40 / 86
もう君を絶対に離さない.40
しおりを挟む
だから、特に不便に感じたことなどなかったのだ。
しかしこんなことは他人が聞けば嫌味にしか聞こえないだろう。
瑠璃子は不自然に笑ってごまかした。
そんな瑠璃子の表情を見て、野崎は完全にカン違いをしたらしく、えらく同情した様子で「笠原さんも色々辛い思いをしてるんだね」などと、手を握って励ましてくれた。
野崎はどこまでも人がいいのだ。
こんなピュアな人と、自分の様に腹黒く自己中心的な人間が一緒にいることは畏れ多いと思いながらも、だからこそもっと野崎のそばにいたいと思う。
「じゃあ、守には日曜日にって連絡しておくね」
「ありがとう。よろしく頼みます」
野崎は丁寧に挨拶をして帰っていった。
撮影中の野崎は真剣そのもので、だけど、すごく生き生きとしていて、つまり・・・、格好いい。
映画監督とかがカッコイイ理由が今なら分かる気がする。
もちろんプロの中には鬼監督みたいな人もいるんだろうけど、野崎はプロになってもそういうタイプにはならないだろう。
そうなると、今の野崎に貫禄がプラスされることになり、想像するだけで瑠璃子の心は更にときめいてしまう。
野崎の掛け声、動きを指示するしぐさ、そしてカメラを構える姿、そしてレンズを覗く眼光、その全てが瑠璃子にはたまらなく格好いいのだ。
さすがにセリフを言っている時はそちらに集中している。
そして、演技をすること自体も想像していたよりすごく楽しい。
しかし、日に日に監督っぽさが板についてきた野崎の格好よさが、ハンパないのだ。
無理やりだったけど、一度体を重ねてしまった野崎の肌に触れたくないと言ったら嘘になる。
だけど、そんなことをしたら、今度こそ本当に終わりだ。
近づきたいのに、触れることは出来ない。
だけど、離れたくない・・・。
苦しいけれど、今はこうして野崎に会って、彼の声を聞けること、そして撮影の時以外はあいかわらず、伏し目がちなその表情を間近で見られることが、瑠璃子に与えられた唯一の贅沢なのだ。
もどかしい思いを抱えながらも、今はこの状態がベストなのだと自分に言い聞かせるのだった。
平日、途切れ途切れに撮影し、ようやく迎えた土曜は、明日の二人の回想シーンのカット割りをもう一度考えたいからと、瑠璃子の撮影はお休みになった。
先週からほぼ毎日野崎と顔を合わせていた。
それも二人きりで。
今日は野崎が来ないことは頭では理解しているのに、なぜ会えないのかと心が彼のことを欲しがっている。
ふいに夏希の顔が思い浮かぶ。
『ファッションも演技もどっちもがんばらないと!』そんな声が飛んでくる。
「仕方ない、課題でもやるか」
秋までにはデザイナーズマーケットに出品する作品をつくらなければならないけど、今はまだトレンドの分析や基本的な素材論、服の制作や応用、専門的な縫製技術を順に学んでいる。
その先にファッションデザインというインスピレーションやオリジナリティが要求される領域があるのだ。
瑠璃子は来週中に提出日が迫っている、トレンド研究課題に取り掛かるのだった。
日曜の朝、瑠璃子は一人落ち着かない気分で、リビングをウロウロしていた。
いつも野崎と二人でいる空間に、守が入るというだけで何だか妙に落ち着かない。
野崎は、ほぼ予定通りの時間にやってきた。
「今日はよろしくお願いします」
「こちらこそ」
しかしこんなことは他人が聞けば嫌味にしか聞こえないだろう。
瑠璃子は不自然に笑ってごまかした。
そんな瑠璃子の表情を見て、野崎は完全にカン違いをしたらしく、えらく同情した様子で「笠原さんも色々辛い思いをしてるんだね」などと、手を握って励ましてくれた。
野崎はどこまでも人がいいのだ。
こんなピュアな人と、自分の様に腹黒く自己中心的な人間が一緒にいることは畏れ多いと思いながらも、だからこそもっと野崎のそばにいたいと思う。
「じゃあ、守には日曜日にって連絡しておくね」
「ありがとう。よろしく頼みます」
野崎は丁寧に挨拶をして帰っていった。
撮影中の野崎は真剣そのもので、だけど、すごく生き生きとしていて、つまり・・・、格好いい。
映画監督とかがカッコイイ理由が今なら分かる気がする。
もちろんプロの中には鬼監督みたいな人もいるんだろうけど、野崎はプロになってもそういうタイプにはならないだろう。
そうなると、今の野崎に貫禄がプラスされることになり、想像するだけで瑠璃子の心は更にときめいてしまう。
野崎の掛け声、動きを指示するしぐさ、そしてカメラを構える姿、そしてレンズを覗く眼光、その全てが瑠璃子にはたまらなく格好いいのだ。
さすがにセリフを言っている時はそちらに集中している。
そして、演技をすること自体も想像していたよりすごく楽しい。
しかし、日に日に監督っぽさが板についてきた野崎の格好よさが、ハンパないのだ。
無理やりだったけど、一度体を重ねてしまった野崎の肌に触れたくないと言ったら嘘になる。
だけど、そんなことをしたら、今度こそ本当に終わりだ。
近づきたいのに、触れることは出来ない。
だけど、離れたくない・・・。
苦しいけれど、今はこうして野崎に会って、彼の声を聞けること、そして撮影の時以外はあいかわらず、伏し目がちなその表情を間近で見られることが、瑠璃子に与えられた唯一の贅沢なのだ。
もどかしい思いを抱えながらも、今はこの状態がベストなのだと自分に言い聞かせるのだった。
平日、途切れ途切れに撮影し、ようやく迎えた土曜は、明日の二人の回想シーンのカット割りをもう一度考えたいからと、瑠璃子の撮影はお休みになった。
先週からほぼ毎日野崎と顔を合わせていた。
それも二人きりで。
今日は野崎が来ないことは頭では理解しているのに、なぜ会えないのかと心が彼のことを欲しがっている。
ふいに夏希の顔が思い浮かぶ。
『ファッションも演技もどっちもがんばらないと!』そんな声が飛んでくる。
「仕方ない、課題でもやるか」
秋までにはデザイナーズマーケットに出品する作品をつくらなければならないけど、今はまだトレンドの分析や基本的な素材論、服の制作や応用、専門的な縫製技術を順に学んでいる。
その先にファッションデザインというインスピレーションやオリジナリティが要求される領域があるのだ。
瑠璃子は来週中に提出日が迫っている、トレンド研究課題に取り掛かるのだった。
日曜の朝、瑠璃子は一人落ち着かない気分で、リビングをウロウロしていた。
いつも野崎と二人でいる空間に、守が入るというだけで何だか妙に落ち着かない。
野崎は、ほぼ予定通りの時間にやってきた。
「今日はよろしくお願いします」
「こちらこそ」
0
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
貴方なんて大嫌い
ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と
いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている
それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる