惨めに捨てられた伯爵夫人は年下の第二王子と精霊神たちに想われ思い出す

砂礫レキ

文字の大きさ
70 / 99

女神の慈悲は試練と共に9

しおりを挟む
「ディ、ディアナちゃんを老婆に……?なんでぇ?」


 気でも狂ったのかとでもいいたげな表情でユピテルは私に尋ねる。

 確かに自身の意志で女性になることを選択した彼女には私の願いは特に異常に思えるのかもしれない。

 というか流石に言葉が足りなさすぎるか。私は補足するように言葉を紡いだ。


「これからずっと老婆の姿でいたい訳では無くて、我儘ですが短時間だけ数十歳程老けさせて頂きたいのです」

「だから、なんでよぉ?!」

「それは……」


 次の言葉を発しようとした所肩を強く掴まれる。アレス王子は少しだけきつい眼差しでこちらを見ていた。

 驚愕が既にない静かなその瞳に心を見透かされていると思ってしまう。


「ディアナさん、貴女は……俺を試したいんですね?」


 彼に真剣な声で問いかけられ私は頷くしかなかった。

 そうだ、アレス王子の言うとおりだ。

 彼が老いた私を見て失望しないかを試したかった。

 変化するとしたら十年後、二十年後の姿の方が現実的でいいかもしれない。

 彼がまだ男として十分に魅力的な年頃に私はもう……。

 絶対に訪れるその事実をアレス王子に予め知っていて欲しかった。 

 そこで想いが揺らぐなら、炎の精霊神の罰を回避する為に私たちにはこれ以上何も起きない方が良い。

 
「そうよ、私は年老いてから捨てられるのが怖いの。もう二度とごめんよ」

「俺は絶対にそんなことしないって……今の俺が言っても信用できない?」

「人の心は変わるわ」

「変わった時には俺を殺していい」

「そんなことをするぐらいなら死んだ方がマシよ!だから……」


 自分を挟んで口論をする私達が怖かったのかロバートが盛大に泣き出す。

 するとふわりとその体が浮かんで今度はユピテルの腕の中に収まった。


「はいはい、不毛な水掛け論はそこまでぇ♠」


 表情をすっかり整えた雷女神は教師のような態度で私たちを窘めた。


「ディアナちゃんが怖いのはぁ、捨てられることがじゃないわよねぇ?」


 ユピテルに言われ私は思わず目を逸らす。

 その態度自体が答えを言っているも同然だと己でもわかっていた。


「そこの坊やが老いた恋人自分を捨てることで、炎の精霊に見捨てられるのをひたすら恐れ続けている……愛ねぇ♡」

「俺はディアナさんを見捨てたりしない!!」

「それを無垢に信じられるのは恋に傷ついたことのないモノだけなのよねぇ。貴男みたいにね、純粋で青臭い坊や♠」


 だから信じる為には確かめる必要があるの。


「……私に愛を試されなさい。炎の末裔よ」


 そうユピテルは言うと、私に向かって指先から雷矢を放った。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧井 汐桜香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

【完結】結婚式前~婚約者の王太子に「最愛の女が別にいるので、お前を愛することはない」と言われました~

黒塔真実
恋愛
挙式が迫るなか婚約者の王太子に「結婚しても俺の最愛の女は別にいる。お前を愛することはない」とはっきり言い切られた公爵令嬢アデル。しかしどんなに婚約者としてないがしろにされても女性としての誇りを傷つけられても彼女は平気だった。なぜなら大切な「心の拠り所」があるから……。しかし、王立学園の卒業ダンスパーティーの夜、アデルはかつてない、世にも酷い仕打ちを受けるのだった―― ※神視点。■なろうにも別タイトルで重複投稿←【ジャンル日間4位】。

美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ

さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。 絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。 荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。 優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。 華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。

結婚5年目のお飾り妻は、空のかなたに消えることにした

三崎こはく
恋愛
ラフィーナはカールトン家のお飾り妻だ。 書類上の夫であるジャンからは大量の仕事を押しつけられ、ジャンの愛人であるリリアからは見下され、つらい毎日を送っていた。 ある日、ラフィーナは森の中で傷ついたドラゴンの子どもを拾った。 屋敷に連れ帰って介抱すると、驚いたことにドラゴンは人の言葉をしゃべった。『俺の名前はギドだ!』 ギドとの出会いにより、ラフィーナの生活は少しずつ変わっていく―― ※他サイトにも掲載 ※女性向けHOT1位感謝!7/25完結しました!

私は既にフラれましたので。

椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…? ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...