惨めに捨てられた伯爵夫人は年下の第二王子と精霊神たちに想われ思い出す

砂礫レキ

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夜が明ければ新しい朝が始まる15

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「ぶっちゃけ前世の縁なんて当てになんないわよ」


 私とユーノはほぼ他人だったもの。

 そう食事を口に運ぶ合間にマリアは軽い口調で言う。

 ユーノとはマリアの配偶者で現国王だ。

 そしてアレス王子の父親でもある。


「マルス時代は大勢いる部下の一人だったのよ、それが今やラブのラブなんだから」

「部下の一人……それってマリアには国王の前世もわかったってことなの?」

「わかるっていうか……なんとなく誰かに似てるかなって急に思い始める感じね」


 そうしたらマルスの記憶に切り替えて照合するのだとマリアは平然と言った。

 あっさりと口にされたが理解するのが難しい。

 どういう仕組みなのだと王妃に尋ねると少ししてから回答を得た。


「こう、今の私って二つの脳みそがあるような状態なのよ」

「は?」

「いや実際にはないけどね。イメージとして一番近いのはそれなの」

「ますますわからなくなってきたわ……」


 マリアはユピテルの行動の結果、建国の英雄マルスだった前世をかなり詳しく思い出した。

 そういう認識で今までいたのだが、事実は予想以上だったようだ。


「メインは当然私ね。ただ今の私は一つの物事に対してマリアとマルスの両方から考えることが出来る……みたいな」

「それって……貴女の体にマルス様の魂が宿っているということなの?」

「違うわね。死人は死人よ」


 マルスになりすますことは可能かもしれないが私は私でしかない。

 そう宣言するように告げるとマリアはワインを口にした。

 マルスは遥か昔の己の姿なのだ。戻ることも戻りたいと思うこともない。

 そう告げるマリアは落ち着いていて、とても今日前世の記憶を取り戻したようには見えなかった。

 それが皮肉にも泰然とした英雄らしさを感じさせる。いや、マリア自身も過去この国の危機を救った英雄ではあるのだが。


「物心のついていない幼子ならともかく私はこの年までしっかり生きたし、前世の記憶なんてただの参考情報(データベース)にしかならないわ」

「ということは……前世での恋人の生まれ変わりが目の前に現れてもマリアは全く気にならないの?」

「恋人、ねえ……」


 そんなものいなかったわ。そう口にする姿に見知らぬ青年の寂しそうな様子が重なる。
 
 誰だと思う間もなくその幻は消えた。後に残されたのは長年の親友だけだ。


「ま、アレスにしても、記憶を取り戻してから急に愛しくなったならともかく、そうじゃなければ過去の面影に悩んだり拘泥する必要なんてないわよ」


 あの子だって前世の延長で貴女を長い間想い続けていた訳ではないだろうし。

 そう母親の顔で言うとマリアは私にワインを注いだ。

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