーリカ様が転入してきたのだがルカソール王子が私を溺愛するのを見て早口で「ハーレムルートとルカソールルートが閉じられてる⁉まーじーかー!」と言っている。ハーレムルート・・・シュジンコウ・・・フジョシ・・・何の事でしょう?おやユーリカ様、鼻息が荒いですが大丈夫ですか?☆3話で完結します。花の神子は女性ですが萌えを堪能しているだけです。
【BL】【完結】兄様と僕が馬車の中でいちゃいちゃしている話
まほりろ
BL
エミリー・シュトラウスは女の子のように可愛らしい容姿の少年。二つ年上の兄リーヴェス・シュトラウスが大好き♡ 庇護欲をそそる愛らしい弟が妖艶な色気をまとう美形の兄に美味しく食べられちゃう話です。馬車の中での性的な描写有り。
全22話、完結済み。
*→キス程度の描写有り、***→性的な描写有り。
兄×弟、兄弟、近親相姦、ブラコン、美人攻め、美少年受け。
男性が妊娠する描写があります。苦手な方はご注意ください。
この小説はムーンライトノベルズとpixivにも掲載しています。
「Copyright(C)2020-九十九沢まほろ」
平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます
ふくやまぴーす
BL
旧題:平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます〜利害一致の契約結婚じゃなかったの?〜
名前も見た目もザ・平凡な19歳佐藤翔はある日突然初対面の美形双子御曹司に「自分たちを助けると思って結婚して欲しい」と頼まれる。
愛のない形だけの結婚だと高を括ってOKしたら思ってたのと違う展開に…
「二人は別に俺のこと好きじゃないですよねっ?なんでいきなりこんなこと……!」
美形双子御曹司×健気、お人好し、ちょっぴり貧乏な愛され主人公のラブコメBLです。
🐶2024.2.15 アンダルシュノベルズ様より書籍発売🐶
応援していただいたみなさまのおかげです。
本当にありがとうございました!
【短編】無理矢理犯したくせに俺様なあいつは僕に甘い
cyan
BL
彼は男女関係なく取り巻きを従えたキラキラ系のイケメン。
僕はそんなキラキラなグループとは無縁で教室の隅で空気みたいな存在なのに、彼は僕を呼び出して無理矢理犯した。
その後、なぜか彼は僕に優しくしてくる。
そんなイケメンとフツメン(と本人は思い込んでいる)の純愛。
※凌辱シーンはサラッと流しています。
ムーンライトノベルズで公開していた作品ですが少し加筆しています。
転生したら同性の婚約者に毛嫌いされていた俺の話
鳴海
BL
前世を思い出した俺には、驚くことに同性の婚約者がいた。
この世界では同性同士での恋愛や結婚は普通に認められていて、なんと出産だってできるという。
俺は婚約者に毛嫌いされているけれど、それは前世を思い出す前の俺の性格が最悪だったからだ。
我儘で傲慢な俺は、学園でも嫌われ者。
そんな主人公が前世を思い出したことで自分の行動を反省し、行動を改め、友達を作り、婚約者とも仲直りして愛されて幸せになるまでの話。
ご主人様に幸せにされた奴隷
よしゆき
BL
産まれたときから奴隷だったエミルは主人に散々体を使われて飽きられて奴隷商館に売られた。そんな中古のエミルをある日やって来た綺麗な青年が購入した。新しい主人のノルベルトはエミルを奴隷のように扱わず甘やかしどろどろに可愛がってくれた。突然やって来た主人の婚約者を名乗る女性に唆され逃げ出そうとするが連れ戻され、ノルベルトにどろどろに愛される話。
穏やかS攻め×健気受け。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる