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王妃の裁き33
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雷女神ユピテル。神々しい光を放ちながら顕現した彼女は私たちを見つめる。
美しい顔に艶麗な微笑みを浮かべ人ではない高貴な存在はゆっくりとその唇を開いた。
「うーん、やっぱり人間って尊いっ♡ 」
「……は?」
予想外過ぎる発言に思わずこちらの口からも言葉が飛び出る。
いや、台詞の内容もだが一番驚いたのは彼女の声だ。紛れもなく美声である。そして非常に魅力的でもある。
ただその声域が予想外だったのだ。重厚でありながら甘さを感じさせるバリトンボイス。
目の前の美女の姿とその低音が私の中で結びつかない。
私が混乱している内に女神ユピテルはどんどんと自らの光量を落とし最終的に淡く発光している程度になる。
これならば私もマリアも魔法を使い続ける必要がない。私は魔力の放出を止めた。
それを察したのかマリアも風魔法を中止させる。当然の摂理としてシーツが床へと落ちる。
すると何故か目の前の女神が残念そうな声を上げた。
「やだぁ、もうちょっと二人の協力魔法見ていたかったのにぃ♠
力を合わせて何かに抗うなんてか弱い人間しかできないことじゃない?だからもっと見たいわぁ♡ 」
「うっさいわね、毎回あんたの試し行為の為に魔力消費させんじゃないわよ、雷帝ユピテル!」
「仕方ないのよぉ、マリアちゃん♠
だって神は人を試す存在
人は神に試される存在
だからわたくしが人間の前に姿を現すなら、試練は必ず共にあるのぉ♡ 」
それが人間と精霊神の関係なのよ、そう子供に優しく言い聞かせるように人外の存在はマリアに告げる。
それにすぐさま言い返そうとする友人を手で制し私は雷女神を前に跪いた。
今まで抱いていた神へのイメージとやや異なるがそれでもこの人物が自分たちよりも遥か高みにおわす存在であるのは間違えようがない。
何よりも私は雷の魔力を有している。この国では魔力を持って生まれてくる子供は生前それぞれの神に仕えていた精霊だと言われる。
それが主人の命令を受け時に人間として生まれ落ちる。その魔法でこの国を外敵から守り、またよりよく発展させるために。
たまに現れる非常に魔力の強い子供は、生前は部下の中でも精霊神により近い存在だったと言われ特に崇められる。
平民の出身だったマリアが名門校に奨学生として入学し王族や貴族と交友できたのも彼女の魔力量が膨大だった為だ。
私は魔力に関しては明らかに王妃には劣る。けれど顕現した存在が雷神だと言うなら、彼女は雷属性である私の主人ということになる。
生前の記憶などないけれど、この国で教育を受けたものとしてそうする義務があるのだ。
いや、そのような知識などなくてもこの偉大な存在に対し頭を垂れない人間などいるのだろうか。
「は?勝手に人界に出張ってきてなに当たり屋みたいなこと言ってんのよ。試し行為なんて神殿で信者相手にやってなさい」
もしかしたらマリアは人間ではないかもしれない。そう考えてしまう程彼女は通常通りだった。
女神を前にして腕を組んで踏ん反り返っている。それはどう贔屓目に見てもアポイントメントなしで訪れた知人を冷たく追い払う態度でしかない。
そして奇妙なことに女神であるユピテルも彼女の無礼さをあっさりと受け入れているようだった。
「 いやよぉ、最近の神殿なんて誰もわたくしを呼び出さないし適当に拝むだけですものぉ♠
折角雷の魔力を持っている癖に暴虐と破壊の力を求める人間が少なくなってるのよねぇ、大問題よぉ♡ 」
「この国の妃としては心底いい傾向でしかないわ」
「でもねぇ、そんな中で久々にホットな攻撃性をキャッチしたのぉ♠
それにそんな魔法にわたくしの名前を冠してくれるなんて、嬉しくなっちゃってぇ♡♡」
二人の人外美女が仲良く会話していると思ったらなにやら話題の雲行きが怪しくなってきた。
会話の中に出てきた物騒なキーワードの数々。
暴虐と破壊の力を求める攻撃性を持ちそして自らの魔法に雷女神ユピテルの名前を名付けた人物。
それは間違いなく私のことだろう。予想を肯定するように光の化身である女性は私に向けて微笑んだ。
「だからディアナちゃんは暫くわたくしが見守ってあげるわねぇ♡」
雷女神の加護持ちとかみんなに自慢できるわよ。
そうおっとりとバリトンボイスで言われ私は精霊のいとし子と名高いマリアに視線を移す。
確かに彼女は風神の加護持ちとして時に持て囃されていた。
しかし私の思考を呼んだように「だって風の神は破壊神じゃないし」と言われる。もっと言葉を選んで欲しい。
その理屈なら雷女神ユピテルがまるで破壊神のようではないか。「そういう一面もあるわねぇ♡」本人に肯定される。
私の肩をぽんぽんと叩きマリア王妃は厳粛に告げた。
「でもユピテルは偉大な神よ、確実に人生は狂うけれど気を落とさないで」
「…これ以上、人生が狂うのは嫌すぎるわぁ」
いつもの彼女らしからぬ慈愛に満ちた表情で励まされて思わず本音を漏らす。
己の口調が女神の影響を受け早速狂わされていることにさえその時の私は気づかなかった。
美しい顔に艶麗な微笑みを浮かべ人ではない高貴な存在はゆっくりとその唇を開いた。
「うーん、やっぱり人間って尊いっ♡ 」
「……は?」
予想外過ぎる発言に思わずこちらの口からも言葉が飛び出る。
いや、台詞の内容もだが一番驚いたのは彼女の声だ。紛れもなく美声である。そして非常に魅力的でもある。
ただその声域が予想外だったのだ。重厚でありながら甘さを感じさせるバリトンボイス。
目の前の美女の姿とその低音が私の中で結びつかない。
私が混乱している内に女神ユピテルはどんどんと自らの光量を落とし最終的に淡く発光している程度になる。
これならば私もマリアも魔法を使い続ける必要がない。私は魔力の放出を止めた。
それを察したのかマリアも風魔法を中止させる。当然の摂理としてシーツが床へと落ちる。
すると何故か目の前の女神が残念そうな声を上げた。
「やだぁ、もうちょっと二人の協力魔法見ていたかったのにぃ♠
力を合わせて何かに抗うなんてか弱い人間しかできないことじゃない?だからもっと見たいわぁ♡ 」
「うっさいわね、毎回あんたの試し行為の為に魔力消費させんじゃないわよ、雷帝ユピテル!」
「仕方ないのよぉ、マリアちゃん♠
だって神は人を試す存在
人は神に試される存在
だからわたくしが人間の前に姿を現すなら、試練は必ず共にあるのぉ♡ 」
それが人間と精霊神の関係なのよ、そう子供に優しく言い聞かせるように人外の存在はマリアに告げる。
それにすぐさま言い返そうとする友人を手で制し私は雷女神を前に跪いた。
今まで抱いていた神へのイメージとやや異なるがそれでもこの人物が自分たちよりも遥か高みにおわす存在であるのは間違えようがない。
何よりも私は雷の魔力を有している。この国では魔力を持って生まれてくる子供は生前それぞれの神に仕えていた精霊だと言われる。
それが主人の命令を受け時に人間として生まれ落ちる。その魔法でこの国を外敵から守り、またよりよく発展させるために。
たまに現れる非常に魔力の強い子供は、生前は部下の中でも精霊神により近い存在だったと言われ特に崇められる。
平民の出身だったマリアが名門校に奨学生として入学し王族や貴族と交友できたのも彼女の魔力量が膨大だった為だ。
私は魔力に関しては明らかに王妃には劣る。けれど顕現した存在が雷神だと言うなら、彼女は雷属性である私の主人ということになる。
生前の記憶などないけれど、この国で教育を受けたものとしてそうする義務があるのだ。
いや、そのような知識などなくてもこの偉大な存在に対し頭を垂れない人間などいるのだろうか。
「は?勝手に人界に出張ってきてなに当たり屋みたいなこと言ってんのよ。試し行為なんて神殿で信者相手にやってなさい」
もしかしたらマリアは人間ではないかもしれない。そう考えてしまう程彼女は通常通りだった。
女神を前にして腕を組んで踏ん反り返っている。それはどう贔屓目に見てもアポイントメントなしで訪れた知人を冷たく追い払う態度でしかない。
そして奇妙なことに女神であるユピテルも彼女の無礼さをあっさりと受け入れているようだった。
「 いやよぉ、最近の神殿なんて誰もわたくしを呼び出さないし適当に拝むだけですものぉ♠
折角雷の魔力を持っている癖に暴虐と破壊の力を求める人間が少なくなってるのよねぇ、大問題よぉ♡ 」
「この国の妃としては心底いい傾向でしかないわ」
「でもねぇ、そんな中で久々にホットな攻撃性をキャッチしたのぉ♠
それにそんな魔法にわたくしの名前を冠してくれるなんて、嬉しくなっちゃってぇ♡♡」
二人の人外美女が仲良く会話していると思ったらなにやら話題の雲行きが怪しくなってきた。
会話の中に出てきた物騒なキーワードの数々。
暴虐と破壊の力を求める攻撃性を持ちそして自らの魔法に雷女神ユピテルの名前を名付けた人物。
それは間違いなく私のことだろう。予想を肯定するように光の化身である女性は私に向けて微笑んだ。
「だからディアナちゃんは暫くわたくしが見守ってあげるわねぇ♡」
雷女神の加護持ちとかみんなに自慢できるわよ。
そうおっとりとバリトンボイスで言われ私は精霊のいとし子と名高いマリアに視線を移す。
確かに彼女は風神の加護持ちとして時に持て囃されていた。
しかし私の思考を呼んだように「だって風の神は破壊神じゃないし」と言われる。もっと言葉を選んで欲しい。
その理屈なら雷女神ユピテルがまるで破壊神のようではないか。「そういう一面もあるわねぇ♡」本人に肯定される。
私の肩をぽんぽんと叩きマリア王妃は厳粛に告げた。
「でもユピテルは偉大な神よ、確実に人生は狂うけれど気を落とさないで」
「…これ以上、人生が狂うのは嫌すぎるわぁ」
いつもの彼女らしからぬ慈愛に満ちた表情で励まされて思わず本音を漏らす。
己の口調が女神の影響を受け早速狂わされていることにさえその時の私は気づかなかった。
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