もう君を絶対に離さない

星野しずく

文字の大きさ
25 / 86

もう君を絶対に離さない.25

しおりを挟む
 しかし他の男がそうなら、きっと軽蔑しただろうに、野崎が自分の胸や体に興奮したことは、瑠璃子に喜びをもたらした。



 結局人は自分勝手な生き物なのだ・・・。

 そして自分はその中でもかなり自分勝手であることを再確認させられた。



 野崎は瑠璃子に対していつも真摯に接してくれていたのに、それに対して自分がした行為は裏切りにも近いものだった。

 本当に自分はどうしたかったのだろう。

 あんなことをしてしまって、そして野崎が部を辞めて、次から次へと色んなことが起こりすぎて、頭が混乱してうまく考えられない。

 だけど、このままでは自分はこのことを一生後悔しそうで・・・。



 瑠璃子は野崎の家を再び訪れることを決めた。

 もちろん追い返されることを覚悟で。

 野崎が自分のスマホに位置情報を入力してくれたおかげで、迷うことなく家まで行ける。

 瑠璃子は家にいるかどうかも分からない野崎に会うべく、電車に飛び乗った。



 野崎のアパートに到着した瑠璃子は、その勢いのまま階段を駆け上がるとチャイムを押した。

 しかし、野崎はまだ帰宅していない様で応答はない。

 瑠璃子は部屋の前で待つかどうか迷った。

 こんな行き当たりばったりの行動はしたことがない。

 野崎が帰ってくるまでここで待つことは苦痛ではない。

 だけど、彼女でもない瑠璃子が野崎の部屋の前に長い時間立っていて、もし同じアパートの人に見られたり、最悪なのは彼女と鉢合わせた時、野崎君に迷惑をかけてしまうことになりはしないかということが気になった。



 他に方法があるだろうか・・・。

 だが瑠璃子の心配は無駄に終わった。

 瑠璃子が立っている場所から野崎らしき人物がアパートに向かって歩いて来るのが見えたからだ。

 隠れた方がいいだろうか。

 瑠璃子がいるのに気づいたら、野崎はどこかへ行ってしまうかもしれない。

 瑠璃子はコンクリートでできた階段の壁の影に身をひそめた。



 こんなずるい手を使ってまで無理に野崎に会うことで、さらに野崎は瑠璃子のことをいやな奴だと思うかもしれない。

 だけど、瑠璃子はどうしても野崎に会いたかった。

 階段を上ってくる足音が近づいてくる。

 瑠璃子の体が緊張でこわばる。

 ついに野崎が階段を上り切り、瑠璃子の存在に気づいた。



「笠原さん・・・」

「あの・・・、この間のことは本当にごめんなさい。あんなことしておいて図々しいことは分かってます。でも、最後に少しだけお話を聞いてもらえませんか」

 瑠璃子は真剣な表情で野崎に頭をさげた。

 野崎はこれまでに、瑠璃子のような激しく自己中心的な人間と親しくなったことはなかった。

 だから、いくら瑠璃子が必死でに言葉を重ねても、野崎にはそれがどうしても嘘くさく感じられてしまう。



「少しだけなら・・・」

 そう思っていても、どう断っていいのかが分からなくて、つい瑠璃子の申し出を受け入れてしまった。

「え、いいの?」

 そう問われても、本当はどうすればいいのか分からない。

「せっかく来てもらって、立ち話っていうのもアレだから・・・」

 野崎は最低限人として当たり前なことをしようと思った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

貴方なんて大嫌い

ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

処理中です...