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2話
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第一王子のルーク様には幼い時分に将来を誓った婚約者がいらっしゃる。
けれど第二王子のアレス様は十七歳の現在でもまだ特定の相手がいらっしゃらないという。
結果、まだ学生の身である彼は校内の女生徒たちに日夜追い掛け回される羽目となっているらしい。
次男のため王の座につくのは難しいだろうがそれでも次期王弟という身分は非常に高い。
それに加えてアレス王子は絶世の美男だ。
同世代に生まれた貴族の娘たちが妻の座を狙うことはなんら不思議ではない。
「でもあの子、強引なタイプが本当苦手なのよね」
「貴女の子供なのに?」
「どういう意味よ」
「そのままの意味よ」
目の前のマリアが不服そうにぶすくれるが正直どの口が言っているのかと呆れている。
学生時代の彼女は魅力的な異性に対し積極的など通り越して奔放という言葉すら足らず、手あたり次第という表現がぴったりの有様だったのだ。
清純そうなおぼこい外見を裏切る手練手管で男をとっかえひっかえし最終的に王妃という国で最も高貴な女性の立場に収まったのはもはや女怪としか呼べない。
「授業以外の時間は常に女生徒に追い掛け回されているらしくて、このままだと登校拒否か女嫌いになりそうなのよ」
「…教師から生徒たちへ王子に対し必要以上に関わらないよう指導して貰うことはできないの?」
「あはは、馬鹿ねディアナ。恋愛脳舐めないでよ。先生に叱られるぐらい屁のツッパリにもならないわ」
「ハァ…貴女が現役の頃にアレス王子が同級生でなくてよかったわ。付き合うかノイローゼになるまで追い詰めそうだもの」
息子が一方的な恋愛感情に苦労しているというのに、母親の方は相変わらずである。
しかし彼女の話を聞いている内になんとなくだが婚約の意味が掴めてきた。
マリアが望んでいるのは自分の息子に対する女除けの存在なのだ。
「アレス王子はフリーだから女生徒に狙われる。ならば婚約者を宛がえばいい。理屈はわかるけど…どうして年増の私なの?」
私の疑問に対しマリアは何も答えなかった。
ただへらりと笑って。
「私の口からは言えないわ。そんなに野暮じゃないもの」
理由なら本人に聞いて。
そう告げて卓上のベルを鳴らす。
それは二人だけのお茶会の終わりを告げる音色だった。
けれど第二王子のアレス様は十七歳の現在でもまだ特定の相手がいらっしゃらないという。
結果、まだ学生の身である彼は校内の女生徒たちに日夜追い掛け回される羽目となっているらしい。
次男のため王の座につくのは難しいだろうがそれでも次期王弟という身分は非常に高い。
それに加えてアレス王子は絶世の美男だ。
同世代に生まれた貴族の娘たちが妻の座を狙うことはなんら不思議ではない。
「でもあの子、強引なタイプが本当苦手なのよね」
「貴女の子供なのに?」
「どういう意味よ」
「そのままの意味よ」
目の前のマリアが不服そうにぶすくれるが正直どの口が言っているのかと呆れている。
学生時代の彼女は魅力的な異性に対し積極的など通り越して奔放という言葉すら足らず、手あたり次第という表現がぴったりの有様だったのだ。
清純そうなおぼこい外見を裏切る手練手管で男をとっかえひっかえし最終的に王妃という国で最も高貴な女性の立場に収まったのはもはや女怪としか呼べない。
「授業以外の時間は常に女生徒に追い掛け回されているらしくて、このままだと登校拒否か女嫌いになりそうなのよ」
「…教師から生徒たちへ王子に対し必要以上に関わらないよう指導して貰うことはできないの?」
「あはは、馬鹿ねディアナ。恋愛脳舐めないでよ。先生に叱られるぐらい屁のツッパリにもならないわ」
「ハァ…貴女が現役の頃にアレス王子が同級生でなくてよかったわ。付き合うかノイローゼになるまで追い詰めそうだもの」
息子が一方的な恋愛感情に苦労しているというのに、母親の方は相変わらずである。
しかし彼女の話を聞いている内になんとなくだが婚約の意味が掴めてきた。
マリアが望んでいるのは自分の息子に対する女除けの存在なのだ。
「アレス王子はフリーだから女生徒に狙われる。ならば婚約者を宛がえばいい。理屈はわかるけど…どうして年増の私なの?」
私の疑問に対しマリアは何も答えなかった。
ただへらりと笑って。
「私の口からは言えないわ。そんなに野暮じゃないもの」
理由なら本人に聞いて。
そう告げて卓上のベルを鳴らす。
それは二人だけのお茶会の終わりを告げる音色だった。
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