惨めに捨てられた伯爵夫人は年下の第二王子と精霊神たちに想われ思い出す

砂礫レキ

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王妃の裁き3

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 ディアナから離婚の経緯を聞いて以来ずっとマリアの心は煮え滾っていた。

 親友が淡々と気丈に振舞いながらも耐えきれず涙を一粒落としたことを彼女は見逃さなかった。

 自分の息子はこの婦人に長年懸想を続けている。

 彼女が夫に手酷く傷つけられ離縁された今が千載一遇の好機であると『女』として理解してもいた。

 だからアレスを動かし、ディアナを惑わしもした。

 万が一この時が来た時の為にとルークと共に集めた記憶石を隠し金庫から持ち出しもした。

 アレスの成長と一途な恋心を刻み付けたこれはディアナの心を動かす為だけの物ではない。

 年齢差を理由にディアナが若いアレス王子を誑し込んだと誤解する連中を黙らせる為の証拠品として揃えたのだ。

 だが、だからといってこの時を待ち望んだわけでは決してなかった。

 矛盾するかもしれないがマリアはディアナの幸福な結婚生活が長く続くことを望んでいた。

 ただそれと同時にいつかこの日が訪れるだろうことも予感していたのだ。

 そして恐らくはディアナも、覚悟していた筈だ。

 だがマリアもディアナもロバートの変貌までは想定できなかった。

 長く続いた恋の終わりは優しく切なくもたらされるのだろうと思っていた。

 まさか、あのロバートがディアナの女としての尊厳を踏み躙り、愛人と二人で罵りながら追い出すなんて思わなかった!! 

 マリアはずっと憤っていた。ふつふつと抑えれば抑える程腹の底の怒りはどろどろと溶けた鉛のように温度を上げ続けていた。

 自分は王妃だ。この国で最も高い地位にいる女だ。

 だからこそ、怒りのままに罰を下してはならない。夫婦間の事に口を出してはならない。奥歯を噛みしめながら己を律した。

 そして怒りの衝動はアレス王子の騒動を挟んだことにより落ち着いた筈だった。

 けれど今マリア王妃は激怒している。ここ数日ずっとだ。魔力を視認できる者が見たならその蜂蜜色の髪は燃え盛るフレアとして映っただろう。

 魔力を使い果たしたことによりディアナが意識を失い要看護となった。

 魔力回復と傷の治癒の為眠り続けるディアナ。マリアは公務の傍ら時間が空けば彼女を見舞った。

 だから聞いてしまった、魘される親友の唇から漏れ出た侮辱の数々を。 

 ディアナの義妹であるイザベラの暴言を。新たな怒りと共にめらりとマリアの勘が揺らめいた。

 だから丁寧な文面でそれぞれに手紙を出した。ディアナの生家と元婚家へと。何通も手紙を書いた。

 それを側付きのメイドに渡し、全て火急で届ける様に言い伝える。

 
 来たる日が楽しみだと王妃は自らの部屋で嫣然と笑んだ。

 憤懣というのは結局滾らせ続けるよりも燃やし尽くすのが一番なのだ。

 その夜マリアは久しぶりにぐっすりと眠れた。





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