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王妃の裁き4
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イザベラは義姉のディアナが嫌いだった。
何かをされたというわけではない。
夫の姉妹というだけで嫌悪するのに十分な理由だと思う。
イザベラには年の離れた姉が二人いる。彼女たちは実家に来る度にどちらも義理の家族の愚痴を楽し気に吐き出していた。
特に義母や義理の姉妹に対しては存分に毒を吐き心行くまで扱き下ろしていた。
イザベラが嫁いだ家には母はいない。大分前に亡くなっていた。姉たちからは羨ましがられた。
けれどその分だけ義姉であるディアナが大きな顔をして君臨しているに違いない。
それはそれで大変そうねと同情しながらも二人の姉はどこかそれを望んでいるようだった。
イザベラが嫁いだ頃既にディアナは別の伯爵家に嫁いでいて同じ屋敷で顔を突き合わせるということはなかった。
ただ恐らく同じ屋敷で暮らすことになっていたら口汚くいびられるのだろうと思った。
ディアナが実家に戻るのは年に一度あるかないかだった。
なんて薄情な女だろうと思った。姉たちもイザベラの意見に揃って同調してくれた。
実家に顔を出したディアナはイザベラに対して必要最低限しか話しかけなかった。
あなたを舐めているのよ。話しかける価値もないと見下しているのと姉たちは言った。
義姉にとって弟の妻なんて目障りな部外者でしかないのだから。
二番目の姉は学校で彼女の一つ下だったらしく、イザベラよりもよほど詳しく義姉について語った。
あの方、学生時代からツンと澄ましていて今は元平民の王妃様と懇意でしょう。裏で女王気取りでいらっしゃるのではないかしら。
確かに外見はそれなりにお美しくいらっしゃるけれど、あの年でお子様の一人もおられないのよねぇ。
もしかして子供を産んで体の線が崩れるのが嫌なのではないかしら。あの方ならありえるわぁ。
だから夜の営みを拒んでいらっしゃるのかもしれないわね、けれど嫉妬深い人だから愛人など絶対許さないでしょうね。
性格の悪さがきついお顔立ちに昔から出ていらっしゃったもの。かっては毒薔薇令嬢とお呼びしたものよ。
今のご様子なら毒薔薇の夫人、悪の伯爵夫人とお呼びした方がしっくりくるわねぇ。
旦那様も大変なこと。でもああいう傲慢な美人ほど、いきなり殿方に愛想を尽かされてしまうのよねぇ。
でも彼女がそうなったら、きっとあなたは追い出されるでしょうねぇえ。
その前にイザベラ、あなたがしっかりとその家の女主人にならないと駄目よぉ。
一度家を出た女なんて余所者なのだから。
姉たちの言ったことは真実だった。本当にある日突然義姉は離縁されたのだ。
イザベラは今すぐこの場に自分の姉たちを連れて来たかった。そして全員で大笑いしたかった。
けれど今ここに二人の姉はいない。だからイザベラは誇り高くこう言った。
「可哀想なディアナお義姉さま。でもそのお年で再婚は無理ですわね」
だからといって出て行った家に居座ろうとはしないでくださいませね?
今でもあの時のディアナの表情を思い出すと胸がゾクゾクする。
棒で追い払われた野良犬のように義姉がこの家を後にした瞬間、確かにイザベラは自身を女英雄だと思った。
これでこの家に女性は己一人だけだ。私だけがこの屋敷の女王なのだ。
うっとりと勝利の余韻を食んでいる愚かな女王がマリア王妃と対面するのはこの数日後のことになる。
何かをされたというわけではない。
夫の姉妹というだけで嫌悪するのに十分な理由だと思う。
イザベラには年の離れた姉が二人いる。彼女たちは実家に来る度にどちらも義理の家族の愚痴を楽し気に吐き出していた。
特に義母や義理の姉妹に対しては存分に毒を吐き心行くまで扱き下ろしていた。
イザベラが嫁いだ家には母はいない。大分前に亡くなっていた。姉たちからは羨ましがられた。
けれどその分だけ義姉であるディアナが大きな顔をして君臨しているに違いない。
それはそれで大変そうねと同情しながらも二人の姉はどこかそれを望んでいるようだった。
イザベラが嫁いだ頃既にディアナは別の伯爵家に嫁いでいて同じ屋敷で顔を突き合わせるということはなかった。
ただ恐らく同じ屋敷で暮らすことになっていたら口汚くいびられるのだろうと思った。
ディアナが実家に戻るのは年に一度あるかないかだった。
なんて薄情な女だろうと思った。姉たちもイザベラの意見に揃って同調してくれた。
実家に顔を出したディアナはイザベラに対して必要最低限しか話しかけなかった。
あなたを舐めているのよ。話しかける価値もないと見下しているのと姉たちは言った。
義姉にとって弟の妻なんて目障りな部外者でしかないのだから。
二番目の姉は学校で彼女の一つ下だったらしく、イザベラよりもよほど詳しく義姉について語った。
あの方、学生時代からツンと澄ましていて今は元平民の王妃様と懇意でしょう。裏で女王気取りでいらっしゃるのではないかしら。
確かに外見はそれなりにお美しくいらっしゃるけれど、あの年でお子様の一人もおられないのよねぇ。
もしかして子供を産んで体の線が崩れるのが嫌なのではないかしら。あの方ならありえるわぁ。
だから夜の営みを拒んでいらっしゃるのかもしれないわね、けれど嫉妬深い人だから愛人など絶対許さないでしょうね。
性格の悪さがきついお顔立ちに昔から出ていらっしゃったもの。かっては毒薔薇令嬢とお呼びしたものよ。
今のご様子なら毒薔薇の夫人、悪の伯爵夫人とお呼びした方がしっくりくるわねぇ。
旦那様も大変なこと。でもああいう傲慢な美人ほど、いきなり殿方に愛想を尽かされてしまうのよねぇ。
でも彼女がそうなったら、きっとあなたは追い出されるでしょうねぇえ。
その前にイザベラ、あなたがしっかりとその家の女主人にならないと駄目よぉ。
一度家を出た女なんて余所者なのだから。
姉たちの言ったことは真実だった。本当にある日突然義姉は離縁されたのだ。
イザベラは今すぐこの場に自分の姉たちを連れて来たかった。そして全員で大笑いしたかった。
けれど今ここに二人の姉はいない。だからイザベラは誇り高くこう言った。
「可哀想なディアナお義姉さま。でもそのお年で再婚は無理ですわね」
だからといって出て行った家に居座ろうとはしないでくださいませね?
今でもあの時のディアナの表情を思い出すと胸がゾクゾクする。
棒で追い払われた野良犬のように義姉がこの家を後にした瞬間、確かにイザベラは自身を女英雄だと思った。
これでこの家に女性は己一人だけだ。私だけがこの屋敷の女王なのだ。
うっとりと勝利の余韻を食んでいる愚かな女王がマリア王妃と対面するのはこの数日後のことになる。
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